61 発表の余韻 【61-2】

【61-2】
私は、そうなのだと頷いてみせる。


「それは、二人のことを許してくれたということ?」

「許すとか、認めるという言葉は、言われなかった。
でも、つき返されたわけではないし、仕事ももらって、しかも……」



そう……



「材料費と、制作費だって出してくれた金額が、それに見合うものではなくてね。
困りますって断ったのだけれど、そのまま」

「……どういうこと?」

「親しくされている方には、お祝い金として出されたのだから受け取りなさいって、
そう言われて」

「お祝い?」

「折原君と知花の祝いということだろう」

「……わかってますよ、そんなこと」


母は、父の膝を軽く叩き、それならよかったと自分を納得させているように見えた。

父は、わかっているのなら驚くなと、母の手を払っていく。


「大企業の偉い人だし、親戚がみなさん会社に入っているでしょ。
お父さんも、正式に認めるとは言えないんだろうなと、
この間、姿を見て、お話を聞いて、そう思うようになった」


人には立場がある。

飛び出した息子に甘い顔をすれば、周りがどう見るのか、

紘生のお父さんはそれを、考えていたのだろう。


「本当は、やきもきしていたのかもしれないわね、お父さんも」

「やきもき?」

「そうよ。自分を全く出さずに、ただ、運命に従っている息子さんを見ながら、
これでいいのだろうかと、思い続けていたのかも」


母はそういうと、半分くらいになった私のコップに、麦茶を足してくれる。


「ライオンの親が、谷から子供を突き落とすってあれよ。
もしかしたら、やりたいことがあるのなら、飛び出してみろって、そう、
男親って、そういうところがあると思う」


本当は……


「そうかもしれないね。色々とあって、どうなるかとハラハラした時期もあったけれど、
本当に紘生を会社に戻そうと思うのなら、いくらでもやりかたがあったはずだもの。
あの机と椅子で、お父さんの方がほっとしたのかもしれない」


とことん話し合って、わかりあうのも親子だけれど、

背中を見続けて生きていくのも、また親子。


「知花」

「はい」

「折原のご両親にお会いできるよう、お前が努力しなさい」

「……はい」

「あら、でも……」


それは私もそう思っていた。お母さんにも一度お会いしたけれど、

あの時は反対しかされなかったから。

母は、女同士だからだろうか、そこまで私が歩み寄る必要があるのかと、

少し不満そうな顔をする。


「折原君はいいと言うだろうけれど、知花が折原の名字を名乗るのなら、
挨拶させて欲しいとお願いするのは当たり前だ。
もし、向こうが会う必要がないと言ったとしても、
音信不通のような状態にはなるんじゃないぞ」

「音信不通って……」

「はい」


父は、そこで認められなくても、季節の挨拶などで、

出来るだけ連絡を取り続けていくようにと、アドバイスしてくれた。

口数が少ない父だけれど、こうして言われることはいつも、

その通りだと思えることが多い。


「ねぇ、紘生と挨拶に来るから。いつならいい?」

「……いつならって、ねぇ、お父さん」

「いつでもいいぞ。好きなときに来なさい」

「本当?」

「あぁ……今度こそ、最後までしっかり責任を持った行動にしてくれよ」



今度こそ……



「大丈夫。今度は……」


これでも、私なりに成長した気がする。

任せていることに満足するのではなく、一緒に考えて、分かち合うこと、

それをこの何年かで身に着けたから。


「折原さん、何が好き?」

「好き嫌いはないから、何でも大丈夫。あ……でも、やっぱりお肉かな」

「はいはい」


父と母の笑顔に触れながら、私は報告を済ませることが出来た。





その日、食事を終えリビングに残り、コップに氷を入れた。

和歌山の伯母がくれた梅酒を1杯だけ入れて、軽くかき混ぜる。

ふと前を見ると、今までそこにはなかった写真たてが置いてあって、

よくみると、父と母が九州旅行で笑っている写真が入っていた。


「やだ、こんなもの置いてある」


仕事をして、子供を育て上げて、自分たちの時間をもう一度、

いや、本当に自分たちの時間を持てたのは、初めてといえるくらいなのかもしれない。


「姉ちゃん」

「……何?」


仕事で遅くなり、今、風呂上りになった知己が、

珍しく階段を上がらずにリビングへ顔を出した。

私は、手に持った写真たてを下に置く。


「おめでとうございます」

「……何よ、いきなり」

「いやいや、プロポーズされたって聞いたからさ、母さんに」


3つ違いの弟。

大学は同じように都内に通っていたけれど、仕事は地元にある企業を選んだ。


「いいわよ、そんなふうに気をつかわなくても」

「気をつかったわけじゃないよ。内心、心配していましたからね、これでも」

「心配?」

「そうだよ」


知己はそういうと、私が用意した梅酒を、勝手に一口飲んだ。




【61-3】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

【折原国男】
紘生の父、『折原製薬 食品部門』のトップ。
紘生が学生時代、内緒でデザインを学んでいたことを知り、関連する物全てを捨てる。
それから何年間も、一切、連絡を取っていない。

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