24 光りの先 【24-1】

24 光りの先


【24-1】

『MORINAKA』

その受付を通り、社長室へ向かう。

伯父はすでに社内にいるらしいが、会議が終了するまで待っていて欲しいと、

延岡さんから告げられた。


「忙しいところ、すみません」

「いえ……」


僕が想像していることは、おそらく事実なのだろう。

でも、どうしてこうなったのか、その流れを教えて欲しい。

僕はソファーに腰かけ、カチカチとと動く時計の針の音を聞きながら、

伯父が姿を見せてくれるのを、ただ待ち続ける。

扉が開く音がして、伯父と拓が揃って入ってきたのは、それから30分後のことだった。


「……歩」

「拓、お前も座りなさい」


伯父は僕の横を通り過ぎ、奥へと向かうが、

拓は僕がいるとは思わなかったのだろう、明らかに嫌そうな顔をした。

伯父の言葉に逆らい、そのまま出て行こうとしたが、

僕にとっては、予想していた動きなので、すぐに前に立ちそれを阻止した。


「どけよ」

「ダメだ、ここにいろ」

「お前の顔も見たくないし、話なんて俺にはないから」

「僕もお前に話があるわけじゃない」

「は?」

「僕も話を聞きに来た。その話をお前にも聞いて欲しい」

「……俺は関係ない」

「関係なくなどないだろう。
だったら、どうしてあの手紙をわざわざ僕のところまで持ってきたんだ!」


拓の動きが止まった。

そう、どうでもいいと思っているのなら、なぜそれほど不機嫌な態度を取る。

伯父のことを尊敬し、自分を見て、誰よりも評価して欲しいという願いがあるからこそ、

僕の存在が嫌なのだろう。


「あの手紙を、お前はわざわざ持ってきた。それは自分自身で真実を確認しろと、
そういうことだろう」


拓は、目も合わさずに、別の方向を見たまま動かないけれど、

僕は間違ってなどいない。ここは絶対に譲れない。


「拓も歩も座りなさい。私が全てを話す」

「拓……」


僕があいつの手を握ると、あいつはその手をすぐに振り払った。


「わかったよ、いればいいんだろ、ここに」


拓はそういうとソファーの奥に向かい、足と腕を組んだが、

全く別の方向を見たままで、伯父と顔を合わせるつもりもないらしい。

とりあえず言葉だけが届けばいいと思い、僕は隣に座る。


「忙しいのに、すみません」

「いや……」


春に新商品が出る『MORINAKA』としては、

正直、こんなことに時間を取られている場合ではないだろう。

それでも、僕には伯父しかいない。


「まどろっこしいことを言うつもりはありません。
もう、僕の言いたいことも伝わっていると思います。伺いたいのは、一つだけです」


そう、ずっと苦しめられているのは、このことだけ。


「僕を産んでくれた人は……」

「歩、お前……」

「拓、黙って聞いていてくれ」


互いに苦しむのは辞めよう。

僕は、『MORINAKA』に入るつもりなどない。


「僕を産んでくれた人は、誰ですか」


『親』ではない。『産んでくれた人』のことを聞きたいだけ。

僕が『親』だと思うのは、亡くなった後藤の両親だけだ。


「お前を産んだのは……」


僕をこの世に送り出してくれたのは……



「『TEA』さん……いや、森中朋子さんだ」



やはりそうだった。

僕を産んでくれたのは、『TEA』さんだった。


「森中?」


今まで、別方向を見ていた拓が、初めて同じ方向を見た。



【24-2】

僕は今、この場所に生きている。
『天使のはしご』から届く光と、優しい人の笑顔の元で……これからもきっと。
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