59 いつもの場所 【59-5】

【59-5】
東京に出てきた伯母を連れ、

その次の日は『世界一』の電波塔になった『スカイツリー』へ登ることにした。

天気予報は曇りだったのに、伯母の豪快な笑い声が届いたのか、

展望台に登る頃には快晴になり、思う存分景色を楽しむことが出来た。

お土産ものを選び、美味しいものを食べ、母も伯母もよく笑い、よく歩く。


「あら、いつの間にかこれだけ買い込んでしまった」

「伯母さん、これ送ればいいよ。持って帰るのは大変だし」

「そうだねぇ……」


それからも3人で『東京』を満喫し、伯母を空港まで送り届けた頃には、

陽も傾きだした。


「ありがとうね、知花」

「ううん、私もとっても楽しかった。普段東京にいても、なかなか行かないのよ。
仕事で通り過ぎることは何度もあるのに」

「そうよね、そういうものかも」


母は、持っていた紙袋の中身を確認すると、私に差し出した。


「何?」

「何って、今日のおかずにどうぞと思って。さっきうちの分と、知花たちの分と、
両方買っておいたのよ」

「……お母さん」

「今から帰って作っていたら、時間かかるし。折原さん待たせちゃうでしょ。
ここのとんかつ美味しいから。ね、温めなおして食べなさい」


伯母と二人で買い物三昧をしていると思っていた母から、受け取った紙袋。


「伯母さんがね、知花がとっても幸せそうな顔をしているって、ほっとしたって」

「……私が?」

「うん。たまに会う人には、色々とわかるものなのよ」


母はそういうと、駅に向かって歩き出す。

私はすぐにそれを追いかけ、伯母に会いにきてよかったと、そう言った。





「うまい」

「うん、美味しい」


母が持たせてくれたおかずは、それぞれがとても美味しくて、

温かいご飯とお味噌汁を作るだけで、豪華な食卓に変えてくれた。

紘生が本当に美味しそうに食べているので、私の分も少しおすそ分けする。


「いいよ、知花の分だし」

「いらないならいいけど」

「……いるけど」

「ならどうぞ」


たった一日顔を見なかっただけなのに、なんだかとても新鮮な気がした。

カレンダーの丸を意識し始めてから、

少し自分の表情が固かったこともわかっていたけれど、

それをどう振り切ればいいのか、思い切りが持てなくて。


「ねぇ、丸いダイニングテーブル、
『NORITA』の部長、色をもっとカラフルに出来ないかって」

「カラフル? いや……あれは知花が出していた木目で十分でしょう」

「と思うのよね。どう説得すればいい?」

「うーん……」


紘生といると、いつも思いついたことを、そのままに話すことが出来た。

遠慮なしに言える分、ぶつかってしまうこともあるけれど、

それでも、その後はスッキリしていて、あとに残らない。


「シミュレーション出してみたら? 頭の中に浮かぶものでも、
実際に形にして同じイメージが出るとは限らないからさ」

「あぁ、そうか……そうよね」


シミュレーションをしてみて、直接訴えれば……


「知花……」

「何?」

「きちんと組み立てていけよ。中途半端にすると、逆にイメージが膨らんで、
さらに乗り気になるかもしれないからさ」

「……さらに?」

「そう、さらに」


紘生は意地悪い笑みを浮かべ、出来るのかなと言いながら首を傾げた。

その態度が悔しくて、私はきちんとやりますと席を立つ。


「色を表現して、リビングという場所の特別さを説明すれば、
いくら部長だって……」

「あの人さ、昔、『SUAVE』が好きで、結構乗り気だっただろ」



『SUAVE』

スペインの家具メーカー。紘生が向こうにいた頃、知り合った人たちが興した会社で、

今や、日本でも取り扱う店が増えている。


「……そうか」


『NORITA』の部長さん。元々、派手な組み合わせの好きな人だった。

そう思うと、なんだか自信がなくなってくる。


「そうよね、『SUAVE』のことを思うと」


押さえ込むつもりが、押さえ込まれることになりかねない。

私に出来るだろうか。

お皿を洗う手を休め、紘生の顔を見ると、こちらを向いて笑っている。


「どうして笑っているのよ」

「そんなに不安にならなくてもいけるって。デザインをするのは知花なんだ。
こんな派手なことをするのなら、私は作れませんくらい、言ってもいいって」

「……そうかな。でも」


それならいいと言われてしまったら……


「知花は自分が思っている以上に、立派な仕事をしているよ。
だから大丈夫、自信を持って押して来ればいいって」

「……うん」


褒められたり、不安にさせられたり、

なんだか紘生に遊ばれている気がするけれど……


「そう思うのなら、不安になるようなことを言わないでくれたらいいのに」

「ん? いやいや」


紘生は食べ終えた食器を重ね、流しへ運んでくれた。

お皿を洗う私の横に立ち、布巾を取る。


「なんだろうな、知花が不安になって、
どうしたらいいって頼ってくれるのが、嬉しいんだよね、俺」

「嬉しい?」

「そう、知花に必要とされていることがわかって、嬉しいんだと思う」



必要とされていること



「そんなこと、当たり前でしょう」

「そうかな……」


『DOデザイン』に入社した紘生と出会ってから、そう、ずっと、

彼を必要として生きてきた。こうして一緒に生活をすることになる前からずっと……


「あ……お皿は裏も拭いてね。濡れているとよくないから」

「うん」


私も彼にとって、必要な人でありたいと願いながら、

二人で洗った食器を、片付けた。




【59-6】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
タンスや棚のような『箱物家具』、椅子やテーブルのように
脚がついている『脚物家具』、さらにラックなどの『小物家具』があり、
家具はおおよそこの3つに大別出来ます。

コメント、拍手、ランクポチなど、お待ちしています。(@゚ー゚@)ノヨロシクネ♪


Pagination

Trackback

Trackback URL

http://momonta1108.blog75.fc2.com/tb.php/2881-2bfea525

Comment

Post Your Comment

コメント登録フォーム
公開設定

Utility

プロフィール

momonta

Author:momonta
ただいま、怪獣2匹を飼育中の、お気楽主婦です。
日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
飲み物片手に、立ち寄ってくださいね。

なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。
著作権は放棄していません。お願いします。

ただいま、連載中!

あなたの色と私の色。6人の恋模様が生み出す『COLOR』は……
ただいま発芽室では『Colors』を連載中! こちらからどうぞ

カレンダー

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

お供、提供中!

この人は誰だろう……悩んだ時には、迷わずGO!
発芽培養所では『Colors 50音人物紹介』を掲載中! こちらからどうぞ

FC2ブログランキング

小説・文学部門に参加しています。

FC2Blog Ranking

毎日1回、ポチッとしてもらえたら嬉しいです。見えないライバル達と、格闘中!

いらっしゃいませ!

QRコード

QRコード

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
小説・文学
314位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
ロマンス
5位
アクセスランキングを見る>>