41 男女平等 【41-4】

【41-4】
犬井さんは、伊吹さんや折原さんが私の同僚だとわかったのだろう、

二人にもきちんと挨拶をしてくれる。


「犬井さん、いつもの作業着姿ではないから、わからなかったですよ」

「いやいや、ここにはさすがにね」


伊吹さんは、長峰がお世話になりましたと、挨拶をし、

犬井さんは、私がとても頑張っていたということを語ってくれる。


「理不尽なことばかりぶつけられて、それでも弱音を吐かずに、
よく頑張っていましたよ」

「ありがとうございます」

「いやいや。本当のことだからさ。私たちは、色々な現場で仕事をしていますが、
あの組み込まれたタンスのデザインは、本当に素敵でした。
微妙に角度を変えるなんていうのは、デザイナーさんの自己満足……あ、すみません……」


犬井さんは口を軽く押さえ、舌を出す。


「そう思っていたのですが、実際に触れてみたら、動かしてみたら、
どうしてそういう作りをしたのか、よくわかりましたから。
別現場で、仕事をしていたスタッフも、『DOデザイン』さんの家具は、
本当にいいものだと、そう言ってましたよ」


私は、デザインを担当したのはこの二人だと、

あらためて伊吹さんと折原さんを紹介した。犬井さんはそうですかと笑顔を見せる。


「夢のある、いい仕事ですね……」


飾りっけのない、素直な言葉が、逆にずっしりと重く感じられた。

私が選んだ仕事は、自分も、相手も夢を持てるものなのだと、改めてそう思う。


「犬井さん、犬井さんが新しい家具を作られるときには、ぜひうちで」

「そうしたいところだけれど、うちなんて、注文家具を持てるほど、
贅沢な暮らしじゃないですよ」

「犬井さん、『DOデザイン』は注文家具だけではないんですよ。
お店においてあるものもありますから」

「……そうですか」

「はい」


社長をはじめとして、伊吹さんも、小菅さんも、そして私たちに道場さんも、

みんな生み出す家具たちに、誇りを持っている。


「それなら……今度また」

「はい」

「どこかの現場で、会えるといいね」

「はい」


猪田さんや雪村さんのように、もう会いたくない人もいたけれど、

犬井さんのように、声を交わすことが出来る人もいる。


「あんな素敵な人もいたんですね、現場に」

「はい。私のことをとても気にしてくれました。
ただ、立場があるので、なかなか……」

「そうですね」


大手の企業と下請け。男と女。

世の中には、なかなか変えられない構図がたくさんある。

伊吹さんに、また別の人から声がかかり、他の人と挨拶をするために動いてしまう。


「これ、美味いなぁ、さすがに大手のパーティーだ」


折原さんは、手に持ったお皿の上に、楽しそうに食べ物を乗せていく。


「やるべきことはやりました。あとは食べて帰るだけです」

「やるべきことって……」

「今、低レベルの男を、追い払ったでしょう。あれが今日の仕事です」



仕事……



「もしかしたら、あの嫌みですか」

「そうですよ」



『『男女平等』を政治信念にうたっている島浦先生の秘書さんが……と、
私も長峰から聞いたときには、少し考えましたけれど』



「本当に……」

「当たり前です。でなければこんなに面倒な場所に、俺が来ると思います?」


そう言われてみたら、確かにそうだった。

折原さんは、こういう場所を嫌う人だと思っていたから。

素直に受け入れたこと自体、不思議に思っていた。


「……そうですね」

「わざわざ『セクハラ』されて、熱が出るまで外に立たされて、
言われっぱなし、されっぱなしで引っ込んでいられないでしょう。
でも、言われたあとですぐに言い返せば、続いていた仕事に影響受けかねないので、
時を待ちました」

「時……ですか」

「はい」


私たちのそばを離れた雪村さんは、会場を出たのだろうか、姿がなく、

猪田さんも、自分より上の人にあれこれ言われて、細かく動いている。


「あの雪村という男に……長峰さん、いいですか、
あのどうしようもないほどマイナス要素の強い男に、『君に女を感じない』って
言われたんですよ」


『君に女を感じない』

そう、確かに鼻で笑いながら、そう言われたことを思い出す。


「覚えていたんですね」

「当たり前です。悔しいでしょう、俺、性格がねちっこいんですよ」


そんなことはもういいですよとたしなめながらも、

あの日の仕返しを、折原さんがしてくれたことが、とても心地いいのも事実。


「うん……これも美味い」

「本当に、美味しいですね」


東京の高層ビル街に立つ、存在感のある建物の中で、

並べられた料理を、味わっていく。


「今度……これ、作ってください」

「これですか、これは無理ですよ」

「そうですか?」


私は笑いながら小さく頷き、折原さんはそれならばと、またおかわりする。

思いがけない再会と行動に、私の心とおなかは、しっかりと満たされた。




【41-5】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

【高梨俊作】
イタリア人の祖父を持つため、『シルヴァーノ高梨』と名乗っている。
以前、『林田家具』に勤めていたが、より自分らしい生き方がしたいと、
組織を飛び出した。賞を取った『J』こと、紘生にライバル心を燃やしている。

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