39 無完璧な人 【39-2】

【39-2】
「……三村さん」


ライトの下に来ると、耳の赤いところまでハッキリわかる。

どれくらい飲んでいたのだろう。

こんなふうになるのは、今まで一度も見たことがない。


「場所を見て、あなたなりに考えて、どうにか出来るとでも思いましたか。
どうせ、戸波さんあたりに電話をして、アドバイスでももらったのでしょう」


泥酔している人に言い当てられてしまうくらいの行動だったかと思うと、

どこか悔しい気もするけれど、合っているだけに言い返せない。


「その通りです。戸波さんに助けを求めました。三村さん……あの……」

「『エバハウス』、もう少しでメチャクチャになるところでした」


『エバハウス』がメチャクチャとは、どういうことだろう。


「道場さんがいなければ、相手は怒って帰ってしまうところでしたよ。
そりゃそうですよね。相手の希望通りに作っていないんですから」


『エバハウス』

引き受けたという仕事にトラブルがあって、

三村さんはこれだけ酔っているのだろうか。


「何があったのですか」

「戸波さん、見に来てくれるとでも言いましたか」


私が聞き出そうとしているのに、話しが通じていないのか、

三村さんから問い返される。ここで無理に話を戻そうとすると、

またややこしくなるだろう。


「はい、電話だとどうしてもわかりにくいから、一度、見てくれると……」

「あぁ、無駄ですよ、無駄」

「無駄?」

「すぐに取りやめですと、連絡入れてあげてください。東京まで出てきて、
動くのだってただではないですし……」

「三村さん、私……」


実際に店の場所を確認し、環奈さんや久我さんと会ったことも話すつもりだったが、

小さく丸まったまま横になった三村さんは、そこから返事をしてくれなくなる。


「三村さん」


話したくなくて黙っているのだろうか、それとも、眠ってしまったのだろうか。

どちらにしても、いつもの三村さんとは違う。


「三村さん……眠ってしまったの?」


私の問いかけに返事が戻ることはなく、カチカチと時計だけが音をさせる。

私は、押し入れからタオルケットを取り出し、三村さんの体にそっとかけた。





三村さんは、お酒に弱い方ではないと思う。

いや、いつもはしっかり自分の量を知っていて、そこを越えるような飲み方はしない。

それなのに、これだけの状態になってしまったのだとすると、

起きていた出来事が、小さなことではない気がする。





次の日の明け方。

扉がパタンと閉まる音がして目を開けてみると、三村さんの姿はなくなっていた。





「おはようございます」

「あ、知花ちゃん、おはよう」


いつもと同じ電車に乗り事務所に向かうと、自分の席にバッグを置いた。

三村さんの席を見るけれど、まだ来ている気配はない。

家に戻って着替えてくるのだと思っていたが、違うのだろうか。


「長峰さん、この間のお土産代、提出してくれた?」

「あ、はい。すみません」


私はデスクの引き出しを開け、和菓子屋から受け取った領収書を出した。

書類に貼り付け、内容を書き、塩野さんに渡す。


「はい、たしかに」

「よろしくお願いします」


社長の後ろにあるホワイトボードを見ても、1週間分のおおよその予定表を見ても、

特に今日、出かける予定は書き込まれていない。

『二日酔い』で立てないのかと思ったが、私の部屋はしっかり出て行ったのだから、

それはおかしい。

気にならないといえばウソだけれど、

私は自分の仕事をするためにファイルを取り出し、PCの電源を入れた。



時計が10時を回った頃、事務所の電話が鳴った。

いつものように優葉ちゃんが受話器をあげ、『DOデザイン』だと挨拶する。


「はい、はい。お待ちください」


もしかしたら三村さんではないだろうか。

優葉ちゃんが『保留』のボタンを押し、顔をこちらに向けた。


「知花ちゃんあてです」

「誰?」

「はい。昨日の……あの女の方です。事務所に来た」


環奈さん……


「はい」

『もしもし、すみません、環奈です』


昨日はありがとうございましたという挨拶の後、

午後、事務所にいるのかどうかと聞かれてしまう。


「はい、いるつもりです。あのですね、環奈さん」

『そうですか。本当にすみません』



……すみません。

どうして謝られるのだろう。



「何かありましたか」


昨日の今日。謝られる理由が見つからない。


『長峰さん、何もご存じないですか』

「……はい」

『そうですか……』


何があったのだろう。環奈さんの声のトーン、明らかに低い。


『電話ではなく、直接お話にうかがいますので、よろしくお願いします』

「……はい」


戸波さんのことを話そうと思ったが、そんな雰囲気にはならずに、

電話は終わってしまった。




【39-3】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

【久我秀臣】
『久我不動産』の跡取り息子。
実は、紘生と大学が同じで、唯一デザイナーになりたい夢を知っていたが、
それを紘生の父に話してしまい、紘生が会社を飛び出すきっかけを作った。

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