47 我らの場所 【47-6】

【47-6】

「折原さん」

「はい、今度はなんですか」

「吉田さんの仕事、伊吹さんがやるのかもしれません」

「それならそれでいいですよ」

「でも、今、小菅さんがしたほうがいいと、言ってましたよね。
ねぇ、今しかないです。伊吹さんに話をして見てください」


私では、伊吹さんより小菅さんの方がいいだなんて、

こう、うまく言えないけれど、折原さんなら……


「長峰さん」

「はい」

「言いたいことは、言いたい人が言うべきです」

「だって……」

「立体図!」

「……はい」


とりあえず立体図を仕上げて、マウスのポタンをクリックする。

PCが動き出して、プリンタから紙が出始める。


「伊吹さんは、うちで一番の実力者ですよ」

「わかってます、それはもちろん」


こなしてきた仕事の数も、技術的なことも、知識も、

私たちより数倍も優れていることは、もちろんわかっているけれど。


「もしもし……」


吉田さんに電話をかけているのだろうか。

指はマウスに置き、なんとか動かしながらも、心は伊吹さんの電話に向かってしまう。


「おぉ……お前、明日は出てこられるか」



お前?



「お前にどうしても、やって欲しいことがあってさ」



お前……って。



「何、言っているんだよ、俺も社長もお前しかいないって、そういうことになった。
は? 妊婦? 甘ったれるなって」



妊婦……って、もしかして。



「伊吹さんは、俺たちのチーフですよ。
俺や長峰さんが思うことに、気付かないわけがないでしょう。
小菅さんのため、判断するに決まっています」


伊吹さんと社長は、小菅さんに仕事をさせることに決めてくれた。

もちろん、最後まで関われないかもしれないけれど、それでも……


「あぁ、そうそう。そうだよ、最後のいいところは俺がやるよ、
当たり前だろう、手柄は俺が取るわけだ」


『DOデザイン』が出発した頃から、スクラムを組んできた3人。

そう、私なんかが及びもしない絆が、しっかりとある。

やきもきすることなどなかった。そう、私なんかよりももっともっと、

優れている人たちなのだから。


「ほら、長峰さん、これ見てください。立体図にすると変わりますよイメージ」

「はい」


それぞれが出来ることを積み重ねていくこと。

それが『DOデザイン』のスタイル。


「それなら、ここをもう少し削りましょう」

「ですね」


あと4日。

精一杯、頑張らないと。





次の日、小菅さんが事務所に出社し、あらためて吉田さんと連絡を取った。

吉田さんは、小菅さんが引き受けたことに、とても感謝をしているように思え、

その後を引き継ぐ伊吹さんにも、何度も何度もお礼をし、心から喜んでくれた。

そして、『COLOR』ランチ組みも、久しぶりに4人が揃う。


「あれだけ褒めてもらえるのも、なんだかくすぐったかったわ」

「そんなことはないですよ、あのカルチャー教室の机、私も入社前に見に行きました。
本当におもしろい作品だと思いましたし、小菅さんの仕事の成果ですから」


席につくと、早速メニューを渡す道場さんが、そう言った。

優葉ちゃんも、あなたがいいと言われるほど名誉なことはないとフォローする。


「みんなにかけた迷惑からしたら、ずいぶん小さな仕事だけどね」

「小菅さん……」

「また、そんなことを言って。大きさなんて関係ないわよ。
こうしてデザイナーとしての手本を見せて、退社していく先輩を、
みんなちゃんとわかっているから、ねぇ……」


お冷を運んでくれた聖子さんが、少し流れた重たい空気を、一気に吹き飛ばす。

小菅さんは、そうだよねと明るく笑ってくれた。



久しぶりに見る、小菅さんの笑顔。



「今日はみんなにおごっちゃう」

「エ……本当ですか」

「本当、本当。先輩としての太っ腹を見せちゃうから」


小菅さんはそういうと、お腹を軽くさする。


「先輩としてではなくて、妊婦としての太っ腹ですよね」


優葉ちゃんの返しに、私も道場さんも声を出して笑った。




【48-1】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
木材は材木の中にある精油成分により、それぞれ特有の香りを持ち、
ヒノキやヒバは抗菌、クスノキやヒバは殺虫、
ヒノキやスギには、防ダニの効果があると言われています。

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