56 反乱の後始末 【56-2】

【56-2】

「すみません、休日なのに」

「何を言っているのよ。私はとっても嬉しいのに」


私が電話をしたのは、小菅さんだった。

この気持ちを語れるのは、やっぱり小菅さんしかいないような気がして、

休日だということもわかっているし、

さくらちゃんのお世話で大変なのもわかっているのに、顔を見せてもいいかと、

頼んでしまった。


「さくら……こちらが知花ちゃんですよ」

「はじめまして」


さくらちゃんは、よく母乳も飲み、順調に成長しているらしく、

ほっぺたがふっくらとしたかわいらしい女の子だった。

私は左手に気をつけながら、抱っこさせてもらう。


「うわぁ……あったかいです」

「あはは……そうね。赤ちゃんって体温高いから」


長い間抱いているのは怖いので、さくらちゃんはベビーベッドに寝かせてもらった。

満腹だからなのか、機嫌がいいからなのか、すぐにすやすやと眠り始める。


「すごいですね、もう寝てしまった」

「赤ちゃんは泣くのと寝るのが仕事だからね。でも、さくらは確かによく寝るのよ。
この間、検診でもそう言われた」

「へぇ……」


口元は、小菅さんによく似ている。


「……で、どうしたの? その左手もおかしいし、何、ケンカでもした?」


小菅さんはそういうと、なんでも聞くわよと前に座ってくれた。

紘生とギクシャクしている話をしたわけではなかったけれど、

こうしてここに来ていることで、すっかり見抜かれている気がした。


「実は、少しギクシャクしていて」

「ギクシャク? あら……」

「私が大人になりきれていないのかもしれません。でも……」


小菅さんは大島さんを知っているので、

愛梨ちゃんの縁で仕事をすることになった女性が、

実は昔、紘生と付き合いのあった人だったことを話した。


「エ……そうなの?」

「はい。本当に偶然だったんです。始めは驚いて、紘生も何か役に立つのならって、
そう話してくれていたんですけど、この1週間くらいですね、急におかしくなって」

「おかしくなった?」

「何か色々考えていると言うか、注文家具のことではないことで、
どうも二人で会っているみたいなんです」


詳しいことは話してくれないのだから、何が本当なのかわからない。

でも、仕事で会うだけなのなら、これほど時間を取ることはないだろう。

しかも……



『親に恵まれている人にはわからない』



あの言葉……


「親に恵まれている人」

「はい。私はただ、どういうことが起こってるのか、それを知りたいだけで、
話をしてくれれば、たとえ終電でも、朝まで戻らなくても……」

「は? 外泊?」


小菅さんは思わず大きな声でそう言った。

さくらちゃんが今の声に反応し、体を動かし始める。


「あ……まずい、まずい。静かにしないと……」

「はい」

「でも何、折原君、外泊したの? その人と」

「確信はないんですけど、昨日、戻れないかもってメールをくれただけで、
結局、今朝は戻っていなくて……」


信じること……

頭に言い聞かせているけれど、考えてしまうことで、落ち着いていられなくなる。


「信じてくれって、そう言われているから、信じるべきなのでしょうけれど、
やっぱり、落ち着けなくて」

「それはそうよ。いやぁ……外泊はダメでしょう。どんな理由があろうと。
それはダメ」


小菅さんは、付き合いが続いていくと、どこかで互いに甘えが出てくるものだと、

そう分析してくれた。確かに、甘えといえばそうなのかもしれない。

幹人とおかしくなり始めたのも、その甘えがあったから……



大丈夫だろうという、互いの気持ち。



「そうですよね、外泊は……」

「そう、外泊はダメでしょう」


紘生は今、どう思っているだろう。


「でもまぁ、親かぁ……それは確かに色々あるよね」


小菅さんは、結婚すると、自分の親と相手の親の違いに、

しばらくは気持ちが慣れなくて大変だったと、そう話してくれた。


「うちの親は、お酒を飲むのが結構好きで、夕飯って言うと、
お酒のためにあるようなものだったの。だから、私、得意料理が、
どうもおつまみのようなものが多くてね。小菅の家に行ったとき、
お母さんが煮物だの、ちらし寿司だのというのを並べていたのを見て、
あぁ、夕食ってそういうものなんだって、考えたから」


同じ環境にいたわけではないので、それぞれ違う部分がたくさんある。

違いを認め合い、納得しあい、

それがいつの間にか混ざり合うのが『結婚』なのだろうか。




【56-3】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
二人の出会いとして、一番多いものはやはり『職場の同僚、先輩、後輩』。
合コンなども盛んになっているが、やはりまだまだ『身近な存在から』が多い。
『アニヴェルセル調べ』

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