46 孤独な目 【46-1】

46 孤独な目

【46-1】

『コンスタンのチーフデザイナー』

それは、高梨さんが折原さんを引き抜こうとした、そういうことだろうか。

私は……



何も知らない。



「どうしてその話を断ったの?
おじ様やおば様に、仕事を認めてもらえるチャンスだったでしょう。
『DOデザイン』ではなくて、『コンスタン』なら、それが出来たはず」

「今日はそんな話ではないから、黙っていてくれないか」

「高梨さんに聞かれたの。折原さんの実力がどうしても欲しい。
チーフデザイナーという位置には、全く興味を示してくれなかったって。
だから私は言ったわ。彼女を誘ったらどうですかって」



彼女……



「長峰さんを誘って、その気にさせたら、動くかもしれないって……」


私……


「誰をどう動かそうと、何を提示されようと、俺はこの会社に入るつもりはないし、
親に無理に認めさせようとも思っていない。
いい加減に、自分の行動を正当化するのはやめてくれ」



『長峰さんを誘って、その気に……』



高梨さんが以前、私を誘ってくれたのは、あれは折原さんが欲しかったから。

私の実力ではなくて……


「古川さん、その言い方では、長峰さんに失礼だ。
私は、彼女の実力もしっかり評価して声をかけたつもりです。
ジュエリーボックスは本当に素晴らしかったから」



『給料1.5倍……』



あの話をした時、折原さんは、

すでにこういう動きが来ることを予想していたのだろうか。

私を誘う前に、折原さん自身を誘っていたから、次はこういう手で来たと、

思っていただろうか。


「電話や人伝えでは誤解も生まれやすいです。今日はこうして顔をあわせられたので、
しっかりと話し合いましょう」


高梨さんが評価していたのは、折原さんだった。

そんなことで気持ちが沈むなんて。


折原さんが欲しいから……私を利用した。


そんなこと、驚くことでもないのに、心のどこかで自分を認めてもらえた気がして、

嬉しかったことは間違いない。


でも……


「紗枝……」

「何」

「この席は、俺が高梨さんに頼んで作ってもらったものだ。
君が勝手に語るつもりなら、今すぐ出て行ってくれ」

「紘生……」

「『折原製薬』も親の話しも、持ち込むな」


折原さんはそういうと、持ってきた茶色の封筒をテーブルの上に置いた。

高梨さんは、話があると言ったのは折原さんの方なのだから、

先に話を聞きましょうと、紗枝さんにコーヒーを勧めていく。

紗枝さんは、わかりましたと返事をし、私たちから視線をそらす。


「今日は、これをお渡ししようと思い、出向きました」

「これとは、この封筒ですか」

「はい」


高梨さんは、茶色の封筒を取り、封を開けた。

中を見た目が、急に厳しいものに変化する。

あれだけ、キツイ目になるというのは、何が入っているのだろう。


「『コンスタン』さんが、見事なやり方で、
『DOデザイン』のピンチを救ってくださったので。逆に、そちらのピンチを救いに……」


『ピンチを救う』とは、どういうことだろうか。


「ピンチに……うちが見えると」

「はい。戦わずして勝とうとすることが、その証拠でしょう。
うちが出なければ、プレゼンで自分たちが1番になれると、
必死にもがいている『コンスタン』さんに……」

「折原さん……」


思わず名前を呼んでしまった。

まだ、話しの始めなのに、いきなりケンカモードになりすぎている。


「なんですか、長峰さん。もうストップをかけるつもりですか。
言いたいことのまだ10%も言えてません」

「折原さん、必死でもがいているように、うちが見えると言うことですか」

「そうですよ」

「それは心外だな。うちの経営は順調そのものです」


高梨さんは茶色の封筒から2枚の紙を取り出すと、テーブルの上に並べた。


「あ……」


それは、私たちが頭をひねり作り出し、

『FREE』へ提出するつもりだったデザイン画だった。




【46-2】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
木材は材木の中にある精油成分により、それぞれ特有の香りを持ちます。
ヒノキやヒバは抗菌、クスノキやヒバは殺虫、
ヒノキやスギには、防ダニの効果があると言われています。

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