30 理想と現実 【30-4】

【30-4】

『ナビナス女子大』の仕事をしながら、

『NORITA』に提出する、ジュエリーボックスの新しいデザインを描きあげた。

前回のものより、イラストの存在を大きくした。

ワンポイントのつもりで、最初は取り付けたものの、見える場所を意識すれば、

もっとアピールしてもおかしくないはず。


「うん……」


悪くはないはず。

条件も満たしているはず……

納得して、もらえるはず……


「それでは、行ってきます」


三村さんと道場さんが、『エバハウス』に出発する。

顔を上げてみたが、三村さんとの視線は重ならない。


「大丈夫か、プレゼン」

「はい……」

「三村さんのデザインを中心に、フォローするつもりです。
冒険する気持ちが向こうにあるのかどうか、様子を見ようかと」



『必ず三村さんが関わるんですね……』



人の仕事のことまで、気にしている場合ではない。

私がしっかりしないと。



三村さんと道場さんは、メンバーに見送られ、そのまま事務所を出て行った。





「うーん」

「どうですか」


その日の午前中、私は『NORITA』へ向かった。

出来上がったデザインを部長に見せるが、あまりいい表情に思えない。


「悪いというわけではないんだけど、よし! と思える理由もないな」

「あ、でも、側面のデザインの大きさにもこだわりましたし、
引き出しのくぼみも……」

「あのさ、どうして木なの?」


どうして木なのか……

それは……


「今回はさ、素材を木のようなものという軽さでお願いしたいんだよ」

「木のような?」

「そう。もっともっと値段を落としたいんだ。元々、ジュエリーボックスだし、
引き出し部分も小さいでしょ。素材がどうのこうのとか、あまりこだわらずに、
数をこなせるように方向転換しませんか」


方向転換?


「いえ、でも、最初の作品は、好評だったと」

「そうですよ。完売しましたから。
でもね、もっとお安ければ数を持ちたいというお客様もいたもので」


大切なものを入れる引き出し。

私は『小さな贅沢』のつもりで、この引き出し作りに取り組んだ。

ジュエリーを入れる部分と、その下には、

他に大切なものをしまえる引き出しもついている。

低価格の商品が悪いわけではないけれど、それでは、大量生産出来ないだけに、

工場がOKを出さない気がするのだけれど。


「木のぬくもりが……」

「うーん……」


目を閉じ、両手を組まれてしまう。

人が両手を組むときは、受け入れたくない意思が出ているのだと、

以前、何かで読んだことがある。


「だから、らしくって言っているでしょ。『木』を感じられるように、細工する。
そこが『DOデザイン』さんの腕の見せ所ですよ」


『NORITA』の部長は、私の出した提案書をテーブルに戻すと、

ソファーの背もたれに寄りかかった。

確かに、伊吹さんや小菅さんも、木材以外の家具を手がけていることはいる。

でもそれは、大量生産できない、デザインにこだわったものだ。

これは四角い箱。デザインにあまりにも凝るわけにもいかないからこそ、

木材の選び方にも、色々と気を配ってきたのに。



このあたりを、説明しないと……



「何か、まだあります?」

「あの……」


専門用語を並べるわけにはいかない。

何か、いい言葉はないだろうか。


「とりあえず、こちらの案でも作ってみてよ。それでもう一度検討しましょう」

「あ……はい」


『とりあえず』、『もう一度』

私はこの言葉に流されてしまい、結局、何一つ思ったことを口に出来なかった。




【30-5】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
『COLOR』の人気メニューの一つは『エビスパ』。
日本でパスタをよく食べるのは、群馬県で、
特に高崎市には、『キング・オブ・パスタ』というイベントもある。

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