50 思いのままに 【50-4】

【50-4】

その日の食卓は、長峰家が全員揃うことになった。

私は、母から聞いた話を父にした後、

この春から折原さんと一緒に暮らすことも語ることにする。

父は、黙って聞き続け、お猪口に入れた日本酒を飲み干していく。

大賛成と言ってもらえないことくらいわかっている。

それでも、私は間違ったことをしているとは思えないから。


堂々と……


「……ありだと思うよ」

「知己」

「俺が、もし、姉ちゃんみたいなさ、男も女も関係ない仕事を持つ人を彼女にしたら、
出来る限り家事も手伝うけどね」


知己……

まさか、そんなセリフを言い出すとは。


「何が手伝いよ、あんた家事なんて何一つ出来ないじゃない」

「出来るよ。洗濯機に放り込めば洗濯も出来るし、掃除機に電源入れたら、
ゴミくらい吸うだろ」


あまりにも当たり前のことを堂々と言う姿がおかしくて、

私も母もつい、笑ってしまう。

それでも、父からは何も言葉が続かなくて……

そのうち、流れてきたニュースのことが話題になり、その日の夕食は、

終わってしまった。





『同棲』

今までは、自分の意見を言った後、少しでも周りが嫌な顔をすると、

それならいいですと、引っ込めてしまうことが多かった。

それでもと押し出す勇気など、一度も持ったことがなかったし、

自分の方が正しいと、言い切るパワーもなかった。

お風呂から出て、髪の毛を軽く乾かす。

リビングに戻ると、ソファーで転寝をしている父がいた。


「お父さん、ここで寝ていたら風邪ひくから」

「ん……あぁ……うん」


私は、父と母の寝室へ向かい、押入れから毛布を出すと、

横になっている父の体にそっとかけた。

お酒を飲んでいるから、今無理に起こしてお風呂へ入れというのも、難しいだろう。


「……知花」

「何?」

「お前は、折原君の抱えている事情の難しさも理解して、それでもいいと思っているのか」


折原さんの抱えている事情。

そう、『折原製薬』という、大きな企業と、跡継ぎという立場を放り出し、

家族とも縁を切っている今の状態。


「……思っているよ。私にとって必要なのは、
同じ目標を持っている折原さんだけだから」


どんなに状況が大変でも、彼がその波に飲み込まれることはないだろうと、

私は信じている。


「……そうか」

「うん」


長い間、一人で生きることが当たり前だった人に、誰かがそばにいる安らぎを、

持って欲しいから。


「お父さんが行ったら、堂々と泊めるように、そう彼に言っておけ」

「……うん」

「知花が選んだ男は、父親を正面から受け入れる男だと、信じているからな」

「……うん」


父はそういうと、毛布を自分の肩の方へ上げ、体を横に向けてしまった。

私は最後には布団で寝なさいよと、もう一度念を押す。


「お母さんのような言い方をするな、全く……」

「仕方がないでしょ、娘なんだから」


父が向こうへ行けと手で私のことを払うので、リビングの明かりを少し落とし、

そのまま部屋を出た。



『知花が選んだ男は、父親を正面から受け入れる男だと、信じているからな』



思えば、父には何かを反対されたことが一度もない。

デザインの仕事に着きたいと、進路を決めたときも、一人暮らしをして、

東京に就職したいと言ったときも、幹人と結婚をすると言ったときも、



そして……それが壊れてしまったときも。



母は、心配してあれこれ細かいことを聞いてきたけれど、

父はただ答えがそこにあれば、それを認めてくれるような人で。

新しい年を迎える前に、両親の温かさを再確認しながら、

今頃、この月を見ているだろう、『ひとり』の人が気になった。




【50-5】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
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