34 故郷の風 【34-6】

【34-6】
「紘生のお母さんと、長峰さんが会うの?」

「はい」

「紘生ではなくて」

「はい」


本人同士会ってくれることが、一番いいことだということはわかっている。

でも、そこはハードルが高すぎて、すぐに越えられそうもない。

三村さんが、どれほどデザインの仕事に誇りを持ち、真剣に取り組んでいるのか、

交換条件など出すことなく、心から認めて応援して欲しい。


「おば様もおじ様も、紘生に『折原製薬』の中で動いてもらうことは、
すでに諦めていると思うけれど」

「諦めではなくて、認めて欲しいのです」

「認める? どっちだって一緒でしょ」

「違います」

「違う?」

「交換条件……が……」


三村さんが『折原製薬』の中に入らないのなら、紗枝さんと結婚して、

間接的に企業の役に立てという『交換条件』。


「紘生から聞いたの? 婚約のこと」

「はい」


そう、『婚約』という言葉に、私はしばらく翻弄されていた。

三村さんを好きになっていることに気付き、そしてここまで来た。


「そんなこと、真剣に考えていないって、紘生にも言いました。
もう、母にもおば様にも、取ってつけたように人の人生を決めないでって、
そう話したし……」



……ウソ。



紗枝さんは、絶対にウソをついている。

それなら、『折原製薬』の部門と絡むような勉強を、

アメリカに残って続けてくる必要などなかったはず。


「おば様が、今でも私を娘のように思ってくださっているのは、ありがたいわよ。
お役に立ってあげたいとも思うわ。親戚同士の中で、気遣いばかりされていて、
とても大変そうだし」


大きな家族の中に入った、一人の女性。

その話しは、以前、三村さんから聞いた。


「色々なことをわかって差し上げられるのは、誰でもいいわけではないから。
でも、選ぶのは紘生だもの」


何もかもわかっていると、納得しているとそう強く出るのは、

自分の気持ちに、言い聞かせているから。

幹人の前で、自分の思いが言えなくて、頷きながらそれが正しいといい続けた、

昔の私と同じ……


「……本当は、違いますよね」

「エ……」

「紗枝さんにとって、三村さん……いえ、紘生さんはただの幼なじみ……
ではないですよね」


近すぎたから、ずっとそばで見続けてきたから、だから言えなかった。

『好きです』という気持ち。


「……何が言いたいの」

「人は、誰かを傷つけながら生きていくと、いつも三村さんが言っています。
傷つけるのは時に自分であり、時には友達かもしれない……
だからこそ、『ここ』というときには、本音で話をしないといけないって」


三村さんも、ご両親も、そしてここにいる紗枝さんも、

会社とか仕事とか、そんなものを通り越して、本音で話をしなければ、

きっといつまでも、寄り添えない。


「私の気持ちを、わかっているとでも?」

「いえ、紗枝さんの思いは、紗枝さんにしかわからないです。
私の感じている思いは、違うのかもしれません。でも……」



でも……



「私も、自分の本当の気持ちを、明らかにするのが苦手で、
それで自分も、人も傷つけてしまったから……」



怖がってばかりいて、何もかもわかっているふりをして、

長い間、自分自身を押し殺してきた。


「仕事にも自信がなくて、プライベートでも、自分の意見を言って否定されるのが怖くて、
ただ、自分が傷つかない意見に、納得しているふりばかりしていました」


何かのきっかけを作りたい。

どれほどの渦になるのかわからないけれど……


「それではダメだと、私に教えてくれたのが三村さんでした。
自分も同じように我慢し続けて、それが続けられなくて何もかも捨ててしまったと……」


ケンカになっても、思うことを告げなければならないときがある。


「私も、私の今の気持ちを、三村さんのお母さんに伝えたいと思うので……」


ソファーから立ち上がり、これ以上出来ないくらい頭を下げた。

三村さんのお母さんを呼び出すこと、それは私には出来ない。


声をかけてもらえるまで、このまま……


「……長峰さん」

「はい」

「わかりました。私からおば様に連絡します。『折原製薬』では、色々と目もあるので、
またこの場所にきていただくことになると思うけれど、それでいいかしら」

「はい」


場所などどこでも構わない。

私は、思っていることを精一杯話すだけ。


「ただ……」



ただ……

何か交換条件でも出されるのだろうか。



「あなたが思っているほど、甘くないわよ」



紗枝さんはそういうと、顔を上げた私と、目を合わせた。




【35-1】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

【迫田賢哉・亜紀】
和歌山に住む、富雄と満江の子供、知花にとっては従兄弟になる。
賢哉は29歳。父の跡を継ぎ、林業を仕事としていて、
亜紀は25歳。歯科助手の仕事をしている。

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