21 約束 【21-2】

【21-2】

僕は、『MORINAKA』に入るつもりなどない。

宝石のことも、取引のことも何もわからないのに、どうしてそんな話になるのだろう。

拓が何を言いたいのかわからず、ただ、黙ってしまったが、

あいつは、さらに表情を硬くする。


「歩……お前、何も知らないのか? それとも、全てを知っていて、
それでこんなふうに、コソコソ親父と会うのか、どっちなんだ」

「拓……」

「人をバカにするのも、いい加減にしろよ」


拓は、そういうと社長室を出て行こうとした。

僕は、咄嗟にあいつの腕をつかむ。


「何を言いたいのかわからないよ。
僕はコソコソ伯父さんと会っているわけじゃない。
どうしても聞きたいことがあって、それで来た」


そう、聞くことが出来るのは、伯父さんしかいない。


「聞きたいこと?」


拓に語るつもりはなかったけれど、すれ違いを解消するには本当のことを語るしかない。

いずれバレてしまうのなら、今、僕の口から語ればいいはず。


「両親の事故の報告書が見つかって、
僕が後藤の親と血のつながりがないことがわかったんだ。
僕は、後藤のうちに養子に入っていた。だから、伯父さんなら、
本当の親のことを知っているかもしれないと、そう思って……」


驚かれることはわかっていた。

しかし……





拓の反応は、僕が思っていたものとは違っていて……





「それを、親父に聞きに来たのか」

「……拓」


拓は、知っているのだろうか。

硬くなった表情は、何も変わらない。


「お前、何も知らないのか」

「どういうことだ」

「知らないのなら、教えてやるよ」

「……拓」



教えてやるとは、どういうことだろう。





「お前の親は……うちの親父だ」





拓は、それだけを言うと、僕の手を振り払って、社長室を出て行ってしまった。





「どういう……ことだ」


伯父さんが僕の父親。

そんなことはありえない。




いや、ありえないはず……




目の前が、真っ暗になりそうだった。

拓が何を言ったのか、わかっているはずなのに、頭の中がグルグルとまわりだす。




『伯父さん』




長い間、僕はずっとそう思い、母の兄だと信じ、頼りにしてきた。

それなのに、父親だというのは、どういうことだろう。




「歩さん」

「あ……はい」


気付くと、コーヒーを持った延岡さんが、前に立っていた。

僕はソファーに戻り、ありがとうございますと礼をする。


「あと10分ほどで到着すると、社長から連絡がありました。
申し訳ないですが、もうしばらく……」

「あの、拓はどこに」

「部長は、先ほど店舗まわりだと」

「今、ここへ来ました。書類を置いて……」


僕が伯父のデスクを示すと、延岡さんはその紙を見た。

確かに、拓が持ってきたものだとわかってくれたらしい。


「何か部長に御用ですか」

「はい……」


このまま確信のないセリフを信じ込むわけにはいかない。

あいつが、混乱させようとそう言ったのか、何か確実な証拠でもあるのか、

それを聞かなければ、僕は……





ここまで来て、伯父と話すことが出来なくなる。



【21-3】

『真実』を前に、苦しむのは、歩だけではなくて……
『なぜ』 『どうして』の思いは、ただ一つの願いに、変わり始める。
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