27 意地と恋の熱 【27-2】

【27-2】

最初の日の挨拶といい、現場での態度といい、そして昨日のことといい、

私が女だから、これだけなめられるのだろうか。

言い返してやりたいけれど、昨日の今日。

あまり揉め事になるのも……


「長峰さん」

「はい」

「そこまでこちらがやることが心配なら、最後まで確認してください」

「確認……」

「そうですよ、張り付いていたらいいでしょ」


どうしよう。出来たらお願いしておきたいところだけれど、

この人、本当に信用できない。


「わかりました」


猪田さんは、私の返事に頷き、目の前で受話器を開け電話をし始めた。

何度か頷き、納得したのか受話器を閉じる。


「発送元にあるそうなので、今日中に、こちらに届くそうです」

「今日中?」

「はい」


微妙な言い方だけれど、とりあえず間違いを認めてもらえたのならよかった。

これで、無理やり押し込まれるようなミスは起きないだろう。


「長峰さん」

「はい」

「申し訳ないですけど、職人たちの気が散るので、最後まで見届けるのなら、
外で見てください」

「外……でも、雨が」

「見届けたいのでしょ。近くで見ないと見えないでしょう。
外だから、だからなんだと言うのですか。嫌なら任せて帰ればいいではないですか。
元々、『DOデザイン』さんに見届けてくれと、頼んだ覚えはないですよ」


猪田さんはそういうと、自分は現場を仕切る立場だからと、

ヘルメットを被り中へ進んだ。私はその場に残される。


「外って……」


私は視線を窓の外へ移す。

そう、いつもの晴天なら、外に立ち続けることも、ありかもしれない。

でも、今日は一日雨の予報だった。外には座るようなベンチもなければ、

雨を避けるような屋根もない。


昨日の態度と今の文句が気に入らなかったのだろうか、

それとも、こういう現場もあるのだと、割り切らないとならないのだろうか。

泣いて、グズグズしながらこの場を離れていくとでも思われているのだろうか。


「わかりました」


私は傘をさし、現場の外に出た。





窓ガラスの外側から、見本の家具が少しずつ形になっていくのを確認する。

普通に組み立ててくれたら、3時ごろには終了するはず。



5時間……



頑張ろう。





しかし、昼を過ぎても、予定の半分くらいしか終わっていない。

手に持っていた携帯が鳴り出し、すぐに出た。


「はい」

『もしもし、長峰さん?』


電話の相手は、三村さんだった。

こんな仕打ちをされていること、口に出したいけれど、それは出来ない。

思わずため息が出てしまう。


『どうしました』

「いえ、いよいよ見本の組み立てに入っています」

『あ、そうですか。現場の指示、大丈夫ですか?』

「大丈夫ですよ、板の順番も話しましたし、
こだわりの部分も、数センチのズレが響くからと、伝えておきました」

『すみません、ありがとうございます』


三村さんが一生懸命、使いやすさ、見た目のよさ、耐久性など、

頭からアイデアをひねり出した作品。

ここまできたら、バカにされて何をされたって、最後まで見届けないと。


『3時くらいには戻りますか?』


3時……

本来なら戻る予定だったけれど、とても無理。


「あ、すみません、材料が届くのが遅れてしまって。始まりが遅いので。
おそらく無理かと」

『そうですか』


私はすみませんと返事を戻し、電話を切った。





午後3時ごろまでにはと思ってい作業は、夕方の5時を過ぎても終わらない。

昼の休憩を挟み、立ち続けた私の脚は、歩くだけで攣りそうだった。


「はぁ……」


雨は相変わらず降っている。


「長峰さん」

「はい」

「材料は明日になったそうです」

「明日?」

「はい。雨で別の運送が予定通りにいかなかったみたいで」


猪田さんはそういうと、『お疲れ様』と言いながら、現場を去っていく。

材料が届かないのなら、なぜ早く言ってくれなかったのだろう。

そうすれば、私は今までここに立っている必要もなかったのに。

文句を言わないから、立場的に自分の方が上だから……


だから、こういったことをするのだろうか。

このまま、何も言わないのは……



「長峰さん」

「……はい」


悔しさに手を握り締めたとき、現場リーダーの犬井さんが、声をかけてくれた。




【27-3】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

【猪田剛士】
『花嶋建設』の現場責任者。思った通りの人事にならなかったことで、
取引先の社員や、下請けの社員に嫌みばかりをぶつけている。
それとは逆に、権力者にはめっぽう弱い。

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コメント

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どうかなぁ……

拍手コメントさん、こんばんは

>主人公が男共をボカ-ンと小気味よくぶっとばすとこ見せてくださいね。
 毎日が楽しみです。

楽しみにしていただけて嬉しいです。
知花がぶっとばせるのかどうか、まだまだ話しは続きますので、
じっくりお付き合いください。