42 波と風と 【42-1】

42 波と風と

【42-1】
『スタジオ見学』

思いがけない話に、社長にまず報告をしようと思ったが、

いつの間にか正面には姿がない。


「あれ? 社長、出かけちゃいましたか?」

「社長なら、小菅と出て行ったよ」


小菅さんと出て行ったとなると、昨日の椅子注文の件だろうか。


「どうした、何かあったか」

「あ……えっと実は、『コンスタン』の高梨さんから電話がありまして」

「『コンスタン』? あぁ、それで?」


私は、高梨さんが、

『ジュエリーボックス』を気に入ってくれた、舞台女優の小林さんと会うために、

スタジオ見学をしにこないかと提案してくれたことをそのまま話した。

伊吹さんはマウスから手を離し、行って来ればいいと返事をする。


「はい」

「エ……知花ちゃん、『オレンジスタジオ』に行くの? うそぉ……いいなぁ、
撮影見られるのでしょう」

「撮影はわからないわよ。小林さんに会うのが目的だし」


そう、全く関係ない人物が、仕事場をウロウロするのを、

嫌がる人もいるのではないだろうか。


「いいな……私も行きたいです」


ミーハー感が炸裂した優葉ちゃんは、一緒に行ってはダメなのかと、

必死にアピールする。私自身は構わないけれど……


「小暮さん、そういうことをするとね、軽く見られるものなのよ。
くだらないことを言っていないで、自分の仕事は終わったの?」

「塩野さん……くだらないって、だって、なかなかチャンスがないですよ」

「一覧表の計算、有給を取るから来週に回すつもりだったのは誰ですか」

「あ……あぁ、もう!」


優葉ちゃんは、彼との旅行を計画し、塩野さんに有給をお願いしていたため、

今回は、渋々要求を取り下げる。

伊吹さんがOKだと言ってくれたら、社長に反対されることはないだろう。

私はあらためて高梨さんに電話を入れ、『スタジオ見学』をお願いした。





そして、小林蘭子さんにお会いする日がやってきた。

何も持っていかないのでは悪いということで、楽屋に差し入れするようなお菓子を買い、

約束どおり『オレンジスタジオ』の受付へ向かう。

守衛のいる門の前では、人気タレントさんを待つ女性たちが数名立っていて、

あまり見たこともない顔の私が名前を言い、中に通されるのを恨めしそうに見た。


「受け付けの場所は、お分かりですか」

「あ、いえ。ただまっすぐ進めばいいのかなと」

「いえいえ、受け付けは正面の建物ではなく、その左側の建物になります」

「あぁ……」


正面の建物は、老朽化が進み、先月から受付を新館に移したのだと、

守衛さんはわかりやすく教えてくれた。


「あの」

「はい」

「いつもあのように、女の子たちが立っているのですか」


年齢的には、まだ学生だと思えるくらいの若い子から、

私の母と同じくらいの女性も数名見えた。


「まぁそうですね。特に発表しているわけではないのですが、今日はどんな撮影があって、
誰がここへ来るのか、情報がネットでどんどん広まるようです」

「あぁ……そうですか。わかりました、すみません向こうですね」

「はい」


私は守衛さんにお礼を言い、言われたとおり左側に立つ新館へ向かった。

ガラス張りの建物は、マジックミラーになっているのか、

中から外の様子はわかるのに、外からだとあまりよく見えない。

スーツ姿の男性が、分厚い手帳を持ち歩いているかと思えば、

薄汚れたジーンズを引きずるようにして歩く、男性の姿もある。


「あの、すみません。『DOデザイン』の長峰と申しますが、
『コンスタン』の高梨さんをお願いします」

「長峰様ですね、少々お待ちください」


受け付けの女性に、並んでいるソファーに腰かけて待つように指示をされたため、

私は言われるとおり、一番端に腰かけた。

スタジオの壁には、ここで撮影されるドラマのポスターが、いくつか貼られている。

近頃、あまりテレビを見なくなったからなのか、ストーリーがわかるものは、

一つもなかった。


「長峰さん」


かけられた声に振り返ると、高梨さんが立っていた。

私はすぐに立ち上がり、よろしくお願いしますと頭を下げる。


「よろしくだなんて、こちらこそ申し訳ないですね。急にお願いしてしまって」

「いえ、あのジュエリーボックスを気に入っていただいた小林さんには、
私もお会いしたかったので、よかったです」


そう、それはウソではなく本当のこと。

『ありがとうございます』と一言お礼が言いたい。


「楽屋入りされているので、行きましょう」

「はい」


テレビでしか見たことのない人と会うなんて、なんだか急に緊張してきた。

この和菓子、仕事先では好評だけれど、大女優さんの口に合うだろうか。

エレベーターはスタジオのある2、3、4階を抜け、楽屋のある6階で止まった。

先に下りた高梨さんの後ろを歩きながら、少しでも落ち着けるようにと、

大きく息を吸っては、ゆっくりと吐いていく。


「ここです」



『小林蘭子様』



確かに、楽屋前に名前が書き込まれている。


「失礼します」


扉が開かれ、私も中に入った。

白い大きな花束や、たくさんの積み重なる本。

小林蘭子さんの楽屋には、お弁当や飲み物、差し入れのお菓子などが、

色々並べられていた。




【42-2】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

【雪村龍】
政治家、島浦かほるの秘書。
自分の仕事に、周りが気を使うことを知っていて、横柄な態度を取る。
女性へのセクハラは、日常茶飯事。

コメント、拍手、ランクポチなど、お待ちしています。(@゚ー゚@)ノヨロシクネ♪


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