51 新たな春に 【51-1】

51 新たな春に

【51-1】
小菅さんが新しい命の訪れを喜び、事務所を去ったのが12月。

折原さんと、新しい生活を始めると、親に宣言したのが1月。

そして、仕事と真剣に向かい合ううちに、時はめまぐるしく過ぎていき、

あの『ナビナス女子大』の女子寮も、内装まですっかり完成し、

新しい学生たちを迎え、賑やかな声が聞こえるようになったという。


「ほら、これですよこれ」

「どれ? あ……本当だ」


受験が終われば、次の世代にどんどんとアピールするための資料が配られる。

『ナビナス女子大』は、折原さんや伊吹さんの作った家具で勉強し、

くつろぐ学生の姿を写真に取り、それをパンフレットの一番いい場所に載せるのだと、

見本誌を『DOデザイン』に贈って来てくれた。


「貴重な4年間を、意味のある場所で……ねぇ」


私と優葉ちゃんと道場さんは、3人でいつものように『COLOR』へ向かう。

今日は聖子さんから、新メニューのお試し担当を、任命されていたため、

3人とも気合が入る。


「さて、みなさま、どうよ。正直に言ってね」


出してもらったのは、しめじやえのき、さらにまいたけなどが入ったパスタ。


「きのことチキンのパスタですか、これ」

「そうなの。うちはこういう作りだし、今まで和風を出していなかったけれど、
今回チャレンジしてみたのよ。メニューもね、新しいものを入れていかないと、
飽きられてしまうでしょ」

「ほぉ……では、いただきます」


優葉ちゃんは小皿にとりわけ、フォークをクルクルと回した。

私と道場さんも同じようにお皿に取り、新しい味を口に入れる。

シソの香りだろうか、きれいにちらした細めの海苔も、なかなか美味しい。


「聖子さん、美味しい、いいんじゃないですか、これ」

「うん……」


道場さんは、左手で丸を作り、美味しいと何度も頷いた。

私も同じように頷いてみせる。


「知花ちゃん……本当に美味しいと思っている?」

「思っていますよ、やだ、どうしてですか。ウソなんてつきません」

「だって……。30分くらい前に、三村君が来たの」

「聖子さん、三村君ではなくて、折原君ですってば」

「あぁ、そうだったっけ」


聖子さん、『三村君』と呼ぶクセは、まだ治らないみたいだった。

まぁ、本人もどちらでもいいと言っているのだから、どちらでもいいけれど。


「それがさ、どうって聞いたら。美味しいけれど、
長峰さんが作ったほうが、もっと美味しいって」

「……は?」


聖子さんの、少し意味を含んでいますと宣言するような目と、

優葉ちゃんと道場さんの、そうなのですか……と驚くような目。



どちらもこちらを向いていて……



しばらくすると、全員、何か言いたげに、口元がムズムズ動き出す。


「長峰さんの方が……かぁ」

「そう。三村君、サラッと言うのよ。
そうよね、知花ちゃんは料理が上手だものねって言ったら、はい……だって」

「ほぉ……」

「へぇ……」


事務所のみなさんには、すでに交際の事実を知られているとはいえ、

どうしようもないくらい恥ずかしい。


「あぁ、もう、何真面目に捉えているんですか。
ふざけて言っているに決まっているじゃないですか。
聖子さん、折原さんの性格、わかっているでしょ」


誤魔化さないと。

顔が赤くなって、耳まで赤くなって、ボーッとしそうになる。


「ふざけて? いやいや、あれは本気よ。幸せそうな顔をされたもの」


幸せ……


「いいじゃないですか長峰さん。今時、珍しいですよ。
料理をしっかり褒めてくれるなんて。ほら、日本の男って、
女を褒めたりするのはおかしいとか、妙なところがあるでしょう。
折原さん、外国にいたからかなぁ……そういうところありますよね」

「そうそう、うらやましいですよ、長峰さん」


試食会に招待されたはずだったのに、私一人が、ただ焦らされた気がして、

その後に食べた『ミックスサンド』も、なかなか喉を通らなかった。





「なぜ、怒ります?」

「怒っているわけではないですけど、あまりそういうことは言わなくていいです」


その日の夜、近付く引越しの打ち合わせも兼ねて、

私の部屋で食事をすることになった。

折原さんは、本当に思ったことを言っただけですと、全く気にしてくれない。


「聖子さんが色々聞くんですよ」

「聞く? 何をですか」

「知花ちゃんはどんな料理が得意なの? とか、俺がどんなものが好きか……とか」


聖子さんは、元々聞き上手。

さぞかし、折原さんを気分よくさせながら、語らせたことだろう。


「今まで、食事にこだわりがあまりなくて、
腹が満たされたらそれでいいと思っていたから、
俺としては、味を考えること自体、驚きなんですけどね」


タルタルソースを作る手が止める。

そう、折原さんは長い間一人で暮らしてきた。

いや、幼い頃から、ご両親は仕事や付き合いで忙しく、

弁護士の番場さんが、よく相手をしたと話してくれたっけ。

テーブル前に座っている折原さんを見た後、私はまた、作業の手を動かし始める。


「別に、料理を褒めてくれたことを、怒っているわけではないです。
ただ、恥ずかしかったから」


そう、料理を褒めてもらえて、嬉しくないはずがない。

それはもちろんわかっている。


「恥ずかしい……か」

「恥ずかしいですよ。みんな知っている人だから」

「うーん……」


折原さん、本当にまずいことをしたとは思っていないのだろう。

納得出来ていない表情が、子供のようでおかしくなる。


「とにかく」

「……わかりました。外では言いません。知花だけに言います」

「はい」


私は、折原さんにテーブルの上を拭いて欲しいとお願いし、

出来上がったおかずを、順番に運ぶことにした。




【51-2】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
おつきあいしている二人が、結婚前に『同棲』する確率は、なんと70%
それも、『半年以上』の答えを出したのは60%
『ゼクシィ調べ』

コメント、拍手、ランクポチなど、お待ちしています。(@゚ー゚@)ノヨロシクネ♪


Pagination

Trackback

Trackback URL

http://momonta1108.blog75.fc2.com/tb.php/2826-5e4a9caa

Comment

Post Your Comment

コメント登録フォーム
公開設定

Utility

プロフィール

momonta

Author:momonta
ただいま、怪獣2匹を飼育中の、お気楽主婦です。
日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
飲み物片手に、立ち寄ってくださいね。

なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。
著作権は放棄していません。お願いします。

ただいま、連載中!

あなたの色と私の色。6人の恋模様が生み出す『COLOR』は……
ただいま発芽室では『Colors』を連載中! こちらからどうぞ

カレンダー

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

お供、提供中!

この人は誰だろう……悩んだ時には、迷わずGO!
発芽培養所では『Colors 50音人物紹介』を掲載中! こちらからどうぞ

FC2ブログランキング

小説・文学部門に参加しています。

FC2Blog Ranking

毎日1回、ポチッとしてもらえたら嬉しいです。見えないライバル達と、格闘中!

いらっしゃいませ!

QRコード

QRコード

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
小説・文学
417位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
ロマンス
5位
アクセスランキングを見る>>