18 知りすぎた日 【18-5】

【18-5】

「雨、なかなかやまないですね」

「そうですね」


挨拶を終え、色々とあったその日の帰りは、どこかで事故でもあったのか、

結構な渋滞がいくつかあった。

強くなる雨の音と、車のエンジンの音。

それが何度も繰り返し、私の耳に届く。


「これは相当かかりそうだな、腹が減っているとイライラするし、
どこかで何か食べていこう」


その社長の一言で、私たちは通り沿いにある店を探す。


「社長、何がいいですか」

「何でもいいぞ」


駐車場が広く取られていたため、結局、その日は『中華料理』の店に入り、

社長に夕飯をご馳走してもらった。

私は、小さくねじられた中華風の揚げたクッキーを、事務所のお土産に購入し、

また助手席に座る。


「あぁ……腹が満たされたら眠くなるな」

「寝ていても大丈夫ですよ。事務所についたらちゃんと起こしますから」

「おぉ、頼むぞ」


私がそういうと、それならと言いながら、社長は腕を組み、後部座席で目を閉じた。

三村さんは、タバコを吸うため、少し先に店を出ていたが、

携帯で誰かと話したまま、なかなか運転席に戻ってこない。



『仕事中にかけてきたって、紘生、怒っていますか?』



誰と話しているのか、わからないのに、つい、そんな姿を想像する。


「すみません、行きましょう」

「はい」


電話を終えた三村さんが運転席に戻り、私たちはまた渋滞の中を進み始める。

社長は、美味しいものを食べたことなど考えていたのか、

事務所に戻るまで、ずっと眠っていた。





クリスマスまで、あと数日。

年末も近いので、それほど立て込んでいる仕事もない。


「あぁ、いいですねこれ。壁の色も合わせたのですか」

「うん、そうなの。いいでしょ?」


店の手前側が喫茶室になっていて、その奥が美容室。

小菅さんが携わったお店の写真を見せてもらった。

パーマなどで時間がかかる人たちも、一杯のコーヒーでリラックス出来るようにと、

結構余裕のある作りになっている。


「では、お二人様、お先に」

「あら、優葉ちゃん早いのね」

「はい。今日は、デートなんです」

「デート?」

「はい。美味しいお店、予約しました」


優葉ちゃんは、人気のある店なので、予約を取るのがいかに大変だったかと、

楽しそうに語り出す。


「クリスマスには少し早いじゃない」

「クリスマスは彼が忙しいのです。なんといっても、
フラワーショップに勤めていますので」

「あら、そうだっけ?」

「はい。プレゼントの花束作りで、手が荒れてしまうんですよ。
握るとざらっとするときがあって……」


優葉ちゃんは自分の手をこちらに向ける。


「はいはい。たくさんハンドクリーム塗ってあげて」


小菅さんは笑いながら手を動かし、早く行くようにと払うまねをする。


「あぁ、もう。また小菅さんバカにしているでしょ」

「してないわよ。してないわよね、知花ちゃん」

「してない、してない」


確かに、街はクリスマス一色。

去年までは、何を作ろうか、プレゼントはどうしようかと考えていたのに、

今年は何もない。


「それじゃ……」

「お疲れ様」


優葉ちゃんがいなくなり、小菅さんもご主人と外で食事をしようと、

早めに事務所を出た。社長は知り合いの社長と飲みに出かけ戻りが遅い。

伊吹さんと三村さんは、新しいクライアントとの打ち合わせが入っていて、

いつ戻るのかもわからない。


「さて……」


時計を見ると、そろそろ6時になろうとしている。

新商品は置けないと言われている『NORITA』だけれど、

小さなジュエリーボックスなら、それほど場所をとることもないので、

あらためて頼むことは出来ないだろうか。



先日、注文を受けていたお店に品物を下ろしたデザインがある。

少しアレンジを加えて、私なりに新しいものを生み出してみようと考えた。

女性は、小さなものをあれこれ集めるのが好きだし、それをしまっておくケースにも、

集めているものに思い入れがあれば、こだわるのではないだろうか。

『お気に入り』がそばにあるだけで、気持ちが前向きに変わる。


「パイン材で十分かな」


正面に花模様をあしらって、サイドにもそこからつながるデザインをつけたい。

家具だと、横に並べてしまう可能性があるので、

側面にデザインなどあまりすることはないけれど、これは意味が違う。


「うーん……」


『エアリアルリゾート』の完成を肌で感じ、私なりに一歩前へ出ようと決めた。

ペンションと違い小さなものだけれど、私にとっては大きな動きになるはず。

そう思いながら、図面を書き続けた。




【18-6】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
『肉まん』が最初に売り出されたのは、1927年。(今年で100年)
発売したのは中村屋。1月25日は、『肉まん』の日となっている。
理由は、日本最低気温の日にちなんで、温かいものを食べてもらいたいから。

コメント、拍手、ランクポチなど、お待ちしています。(@゚ー゚@)ノヨロシクネ♪


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