62 緊張の再会 【62-2】

【62-2】
「サブか」

「いえ、折原さんがメインでもなんでもいいんですが。仕事の内容としては、
二人で動くボリュームでないこともわかっています。ただ……」

「何か理由がないと、あいつが動かないということだろ」

「はい。一緒にご両親のところへと話しても、選択の権利は自分にあるから、
どうでもいいと言うばかりで」

「どうでもいい……か」


社長はあいつらしいなと笑いながら、デスクの引き出しをあけた。

そこには指示書が入っている。


「誰の頼みでもない、一生懸命会社に貢献してくれている長峰の頼みだ。
ここはひと肌脱がないとな」

「すみません」

「そもそもあいつが作った机と椅子がきっかけなのだろ」

「はい」

「それならそれで押せばいい」


社長はそういうと、『折原製薬注文家具』という仕事内容を記入し、

そこにメイン担当者として私の名前を、サブということで折原さんの名前を記入する。

理由として、すでに購入済みの家具を制作したのが折原さんで、

クライアント、つまりお父さんが、それに合うような家具を望んでいることをあげた。


「よし、小暮。これに印を押してくれ」

「はい……」


社長の記入してくれた指示書に、優葉ちゃんが代理で社長印を押し、

担当者のところに私が押した。四方を固めた状態で、折原さんの印を待つことになる。


「あいつは上か」

「おそらく……」

「よし、絶対に押させてやるからな。任せておけ」


私はすみませんと頭を下げ、自分の席へ戻ったが、

どこか落ち着かなくて、コンビニまで出かけることにした。





「980円です」


3時ごろ、みんなのおやつに出来そうなお菓子を買い、

エレベーターで戻ってくると、紘生が社長の前に立っていた。

私は静かに扉を開け、お菓子の袋を持ったまま、ゆっくり席まで戻る。


「ちょっと待ってください。俺……」

「待ってもいいが、10分程度だぞ。そんなに難しい話ではないのだから」

「いや、あの……」


紘生は、すでに社長印が押され、メイン担当者である私の印も押してある紙を持ち、

首だけを動かした。視線はもちろん私に向かってくる。

『策略』なのだろうという表情が、こっちに迫ってくる気がして下を向く。


「折原。お前は伊吹との仕事もあるからな、メインではきつい。それはわかってる。
でも、今回のメインは長峰だ。しかも、元々クライアント側は、
お前が制作した家具を気に入り、それに合わせたものをと望んでいる。
つまり、折原は無関係ではないだろう……」


社長はその言葉の前で、少しだけためを作る。


「そう、無関係ではないよな、色々な意味で」


社長は、何か不満があるのなら何でも聞くぞと言いながら、

その場で立ち上がり、軽いラジオ体操をし始める。


「まぁ、無関係とは言いませんが……」


紘生は、その続きを話すことなく、口を閉じてしまう。

そこから社長のラジオ体操に対するかけ声の『イチ、ニ』だけが、

事務所内に響いた。


「折原、何も言うことがないのなら、了解の印を押してくれ。
スケジュールを決めていかないとならないだろう」

「社長、本気ですか……」

「何を言っているんだ。俺が本気でなかったときがあるか?」


紘生は指示書を持ったまま、自分の席に戻る。

私がおそるおそる前を向くと、当然ながら不満そうな顔がバッチリ入ってきた。

こうなることはわかっていたのだから、堂々としていよう。


「さて、ランチに行きましょう」

「あ、行きます、行きます」


私は優葉ちゃんをランチに誘い、そのまま会社を出る。

扉がバタンを閉まる音を聞き、少しだけほっとした。


「やりましたね、知花ちゃん」

「やりました?」

「そうですよ。『折原製薬』って、折原さんの実家でしょ」

「うん……」

「それにしても、わざわざ仕事を挟まないとならないんですか?」


そう、確かに、細かい事情を知らない人からしたら、わからないだろう。


「ずっと直接会うことを避けてきているから、一緒に挨拶に行こうって言っても、
自分たちには自由があるからとかなんとかいって、全然腰をあげてくれないの。
だから、強行突破」

「ほぉ……」


しかし、エレベーターを降りていくと、最初は自信満々だった思いが、

だんだん不安に変わっていく。『COLOR』の中に入る頃には、

これでよかったのかという思いの方が、圧倒的に強くなった。


「いらっしゃい」

「『とろりんオムレツ』……、知花ちゃんは?」

「……あ、うん。シーフードサンド」

「はい」


いつものように聖子さんが注文を取りに来て、

いつものように優葉ちゃんと向かい合って座る。


「まずかったかな」

「エ? どうしました」

「うん……だんだん、自分のしたことに、自信がなくなって来たというか」


紘生に、仕事のサブとして動いてもらう以上、『メイン』となるのはこの私なわけで、

今までのように、指示されたものの後追いをすればいいのではないから、

アイデアもデザインも、まずは私が考えないとならない。

紘生が、お父さんのことを思い、自分の夢を表現したあの机と椅子。

それに見合うようなものが、私自身に作れるのだろうか。




【62-3】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
共働きの夫婦は、59%(2012年総務省労働力調査)で、半数を超えているが、
特に、地方(山形、福井、島根など日本海側)の割合が高く、
東京や神奈川など都市部では低い。

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