53 過去と未来 【53-5】

【53-5】
「何だ、今度は羽田太一の事務所で打ち合わせ?」

「はい」


私は受話器を置いた後、状況を伊吹さんに話した。

羽田太一としては、汚れの目立つ『白統一』などとんでもない話で、

もうしっかり作ったアイデアもあるのだという。


「大丈夫なんですかね、その夫婦」


隣に座っている折原さんにも話が伝わったのだろう。

また別の意見も却下されるのではないかと、心配する。


「そうだな、確かに」

「長峰さん、ビシッと言えますか? 
本来なら、向こうの都合でデザインを水に流すのは、
別料金を取ってもいいくらいのことなんですよ」


部屋の中では名前を呼ぶが、事務所では以前と同じように、名字。

これだけは、守ろうと決めている。


「そうですけれど」


確かに、拘束時間が長くなれば、他の仕事に影響が出る。

確認してサインまでした書類が、無効になるとなると、

別料金を請求されても文句は言えないところなのだが。


「まぁ、折原の言う通りだけど、今回だけは従って来い。
あの夫婦を長峰に紹介した『小林蘭子』さんの立場もあるし。
芸能人の情報網で、あの会社はって妙な噂を流されてもなぁ」

「はい……」


これで最後にして欲しいという条件をつけ、私はご夫婦二人が同席してくれるよう、

あらためて羽田さんの方へ連絡を入れた。





そして、羽田太一と打ち合わせの当日がやってきた。

場所は、ご夫婦が贔屓にしているレストランの個室。

店員に名前を言えば通してもらえるらしく、私は名刺を出した。


「はい、お聞きしております。どうぞ奥へ」

「ありがとうございます」


今まで、有名人をお客様とした仕事をしたことがないため、

何もかもが初めての経験。私は店員の後ろを歩き、開かれた扉の中に入る。


「あぁ……どうも」


待っていてくれたのは、羽田太一と……


「どうぞ、こちらにお座りください」

「はい」


この人は、電話をくれたマネージャーだろうか。

工藤美貴さんはどこにいるのだろう。仕事で遅れてくるのだろうか。


「あの……」

「失礼します」


マネージャーさんは、私の言葉など聞くことなく、外へ出てしまった。

まぁ、タレントを置いて帰ることはないだろうけれど。


「あの、工藤美貴さんは」

「あぁ……仕事が抜けられなくてね、今日は僕が」


仕事……


「あの」

「何か」

「お嬢さんの家具ですから、色々とご希望があるのはもっともだと思いますが、
お気持ちがそのたびに動いてしまうと、なかなか前に進めません。
ご夫婦でまとめていただけましたでしょうか」


オフなのだろうか。ラフな格好をしているのかもしれないけれど、

大きくボタンを外し、胸には金のネックレスが光っている。

なんだろう、目のやり場に困るくらい。

羽田太一って、こういう人だったかな。


「美貴の考えは、いつも現実から離れているものですから。ご迷惑をかけました。
娘の家具は、長く使える素材のいいものを使っていただきたい」

「素材……」

「はい。年齢を重ねたら、お姫様のようなものは飽きてしまうでしょう。
あいつが『白』にこだわっているのは、ご贔屓の占い師のせいですよ」


占い師。

芸能人やスポーツ選手は、確かに、そういう人を頼りにしていると聞いたことがある。

『運』というものを、とても大事にするからかもしれないけれど。


「バカバカしいですよね、全く」


羽田太一は、目の前で脚を組みなおした。

つま先の尖った靴。おしゃれなのだろうが、あまり好きなタイプではない。

紘生なら、間違っても履かない靴。


「この写真を見せられましたか?」


羽田太一が出してきたのは、マンションの写真だった。

確かに、先日、工藤美貴から見せられた写真は、このマンション。


「はい」

「あ……そうですか」


羽田太一は、何度か頷くとまた別の写真を出してくれた。

初めて見る写真。


「我が家の写真はこちらです」


我が家の写真。となるとこの間見たものはどこの写真なのだろう。


「この間、あなたが見せられたのは、美貴が親のために購入したマンションの写真です」


親のマンション。


「知らないこととはいえ、あいつの計画に、手を貸さないほうがいいですよ」


羽田太一は、工藤美貴が自分と離婚しようとしているので、

実家のマンションに合う家具を作るよう、お願いしたと話しだす。


「あいつの思うようにはさせません。娘は、僕の娘ですから」


恋愛ドラマで競演し、美男美女カップルと評された二人なのに、

どうも家庭の状況は、うまくいっていないようだった。




【53-6】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

【高橋都】
『青峰大学』の講師を務める女性。
紘生が学生時代、お付き合いをしていた人で、女優の『工藤美貴』に似ている。
家族に対する悩みを持ち、複雑な日々を送ってきた。

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