59 いつもの場所 【59-2】

【59-2】
「おぉ……」

「なかなかだろ」


秋に向けた新作と、来年の春に向けた仕事が少しずつ動き出し、

私は、社長にOKをもらった、丸を意識したダイニングテーブルの構図に取りかかった。

同じく新作担当となった道場さんのキャビネット、このデザインも全員に配られる。

さすがのライン使いと、正面のガラスに丁寧な細工を施したデザイン。

少しお給料の上がったOLさんあたりなら、頑張って買いたくなるはず。


「折原」

「はい」


男性2名、伊吹さんと紘生は、

いよいよ建設の始まる、カントリー風のレストランの設計図を見ながら、

最後の調整に入っている。


「ここ、残しましょうか」

「いや、どうかな……」


伊吹さんは、紘生の提案にストップをかけ、一度しまいかけた紙を広げた。


「あ……ほら、小暮さん。ここ間違っているけど」

「間違ってます? あれれ?」

「あれれじゃないの!」


今まで塩野さんのフォローが多かった優葉ちゃんも、いよいよ担当を任され始めた。

銀行の通帳と、大事な印鑑。


「はい……」


『責任』という言葉が加わると、

どことなく、顔つきも真剣に見えてくるから不思議。





「ひどいなぁ、知花ちゃん」

「ひどくないでしょ。真剣でなんだか新鮮だったって言っただけだけど」

「真剣なことが新鮮ってところが、ひどいんです」

「……そう?」

「そうですよ、いつもが違うみたいでしょう」

「違うじゃない」

「あ、もう!」


その日のランチ。いつものメンバーで『COLOR』に向かう。

お決まりの『エビスパ』を注文すると、聖子さんが楽しそうにハミングしながら、

こちらに運んで来てくれた。


「楽しそうですね、聖子さん」

「楽しいわよ。当たり前でしょう」


聖子さんは笑っている自分の頬に軽く指を当てる。


「何かいいことあったのですか」


聖子さんは、就職して北海道へ転勤となっていた息子さんが、

秋に戻ってくることが決まったと、そう話してくれた。


「北海道に行っていたのですか」

「そうよ。デパートに就職したら、すぐに催事担当になって、
で、2年くらい北海道にいたの」

「催事? あぁ、フェアとかですね」

「そうそう。北海道は美味しいものが多いでしょ。デパートの人気企画なのよ。
『北海道物産展』って。でも、おきまりのものしか出さないのでは飽きられるから、
地元の人しか知らないような企業とかお店を発掘していかないとならなくて」

「そうですよね。私も好きですよ。物産展」

「あぁ、私も行く、行く」


道場さんと優葉ちゃんは、気に入った商品を取り寄せたこともあると、

話を続けていく。


「もうじき2歳になる孫とね、これからは頻繁に会えるかなと思って」

「お孫さん、いるんですか」

「……うん」


聖子さんは、息子さんの結婚相手が、再婚の年上という女性だったことで、

ご主人ととにかく反対し、あまり付き合いをしてこなかったのだと、話してくれた。


「反対……ですか」

「そう、息子は初婚だし、年齢が5つも違うし、やっぱり親としてはさ、
もう少し条件のいい人いないのって、ついね」


『条件』。親には親なりの子供へ抱く期待がある。

紘生のご両親も、仕事、結婚、それなりに絵を描いていた。


「それでも息子は結婚するの一点張りで、で、そこに転勤の話しでしょ。
式なんていらないからって、籍だけさっさと入れて、二人で行ってしまったの」


反対をしたままだったため、会いに行くことも、こちらに来ることもないまま、

北海道で男の子が生まれたのだという。


「それがね、その話を聞いた途端、今まで反対していたことがどうでもよくなるくらい、
孫に会いたくなってしまって。それでもさ、反対していたでしょ、
こっちから折れるのもと思っていたら、お嫁さんから電話が来たのよ」

「電話……ですか」

「ぜひ、会いに来てくださいって。もう嬉しくて、主人と飛んでいってしまったの」


聖子さんは、それからは電話をしたり、メールを送ったりと、

急に息子さん夫婦と距離が近くなったのだと、話してくれた。

優葉ちゃんは、お孫さんが架け橋になってくれたのですねと、声をかける。


「そう……本当にそうね。大人だけだと意地を張るばかりだけれど。
うん、孫のおかげで、大きな壁も取り払った感じだから」


聖子さんは、くまのぬいぐるみが大好きな孫のために、

今日、お店を閉めたら、買いに行くつもりなのだとこの後の予定まで教えてくれた。

次のお客様から声がかかり、聖子さんはそちらに移動する。


「嬉しそう、聖子さん」

「うん……」

「お孫さんか……小菅さんも、ご両親がとても喜んでいるって、言ってましたよね」

「そうだったね」


聖子さんと息子さんには、生まれた孫の存在がきっかけになったのだろう。

紘生とお父さんにも……



あのデスクがきっかけとなるだろうか。



本当は互いに、近付きたいけれど、

そのきっかけがどこにあるのかわからないだけで……



きっと……




【59-3】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
タンスや棚のような『箱物家具』、椅子やテーブルのように
脚がついている『脚物家具』、さらにラックなどの『小物家具』があり、
家具はおおよそこの3つに大別出来ます。

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