33 倉庫の隅 【33-2】

【33-2】
『全く向かないんだよね……』



私は、笑顔のまま首を振る。

幹人らしい言い方。

私自身、幹人がそう話すだろうということは、一番わかっているから腹も立たない。


「ごめんなさい。だから、『DOデザイン』に入社したときも、
その黒田さんのセリフが頭に残っていて、
私、どこかで長峰さんのこと決め付けていた部分があったような気がします。
仕事の話を聞いていると、いつも三村さんが関わっていて……」



『三村さんが関わるんですね……』

『三村さん、長峰さんのデザインが好きなのかなぁ……』



「それはきっと、三村さんがフォローしているから、
長峰さんの仕事がレベルアップするのだろうとか、こう……ごめんなさい、
本当に失礼なことで」

「ううん……そんなことない。道場さんの言うとおり、
三村さんには何度も助けてもらってきたの。
本当に、あの人がやりあってくれなかったら、『エアリアルリゾート』も、
萩尾さんの仕事も、今の形にはならなかったと思うから」


それはウソではなくて、本当のこと。

三村さんは、私をどんどん強く、たくましくしてくれた。


「でも、違うんだってこと、昨日わかりました。
長峰さんが三村さんに影響を受けるように、
三村さんも長峰さんのこと、女性としてもデザイナーとしても尊敬していて、
影響を受けているんだなって……」


階段を登り続けていたら、地下から地上へ出た。

真夏の太陽が、遠慮なく私たちを照らしてくる。

そう、今は夏。


「いいですね……自分をとことんわかってくれる人が、そばにいてくれて……」


道場さんはそういうと、眩しそうに目を細めた。

存在感ありすぎの太陽と、水色の絵の具を解き放ったような青空。

今日のこの日差し、30度は軽く越すだろう。


「私こそ、道場さんのデザイン画を見せてもらって、とっても驚いたの。
ラインの使い方も、曲線の使い方も、新しさがあるし、勢いもあるし」

「そうですか?」

「うん……」


そう、それもウソではない。さすがに賞を取る人だと、思ったことも事実。

どうなることかと思ったけれど、三村さんの言うとおり、

道場さんとの関係が、一つだけステップを踏んだ気がする。

私にも、彼女にも足りないところがあって、でも、どこか学べるところもあって。


「今日は『エビスパ』の気分です」

「あ、いいね……」


私たちは笑顔のまま事務所を目指し、

エレベーター前で、コンビニに立ち酔っていた優葉ちゃんと合流した。





「やっぱり荷物は送っておいて正解ね」

「そうよ、重たいものを持ちながら、長い移動をするのは大変でしょう」

「なんだかんだ持っているじゃないか、二人とも」

「あら、これはお土産でしょう」


そして、結婚式に向け、長峰家は、総出で和歌山へ出発することになり、

私と母は、空港で迫田家へお土産を買った。

父と知己は椅子に座ったまま、それぞれ携帯を見続けている。

きちんと休みを取ったはずなのに、しかも今日は土曜日。

男は仕事から完全に気持ちを抜くことが難しいのだろうか。


「ねぇ、4人で迫田の家に行くのは、何年ぶり」

「どれくらいかな」

「俺が社会人になってからは、行ってないね」


和歌山へ出かけることはもちろんのこと、

そういえば長峰家で旅行をすること自体、数年ぶりな気がする。

子供の頃は、海、山など、それなりに旅行をしていたが、

学年が上がれば、部活や友達との遊びが忙しくなり、家族行動は確かに減った。


「今日はみんなで久しぶりだから話をして、明日結婚式でしょう。
その次の日東京へ戻るのに、知花は本当にチケットいいの?」

「いいって言ったでしょ。和歌山へ行くことになるって話をしたら、
会社でちょっと寄ってきて欲しいと言われている場所があるの。だから……」


『ナビナス女子大』の仕事、今は特に動きがないけれど、

実は拠点が大阪のため、そこに寄り道して帰るとそう伝えてある。

三村さんと待ち合わせをすること、母はともかく、父に言うのは少し気が引けた。


時刻どおり飛行機が飛び、都会の空から雲の中に入っていく。


「知花」

「何?」

「ねぇ、三村さんとは続いているの?」

「……ん? うん」


母の観察力というか、予知能力のようなものは、いつも鋭い。

家族旅行の話しから、いきなり急展開。


「折原家との問題、何か変わった?」


私は何も変わっていないと首を振った。

あれから三村さんも何も言わない。少し近付いたように見えたけれど、

『レモネード』の問題で、また一気に距離が開いてしまった。


「反対されても社会人だから、職業を選択する自由は、彼にあるでしょ」

「まぁ、そうね」


誰がなんと言っても、三村さんにはこの仕事が合っている。

そう、強く思って欲しくて、恩師である三村先生を感じられる場所に行くのだから。


「母親としてはね、最初からハンデのある場所へ、行って欲しくはないんだけど……」


母は、飛行機の高度に耳がおかしくなったと言いながら、鼻をつまみ、

私は、何も返事をすることなく、真っ青な空の景色を、眺め続けた。




【33-3】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

【迫田富雄・満江】
和歌山に住む、知花の伯父と叔母。富雄は知花の母、真子の兄になる。
満江は嫁に入ったが、非常に明るい性格で、知花のことも娘のように思っている。
梅酒、漬け物を作るのが上手。

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