51 新たな春に 【51-6】

【51-6】

ジュエリーボックスを認めてくれた方の推薦なのだから、

受けなければ失礼なのは十分承知だけれど。


「どうだ、やってくれるか」


有名人の娘さんに作る、注文家具。芸能界に力を持つ二人なだけに、

正直、この場で頷く自信がない。

私には……


「長峰……」

「あ、はい」


『NORITA』に入れた『ジュエリーボックス』のように、年齢層を広く設定し、

誰にでも受け入れてもらえるようなものを作るほうが、楽なのだけれど。


「自信……ないか」


そう申し訳なさそうに言われてしまうと……


「すみません、それだけの家具となると、正直、どこまで出来るか」


要求も色々とあるだろうし、しかも一人娘の家具だとなると、

さらにエスカレートするのではないだろうか。


「まぁ、注文は色々とあるだろうけれど、そんなことは誰でも一緒だ。
もしかしたらお前より道場の方がいいかもしれないし、
伊吹が仕事をしたほうがいいかもしれない。でも、相手は長峰を指名してくれている。
納期の期日も、それほどきついものではないし、じっくり取り組みながら、
詰まったときには、みんなにアドバイスをもらえばと、俺は思うけどね」



みんな……



「お前一人で全てをやれと言うわけではないから。どうだ、思い切って……」



思い切って……



そう、『思い切ること』。

私に今までなかったこと。でも、少しずつ出来るようになってきたのだから。

またここで引っ込んではダメ。


「……わかりました、頑張ってみます」

「よし!」


社長、伊吹さん、道場さん……



そして、折原さん。



私には、刺激しあえる仲間が、たくさんいるのだから。





「なんだか、うちの事務所、派手になってきてますよね」

「派手? あら、どういうことよ」

「だって、今まで、有名人の名前なんて出たことがなかったのに、
ここのところ急にこう……華やかな名前が出始めているじゃないですか」


その日のランチ。いつものメンバーは『COLOR』へ集合する。

優葉ちゃんは、『羽田太一』は今、仕事の出来る上司役でなかなか人気があると、

知らない情報を教えてくれた。


「うちの姉、いまだに『羽田太一』のファンなんですよね。
もう結婚しているタレントを応援する? っていつも言うんですけど」

「道場さんのお姉さんが?」

「そうなんですよ。昔付き合っていた人に似ているとかなんとか……
そんなことばっかり言って、お酒ばかり飲んでいるから結婚できないって、
いつも母に怒られてますけど」


昔、お付き合いしていた人……

そんな思い出だけで、長い間、ファンでいられるのだろうか。


「思い出に浸っていたら、確かに結婚は難しいですね」

「でしょ……」


聖子さんが、注文した料理を、ひとつずつ前においてくれる。

私が頼んだのは『シーフードドリア』。

ナフキンにつつまれているスプーンを、取り出す。


「工藤美貴といえば、娘さんを産むときに大変だったって、
前に何かの雑誌で読んだことがあったわよ」

「大変?」

「そう、何度も入院して、何度も流産しかけたんだって。
確か、その経験を本にしていた記憶があるけれど……」


聖子さんの情報。

優葉ちゃんは、芸能人は何でも本にすると、呆れたように笑う。


「でも、だとすると、大事な大事な娘なのだから、
材料も予算も、使いたい放題じゃないですか!」

「あ、いいですね、予算取り放題」


道場さんは有名人の娘だから、わがままな子ではないかと、

また別の視点を心配してくれる。


「わがままですか」

「そうですよ。親が甘やかして育てているから、
きっと、あれこれうるさいですよ、長峰さん」


いまだに主役を張る父親と、

アイドルから脱皮して、近頃は舞台などにも進出している母を持つ娘。


「そういえば、そうよね。だいたい、
悪いことをして捕まるニュースとかに出てくるもの。
ほら、芸能人だれだれの娘、息子って」

「聖子さん。それは普通に生きていたら、ニュースにならないからですよ。
芸能人の子供が全て、問題を起こしているわけではないですから」


道場さんと優葉ちゃん、そしてやじうま聖子さん。

3人の励ましとも言えないようなコメントに、とりあえずの愛想笑いで返し、

なんとか昼食を取り終えた。




【52-1】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
おつきあいしている二人が、結婚前に『同棲』する確率は、なんと70%
それも、『半年以上』の答えを出したのは60%
『ゼクシィ調べ』

コメント、拍手、ランクポチなど、お待ちしています。(@゚ー゚@)ノヨロシクネ♪


コメント

非公開コメント