41 男女平等 【41-2】

【41-2】
カレンダーは9月に入り、『花嶋建設』の社内表彰式の日がやってきた。

建設も順調に進んでいて、秋頃にはほぼ完成した建物を見に行くことになるだろう。

今日は社長の前に呼ばれる日なので、

あの猪田さんも、さぞかしニコニコとしてくれるはず。


「いつも思うのですが、建設会社のビルってどうしてこう、圧迫感があるんですかね」

「俺たちが建てましたっていうアピールだろ」

「うーん」


伊吹さんと折原さんと私。

今日はスーツに身を包み、あらたまった姿で本社ビルに入る。

どれくらいの人数が招待されているのかわからないし、

どういう顔をして立っていたらいいのかもわからないけれど、

とにかく……


「おい、長峰。そっちじゃないぞ」

「あ……はい」


初めて来る場所だったからか、行き交う人に圧倒されて、

関係ない方向へ進みそうになる。私は受付前を通り、奥へと進んだ。


「さっそく迷子ですか、長峰さん」

「違います、迷子ではありません。人がいきなり大勢出てきたので」


しっかりとしていないと。

会場では本当に迷子になるかも。


エレベーターは私たちを乗せ、大会議室と呼ばれる場所がある12階へ動き出した。



『花嶋建設 上半期社内賞会場』



世の中は、あまり景気がよくないというイメージがあるけれど、

盛り上がっているところはあるものだと、会場の雰囲気を見ながらそう思った。

さっそく伊吹さんに声がかかり、私たちも揃って挨拶をする。


「うちの折原と長峰です」

「どうも」

「『花嶋建設』の法人担当部長だ」


この人は猪田さんより上の人だろう。蓄えた髭で、なんとなくそう思う。


「おぉ……折原といえば、君か。『折原製薬』の……」


挨拶だけして通り過ぎられるのかと思っていたのに、

『折原製薬』のことを出されてしまった。

しかも、折原さんの顔を、指で示すなんて失礼だ。


「はい、そうです」


折原さん、どういう顔をするだろうかと思ったけれど、意外に冷静。


「そのことで、仕事を途中で交代することになりまして、ご迷惑をおかけしました」


折原さんは、髭の男性に向かって、頭を下げた。

どうしたのだろう。今日の折原さんは、何にも動じる気配がない。


「いやいや、私は現場のものではないから、迷惑はかかっていないけれど、
大丈夫なのかい、君はこういう仕事をしていて」


挨拶だけなのだから、あれこれ聞かずに黙って通り過ぎてくれたらいいのに。

自分は関係ないと言いながら、また聞きだそうとする。


「私自身、一生出来る仕事だと思い、選んでいますので」

「うーん……あれほどの会社があるのに、ご両親は大変だな」


肯定でも否定でもない笑みを浮かべ、折原さんは髭の男性をやり過ごした。

生まれたときからそこにあるものが大きいと、大変なことが多い。

『何もない』ということが、幸せなのではないかと、ふとそう思う。


「どうしました」

「どうしましたって?」

「なんだか眉間にしわ、よってますよ」

「エ……」


折原さんのことを考えていたら、そんな表情になっていたのだろうか。

慌てておでこに軽く触れ、気持ちでしわを伸ばしていく。


「……あ」


私の目の前に、あの雪村さんが姿を見せた。

今、私たちの前を通り過ぎた髭の男性を捕まえて、何やら話している。

そこに猪田さんまで姿を見せて、大嫌いな二人が揃って立った。


雪村さんは、確か政治家の秘書だったはず。

『ナビナス女子大』の現場で初めて会った日、

いきなりの飲み会で堂々とセクハラしておいて、怒った私をあざ笑った男。

視線を合わせたくないのに、つい見てしまった。



いやだ……向こうもこちらに気付いたのだろうか、二人で向かってくる。


「どうしました」

「いえ……」


折原さんに、今あれこれ言うのもおかしい。

とにかく、挨拶だけ、挨拶だけすればそれでいい。

ここで逃げるのも、おかしな話しだし。


「えっと……君、確か『ナビナス女子大』の現場で会ったよね」


『君』

人の名前すら忘れているなんて。

本当に、最低な男。


「雪村さん、『DOデザイン』の長峰さんですよ」


猪田さん、一応名前だけは覚えてくれていた。


「おぉ、そうそう君、そうだった君だ。なんだか最後まで現場に張り付いて、
頑固に動かなかったという、君だわ、君」


タマゴではないのだから、『キミ』の連発はやめて欲しい。


「現場に張り付いたというのは……まぁ、張り付かれていましたが」


猪田さん、含み笑いをしながら、こちらを見た。

張り付いたとは、ずいぶんな言い方だ。仕事が遅れているのに、

適当なことをしようとしたから、だから雨の中外に立ち続けたのに。


「おぉ……三村……いや、折原君」


猪田さんが、折原さんに声をかけた。




【41-3】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

【高梨俊作】
イタリア人の祖父を持つため、『シルヴァーノ高梨』と名乗っている。
以前、『林田家具』に勤めていたが、より自分らしい生き方がしたいと、
組織を飛び出した。賞を取った『J』こと、紘生にライバル心を燃やしている。

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