18 知りすぎた日 【18-2】

【18-2】

話は、連続テレビドラマに向かい、優葉ちゃんはヒロインがどうなるのかと、

本気で心配し始めた。

私はお皿を洗っている聖子さんには頼まずに、3人分のお冷を、自分で取りに行く。

よかった。三村さんの話題は、もう戻ってこないだろう。

これ以上、自分自身、笑っていることが辛くなるから。

何かをすることで、忘れてしまいたい。


「あら、知花ちゃん、言ってよ、やるから」

「いいですよ、客ですけど、客ではないようなものですし」

「あらまぁ……」


聖子さんの向こうにある、小さなチェスト。

私の記念的な作品。



三村さんも、気に入ってくれた、チェスト。



あのチェストに影響を受けて、

『DOデザイン』に入ったと、そう言ってくれた。



「はぁ……」


何をしているのだろう。自分からまた三村さんのことを考えてしまう。

視線を前から下へ動かし、コップに水を注ぐと、私は席へ戻った。





家に戻り、テレビをつけてみるものの、あまり集中してまで見たいものはなくて、

近頃は、色彩のカードを取り出したり、

『アトリエール』を過去から読み直したりしながら、

小さなワインの瓶を横に置き、夜を過ごしている。

幹人に言われたように、私には才能などないと思う。

あれば、もっともっとひらめくし、もっともっと、前に出られるけれど、

やはり、人を押しのけてまでという自信はなかなか生まれない。

私が、唯一人に追いついていけるところがあるとすれば、

細かいところをしっかりと見ること。

そして、『木のぬくもりが大好き』という人たちの思いを、代弁できること。


「そうか……強度が違うのね」


同じような色をしていても、強度が違えば、一緒に作品を作ることは難しい。

その場では収まったように見えても、数年経つと、ひびが出来て割れてしまう。

あえて、そのアンバランスさを魅力にする手法もあるが、

組み合わせに失敗すると、単独の素材で作るよりも、弱くなることさえある。


「いいなぁ……これ」


数年前に特集されたページにある、長いすの色合いに、

三村さんが見せてくれた、移動式の本棚を思い出した。



『古川紗枝』



どうして、あの日、挟まっていた手紙に触れてしまったのだろう。

あの場所は、三村さんのもので、私が勝手に見ていいものなどひとつもないのに。



『仕事中にかけてきたって、怒っていますか?』

『間違いないですよ、その人、三村さんの『婚約者』です』



「はぁ……」


私は残りのワインを飲み干すと、少し早いけれど、ベッドにもぐりこんだ。





「おはようございます」

「おぉ、長峰か、おはよう」



いつものように挨拶をして、目の前にある仕事を、一つずつ積み重ねていく。

カレンダーが12月に入り、寒さがいよいよ本格的になり始めた日、

『エアリアルリゾート』の高級ペンションが完成した。

私と三村さんは招待を受け、あらためて現場に向かうことになる。


「おい、三村。途中で休憩してくれよ」

「わかってます」


今日は完成日のため、社長も参加する。

会社の軽自動車に乗り込み、運転手は三村さんが引き受けた。

私は助手席に座り、社長は後部座席に座る。


「なんだか雨が降り出しそうだな」

「そうですね。ペンションは山の中だから、降っているかもしれません」

「雷は嫌だなぁ……」

「雷? 季節が違いますよ、社長」


前回、三村さんと出かけた日には、休憩は一度だけだったが、

今日は、社長の希望通り、いつもより多めの休憩を取ることにした。

『車酔いをする』というのが、社長の理由らしいけれど、

ほとんど後部座席で眠っているので、あまり関係がないように思えてくる。


立ち寄ったサービスエリアには、レストランや土産物店の他に、

景色が見えそうな小高い場所があった。

特にやることもなかったので、登ってみる。

しかし、今日は雲が広がっているだけで、何も見えない。


「長峰さん」

「はい」


景色を見ようとしていたからなのか、

隣に三村さんが来ていたことに気付かなかった。




【18-3】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
『肉まん』が最初に売り出されたのは、1927年。(今年で100年)
発売したのは中村屋。1月25日は、『肉まん』の日となっている。
理由は、日本最低気温の日にちなんで、温かいものを食べてもらいたいから。

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