40 挑む相手 【40-4】

【40-4】
『コンスタン』

近頃伸びてきている家具メーカーは、

以前『林田家具』でデザイナーをしていた男性が、自分で興した会社。

そして、今回、ドラマタイアップの仕事が決まり、なんとその中で……


「長峰の『ジュエリーボックス』をか」

「はい」


以前、『アトリエール』に載せてもらった記事、

舞台女優の『小林蘭子』さんが、

ジュエリーボックスをお気に入りとして紹介してくれたものだったが、

今回、その小林さんがドラマに出ることが決定し、

主人公の部屋や、相手役の部屋の家具を『コンスタン』が引き受けた中、

私のジュエリーボックスだけを使うことが出来ないか、

本人から問い合わせがあったという。


「それは相当気に入ってもらえたということだな」

「どうも小林さん、お友達にも数名プレゼントとして購入されていたらしくて」

「うん……」


『コンスタン』は、ベテランの女優が頼むことでもあり、揉めたりするのも面倒なので、

『DOデザイン』側に問題がなければ、使用する方向で進めたいのだと電話をしてきた。


「私では決められませんので、社長にもう一度連絡をいただけますかと、
とりあえず電話は切りましたけど」

「わかった。長峰はどうだ」

「どうって……」

「いやいや、『ジュエリーボックス』はお前の作品だろ。
『コンスタン』の提案を受け入れて、番組に商品を提供するのか、
それとも、お断りするのか。他の会社のものと並ぶというのは、
いい評判も悪い評判も受けやすいからな」

「評判……ですか」

「あぁ……」


どうなのかと言われなければ、これはチャンスだと軽く引き受けていただろう。

でも、あらためて聞かれると、どう返事をしていいのかと考えてしまう。

しかも、『いい』も『悪い』もとなると、余計に気になって。


「あの……」

「なんだ」

「いい評判というのは、たとえばどういうことですか」

「たとえば……」

「はい。それは『DOデザイン』にとって、プラスになることでしょうか」

「それはもちろんなるよ。視聴者からあのジュエリーボックスがかわいいけれど、
どこで購入できるのかという問い合わせでもあれば、
『DOデザイン』という会社が作っていて、扱っている店はここですと、
知ってもらうことが出来る。CM代金を払わずに、画面に映るわけだから、
こちらとしてはありがたいことだ」


テレビならば、今まであまりうちに縁のなかった人たちでも、

会社の名前を知ってもらうことが出来る。

『アトリエール』の記事に載せてもらうことも、もちろん宣伝だと言えるけれど、

テレビの視聴者との幅広さは、比べ物にはならないだろう。


「それなら、悪い評判というのは」

「それは、『コンスタン』が今回取り仕切っている中に、お前のものが入るわけだから、
相手は、自分の商品よりもよく見える場所に置こうとは思わないだろうし、
もっと見栄えのいいものを、比較対象に出されてしまうかもしれない」


比較対象。

確かに、そういう可能性はある。

『コンスタン』にしてみたら、自分のものがまず1番なわけだから。

それに、ランチの時間に小菅さんが言っていた通り、

広がるということが、仕事を荒くしてしまう可能性もあるのだろうか。


「どうした……」


それでも、もし、あの作品を通じて、『DOデザイン』が少しでも注目されて、

伊吹さんや、小菅さんの仕事が認めてもらえたら、それは悪くない。

優葉ちゃんの言うとおり、うちは他の会社に負けないものをきちんと作っている。

無理に引き受けるのではなくて、今あるものを生かすのだから……


「社長」

「うん」

「私は、『DOデザイン』のためになる可能性があるのなら、それでいいです。
私個人のことより、この会社を、みなさんが知るきっかけになるなら……」

「……そうか」

「はい」


ここに入社して6年が経った去年、私は、何も残せず結婚して辞めると思っていた。

それが、こんなふうに作品を評価してもらえる日が来るなんて。


「わかった。それなら、私と一緒に『コンスタン』に出向いてみるか」

「『コンスタン』にですか」

「あぁ。お引き受けするにしても、
こちらもそれなりに言いたいことは言わせてもらわないと。
それならば、ここへきてもらうより、相手の職場へいけば、
仕事振りを見るチャンスが出来るし」

「……はい」


その日の午後、あらためてかかってきた電話で、

3日後、私と社長が『コンスタン』へ向かうことが決定した。





「美味しい」

「うん」


その日の夜は、折原さんと外で食事をすることになった。

出された食事に合うからだろうか、それとも気持ちが浮かれているのか、

お酒がいつもより美味しく感じてしまう。


「小林蘭子さんの件があって、『NORITA』も、第一弾の商品を、
もう一度置くことに決めてくれたんです」

「天然木で作る方ですか?」

「はい。第二弾は『木らしいもの』ということで、価格を抑えたじゃないですか。
それももちろん売れてくれたけれど、指定されたのは最初の方でしたから」

「そうですか」


ジュエリーボックスを手直ししていたときは、道場さんが入社してきた時期で、

いつも折原さんを頼っているというセリフに、意地を張り続けたことを思い出す。


「でも、私のあのジュエリーボックスが、ドラマに使われるだなんて、
なんだか夢みたいで、まだ信じられないところもあるんです」

「どうして」

「だって……今までとあまりにも違うから」

「今まで?」

「そう。私、『DOデザイン』に入社してから、
ほとんど、これといった仕事を担当したこともなくて……」


始めこそ、デザインも採用されていたが、だんだん描けない日が多くなって、

いつの間にか、フォローばかりが増えた。

そんな私の作品が、人に認められたなんて、何も出来なかった日々と、あまりにも違う。


「それは、長峰さんが自分をがんじがらめにしていたからでしょう。
あなたには元々実力もある。俺は最初からそう言っていたはずですよ。
心を自由にしてあげたら、あなたは色々と生み出すことが出来るのに、
ガチガチだったから」

「……はい」


そう、ガチガチだった。『ダメ』だと言われることが怖くて、

出ないようにしていることが、楽だったから。


ここにいる人たちの『ダメ』は、もっと出来るよの励ましだと、

やっと気づくことが出来たから。




【40-5】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
日本の街路樹は、『イチョウ』、『サクラ』、『ケヤキ』の順番で多い。
イチョウは、まな板や将棋盤などによく使われ、
ケヤキは和の家具(和箪笥やちゃぶ台)の材料として重宝されている。

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