14 応える意味 【14-4】

【14-4】

「もうさぁ、なんだかお邪魔に入るみたいで、ためらったわよ」

「何言っているんですか、『エアリアルリゾート』の話をしていただけです」

「ん? そう?」


小菅さんは、私の方を見ながら、何やら他にも言いたげな顔をする。

聖子さんが二人分の『エビスパ』を持って、こちらに向かってきた。

今日は優葉ちゃんがお休みでよかった。

もっと大きくからかわれそうだ。


「何よ、知花ちゃんと三村君のこと?」

「いえ、あの……」

「そうですよ。なんだか急に二人はこう……近づいていると言うか……」

「小菅さん、勘違いされそうなことを言わないでください」


聖子さんも、私が結婚を取りやめた話は知っている。

こんなふうに言われてしまうと、三村さんのことで辞めたみたいになってしまい、

色々と問題になりそうだ。


「いいじゃないの、『恋』の痛みは、『恋』で治すのよ」

「聖子さん、いい! それ……」

「違いますから」



『尻尾でも振ったのか……』



幹人の言葉を思い出した。

仕事の中で、いつ会うかもわからない。少し、自分でしっかりしないと。

せっかくの三村さんの好意が、逆に失礼なことになるかもしれない。


「いただきます」


私はフォークを取り、クルクルとエビスパをまわし出した。





「それでは、行ってきます」

「頼むぞ、ほら鍵」

「はい」


次の日、三村さんは『エアリアルリゾート』の建設現場に向かうため、

朝から事務所を出て行くことになった。

ライターの千葉さんとは、どこかの駅で待ち合わせをしたらしい。


「さて、タバコ……」

「今日は会社の車で行くのですか」

「あぁ、はい」


口に出した後、余計なことだとそう思った。

でも、出てしまったのだから仕方がない。

私が戸波さんの桐箪笥を見せてもらいに行った日は、軽トラックだったはずなのに、

今日は、同じ軽でも乗用車。

まぁ、それが普通と言えば普通だろう。相手は、仕事で縁を持つ人なのだから。


「嫌じゃないですか、あまり知らない相手に助手席に座られるのは。
軽トラックだと、助手席しかないでしょ」


あまり知らない相手。

確かに、千葉さんとは仕事の縁で一緒に行くのだから、

親しい間柄だとは言えないだろうけれど。


「……じゃ」

「あ……行ってらっしゃい」


知らない相手に、助手席に座られたくないということは、

座る人は、嫌な相手ではないということだろうか。


「ん?」


三村さんを送り出した視線の先には、絶対に何か企んでいるようにしか見えない、

小菅さんと優葉ちゃんの疑わしい目が並んでいた。





「行ってらっしゃい」

「あぁ、行ってくる」

「キャー!」


案の定、『COLOR』での二人は、勝手な想像空想をちりばめて、

話題を作り出す。


「こうなったらさ、我が事務所初の社内結婚っていうのはどうよ」

「いいですね、それ。そうすれば『形にはこだわらない』という社長と塩野さんも、
影響されるかもしれない」

「そう、そうよね」

「勝手に盛り上がらないでください。そういうことではありませんから」


何かをしていないと、どんどん二人のペースに嵌りそうで、

私は意味もなく携帯を開き、時刻を確認した。

出発してからもう3時間、三村さん、『エアリアルリゾート』の建設現場に、

到着しているだろうな……


素材を生かしたいので、あまり極端な色づけは避けたけれど、

景色との組み合わせは、その時にならないと最終的なイメージは見えてこないし。


「何、三村君からのメール待ち?」

「うわぁ……そうなんですか」

「違います。帰りに書店に寄りたいなと思って、時間を……」


すると、メールの印がチカチカと光りだし、私の携帯にメールが届いた。

相手は……



三村さん。



すぐにメールを開くと、数枚の写真が収められていた。




【14-5】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
日本にある『木』の中で、一番軽いものは『桐』。
世界的に見ても軽い部類に入っているが、寸法のずれなどは少ないため、
タンスの材料として好まれている。

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