38 もたつく思い 【38-3】

【38-3】

『定休日』



『宝橋三丁目』の場所が、『NORITA』から延びている場所だったから、

いい具合にごまかせると思っていたのに。



どうしよう……



「長峰さん、勘違いですか?」

「えっと……」


せっかく、しっかりとした行動の言い訳を考えたと思っていたのに。

『定休日』だとは、思っていなかった。


「あ、うん……そうみたい。やだ、私慌てていたのかも」


こうなったら仕方がない。

笑ってごまかすことしか、策のない私には、出来そうもない。


「間違えたのは日付なのか、それとも……場所なのか……」


場所なのか……


「行きましょう道場さん。乗り遅れると、どんどん遅くなるし」

「あ……はい」


私の慌てた表情を見た道場さんが、一瞬困ったような顔をしたけれど、

三村さんはそれ以上、何も言わなかった。

定休日だということを言い、日付ではなく、場所を間違えているのではないかと、

つぶやくように言ったところを見ると、私がどこに向かおうとしているのか、

気付いているだろうけれど。



見逃されたのか、それとも呆れられたのか。



時々振り返る道場さんとは違い、三村さんは一度もこちらを見ることがなかった。





『宝橋三丁目』

数十年ほど前には、まだそれほど人口も多くなく、田んぼや畑が広がっていたが、

私鉄が走り、幹線道路が延びてきたため、

都心へ仕事に向かう人たちのベッドタウンとして、開発が進められた。

駅に出来たビルの3~8階部分には、

乗り入れる私鉄がグループ経営しているデパートが売り場を構える。

2階には駅本体が入り、1階の半分がデパートの食品売り場、

そして半分を地元企業が入るスペースとして、整えられた。

その地元部分に『久我不動産』が仲介として入り、

以前は、駅の横に立っていたバラック屋根の商店数店を、

ビルの中に納めることが決まった。


「1階の地元部分には、6店舗入るそうですよ」

「6店舗ですか」


こうなってしまったら、堂々と見に行くことに決めた。

バレてしまった以上、どうせ、行っても行かなくても、

また余計なことをしていると怒られるのだから。


「上にはデパートが出来るからね」

「あぁ、そうらしいですね」


道路の反対側に立つコンビニに入り、小さな飴の袋を買う。

1階の半分は『スーパー』だと聞いている。

となると、見た限りのスペースからいけば、確かに紅茶を売り、

数人が座ってケーキを食べたりする店の大きさが限界だろう。


「6店舗ってどんなお店が入るのか、ご存知ですか」

「えっとねぇ、携帯の会社と、ラーメン店と、瀬戸物の店と、喫茶店、
それとベーカリーと……」

「……と」

「あ、そう、歯医者だ」


入り込むデパート関係と、あまり競争しない店。

それが選ばれたということだろうか。


「ありがとうございます。色々と聞いてすみませんでした」

「いえいえ」


私はコンビニを出て、内装の様子が見えるところまで近づこうと、横断歩道を渡った。



『完成予想図』



大きな看板と、出来上がったときの予想図が、すでに貼り付けてある。

材料を運び入れる業者の方が数名いて、

まだ、保護シートのかかった扉の中に入っていった。

出来ている窓から、少し背伸びをして中を見る。


「どこだろう」


並んでいる店舗スペースの中で、確かにがらんとしている場所があった。

大きなテーブルが1つあって、その横には、ブルーシートの上に置かれた、

材料らしき板が、数枚並んでいる。


「ここからじゃ、テーブルの状態もわからないな」


材料を置くだけで、逃げてしまった業者の残したものだとしたら、

粗悪なものかもしれない。木の強度や特性など、素人にはわからないことも多いし、

以前、伊吹さんから、使いまわしを押し付けてきた業者の話を聞いたこともあった。

見本の色が綺麗だからと選んだが、実際に使ってみるとすぐにヒビが入ったり、

傷がついてしまってがっかりするようなものも、木材にはたくさんある。


「……あの」

「あ、すみません、私、怪しいものでは……」


声をかけられてすぐに頭を下げると、目の前に立っていたのは環奈さんだった。




【38-4】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

【松宮環奈】
紘生の大学時代の友人、久我秀臣の妹、すでに嫁いだため名字は松宮。
紘生と秀臣のぎくしゃくした関係を知っていたため、
なんとかしたくて『DOデザイン』にやってくる。

コメント、拍手、ランクポチなど、お待ちしています。(@゚ー゚@)ノヨロシクネ♪


コメント

非公開コメント