58 家族の形 【58-2】

【58-2】
「いないいない……ばぁ!」


優葉ちゃんが顔の筋肉を全て使った声かけにも、さくらちゃんは動じず、

その顔をきょとんと眺めている。


「あれ? 小菅さんの娘さん、反応鈍いですね」

「失礼ね」


5月も後半になると、気候も落ち着き、温かい日が増えた。

今日は、小菅さんが初めて『DOデザイン』にさくらちゃんを連れて来たため、

いつもなら真ん中に大きく広げたデザイン用のデスクは閉じられ、そこに乳母車が入る。

みんながさくらちゃんを中心に輪を作り、思い思いに声をかけていく。


「へぇ……すごいわね」

「『ナビナス女子大』の寮が評判よかったみたいでね。
これも夏からのセッティングが決まっているから、今手直しの最中なんだ」

「あぁ……そうなんだ。ここらへんは伊吹さんで、化粧室は折原君でしょ」

「わかります?」

「わかるわよ。互いにしっかり個性出してるもの」


小菅さんは、伊吹さんと紘生の真ん中に立ち、

新しく動く仕事のデザイン画を手に取ると、あれこれ質問をぶつけている。


「小菅ならどうした? ここ」

「……あれ、伊吹さん。そんなこと聞いちゃいます?」

「あぁ、聞いてみる」

「……言わないですよ」


小菅さんは、二人が自信喪失してはいけないからと笑い、デザイン画を伊吹さんに戻した。

伊吹さんは、相変わらずだなと笑い、早く仕事に戻ってこいと、そう言い返す。


「仕事ね……」

「どうですか。家にいると、仕事がしたくなりませんか?」


道場さんの問いかけに、小菅さんは少し考えるふりをしたけれど、

首を軽く振った。


「最初はそう思っていた。さくらがおなかにいたときは、産んだら保育園を探して、
また働きたいなって。でも、今はあまり思わなくなったかな」

「……どうしてですか」

「うーん……どうしてだろう。出産の時は、メチャクチャ痛くて、もう嫌だと思ったのに、
今は、もう一人欲しいなと思うのよ」


小菅さんは、さくらちゃんがおもちゃを落としたことに気付き、それを拾うと、

目の前で軽く振ってあげた。さくらちゃんは、今日一番の笑顔を見せる。


「うわぁ……かわいい」

「ママだって、わかってるんですね」

「当たり前でしょう。私がこの体で産んで、育ててるのよ」


結婚しても仕事を持っていたときの小菅さんも、私の憧れだったが、

こうして仕事よりも育児が優先だと言い切るその姿も、また素敵に見えてくる。

『思うように、思うままに』

小菅さんは、それをしっかり実践している。


「そうそう、お土産のケーキ切るから」

「あ、いいですよ。私切ります」

「いいから、いいから」


小菅さんはそういうと、私の腕を引き、流しのところへ連れて行く。


「知花ちゃん」

「はい」

「仲直りできたみたいだね」

「あ……はい。そのせつはお世話になりました」

「いえいえ。電話で大丈夫だって言ってくれたけれど、顔見たくてさ」

「はい」


高橋さんの登場で、紘生とすれ違った日々。

私が不安な心を処理できなくて、助けを求めたのは小菅さんだった。

私にとっても、紘生にとっても、姉のような人。


「折原君には、帰りにもう一度念を押しておくから」

「念……ですか」

「そうよ。うちのさくらがかわいらしいうちに、結婚式してって」

「……エ?」

「あはは……」


小菅さんは箱からケーキを取り出すと、実は両端が一番美味しいのだと言いながら、

人数分のケーキを切り分けた。





小菅さんとさくらちゃんの訪問があり、午前中から事務所が慌しかったからか、

午後はみんなどこかのんびり過ごしていた。

伊吹さんと紘生は、最終的な打ち合わせに出かけたけれど、

女性陣はどこにいくわけでもなく、それぞれが課題に向き合っていく。


「あぁ……いいなぁ」

「何が?」

「結婚です。そろそろプロポーズくらいしてくれてもいいはずなんですけどね」


優葉ちゃんはそういうと、『フラワーショップ』に勤める彼のことを話しだした。

付き合いは変わりなく続いているものの、もう一歩前にという動きは見られないと、

軽くため息をつく。


「自分からしてしまえばいいじゃない、優葉ちゃん」

「あ……道場さん、人のことだと思って。一生に一度ですよ、記念ですよ。
男の人にしてもらいたいじゃないですか」


優葉ちゃんは、バラの花束でも持って、思い切りキザなセリフが聞きたいと、

そう言い出した。道場さんは、今時の男性はそんなことはしないと言い返す。


「憧れなんですよ、いいじゃないですか、もう、道場さん、現実的」

「そうかな」


道場さんは、一時は、結婚に憧れていたけれど、今は仕事が楽しくて、

少し自分が冷めているかもしれないと、そう言い始める。

優葉ちゃんは、冷めてしまったら女が枯れますよと、そう強気に言い返した。




【58-3】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
男性の料理教室なども盛んになっているが、
アンケートを取ると、実は、一番やりたくない家事
(お金を出してもいいから、人に頼みたい)は、『料理』という結果。

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