48 縁ある人々 【48-5】

【48-5】
『久我不動産』に向かう前に、立ちはだかる『FREE』の壁。

プレゼンから時間は流れ、今日は発表の時を迎えた。

10時には電話をすると言われているのだから、かかってくることは間違いないだろう。

問題は『採用』なのか『不採用』なのか。


「ふぅ……」


互いに、事務所にいてもどこか落ち着かなくて、つい足を屋上に向ける。

風に吹かれて気持ちいい季節ではないのだけれど、

事務所の中で別の仕事を進めるのは、少し難しい心境だった。

折原さんは、タバコに火をつけて、ゆっくり自分のペースで吸い込んでいく。



『父のやり方に似ているんですよ』



折原さんは、今回の仕事の中で、よくお父さんのことを口にした。

『コンスタン』に対しての意地は、どこかお父さんに対する意地でもあり、

それがどんな結果になるのかで、また……



気持ちが、揺れるだろうか……



「『コンスタン』のデザイン、見ているわけではないので、なんとも言えないですね。
このふわふわした状態は、いつ抜け出せるのか……」

「そうですね」

「あぁ……待つのは長い」


携帯を開き、時計を見ると、10時を2、3分回ったところだった。

事務所に戻るのは怖いけれど、誰かがいなければ……


「私が戻ります、下に」

「あ……はい」


私が手すりから手を離し、エレベーターの方へ体を向けたとき、

扉が開き、優葉ちゃんが降りてきた。


「優葉ちゃん……」


きっと、連絡をもらったのだろう。

だから、ここまで来てくれた。



『採用』なのか、『不採用』なのか。



『○』なのか、『×』なのか。



「『FREE』から連絡がありましたよ」

「……どうだった?」


折原さんもすぐに顔をこちらに向ける。

優葉ちゃんは……


「それが延期だそうです」

「延期?」

「はい。発表をあと1週間ずらして欲しいと」


『発表の延期』

私たちはそれを聞き、とりあえず優葉ちゃんと一緒に、事務所へ戻ることにした。

電話を受けたのは社長で、今聞いたことと同じ話をされる。


「延期とはどういうことでしょうか」

「あぁ、俺もそういうふうに聞いてみたんだ。
そうしたら、発表を1週間ずらしますので、もう少し待ってくれと」


企画自体がなくなるわけではないのだとわかり、少しだけほっとしたが、

発表をずらすことにするなど、あまり聞いたことがない。


「どこかと争っているということですか? それとも全部を待たせているのでしょうか」

「それは教えてくれなかったな」


もやもやした気持ちを、いい意味でも悪い意味でも、この日で清算できると思っていた。

『延期』という決定に、正直、不満も残るけれど、

それでも、私たちにはどうすることも出来ないため、あと1週間、

合否発表を待つことになった。





「『エビスパ』3つ、お願いします」

「はい」


優葉ちゃんの注文に、カウンターの中にいた聖子さんが答えてくれた。

私と道場さんは席に座り、優葉ちゃんはお冷を3つ、入れてくれる。


「延期ですか」

「そうなの、驚いちゃった。今までここで仕事をしていて、初めてかもしれない。
延期って連絡は」


道場さんは、以前、『林田家具』にいた頃、一度だけ『延期』という連絡が入り、

その裏で、色々な揉め事があった話を聞いたことがあると、教えてくれる。


「揉め事?」

「はい。あくまでもその時の話ですけれど。現場としては決めているのに、
上からのOKが出なくて、で、社内会議が長引いて、延期……と」

「社内会議」

「現場がいくらこれだと決めても、結局はお偉いさんがOK出さないとダメですからね」


確かに、組織というものはそういうものだろう。


「だとすると、今回もそうかしら」

「同じだとは言えませんけれど、予想外のことが起きているということだけは……」


予想外のこと。

それがどういうことなのか、わからないが……



予想からすれば、時間がなかった私たちは、不利であることには間違いない。

この『延期』は、私たちに、運を向けてくれることがあるだろうか。


「また、『コンスタン』が裏で動いているんじゃないですか」


優葉ちゃんは、お冷を入れてくれたコップを、私たちの前においてくれた。

道場さんと私は、それぞれに手を伸ばす。


「現場の人たちは、折原さんと知花ちゃんコンビの作品を褒めて決定したのに、
それではプライドが許さないと思った『コンスタン』は、また、
ありとあらゆる手で、邪魔をしている……」

「邪魔……」

「そうですよ。小菅さんの時のように……」


推理の大好きな優葉ちゃんの、思いつきだとはわかっている。

でも、何を言っているのと、言い返せないのは、それもあるかもしれないと、

正直思えてしまうから。


しっかりと準備をしてきた企業が権利を取ったのなら、

こうして延ばす必要などあるだろうか。


「とにかく待つしかないのよね」


そう、私たちは待つしかない。

私はお冷に口をつけながら、気持ちを落ち着かせた。




【48-6】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
木の年輪は、気温に左右されることが多く、日本より寒い地域だと、
成長が少しずつになるため、『年輪』が細かく入ります。
逆に暖かいと、成長が均一なので、『年輪』がわかりにくくなります。

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