62 緊張の再会 【62-3】

【62-3】
「知花ちゃん……」

「何?」

「何じゃないですよ、すごくかっこよかったんですからね、さっきの知花ちゃん」

「かっこいい?」

「そうですよ。私がメイン、折原さんがサブだなんて、いいじゃないですか」

「……いいかな」

「いいですよ。ずっと下ばっかり向いていた知花ちゃんが、少しずつ自信をつけて、
いよいよ、メインとして仕事をするわけでしょ。
これこそ、小菅さんからバトンを受け継いだって感じがするじゃないですか」


小菅さん。

そう、大好きな先輩。

伊吹さんとも社長とも意見を出し合って、

仕事の面で『女性』のハンデなど、全く感じさせなかった。

むしろ、女性であることを生かし、素敵な作品を作ってきた。


「うん……」

「折原さんにとっても、このデザイナーという仕事が大事なら、
知花ちゃんにとっても大事なものだってこと、わかってもらういい機会でしょ、きっと」

「そうだね」

「折原、長峰夫婦は、デザイナー同士として、切磋琢磨しながら、
頑張るというところを、ぜひ見せてくれないと」

「うん……」


どうしたんだろう、あまりにも正論、あまりにも冷静。

トラブル大好き、疑問符いっぱいの、いつもの優葉ちゃんじゃない気がする。


「なんだか、すごく立派なコメントだけれど……」

「ん?」

「誰かに、何か言われた?」


優葉ちゃんは否定しないまま、お冷に口をつける。


「社長でしょう、優葉ちゃん」

「エ……」


注文したものを運んできた聖子さんに、そう指摘されると、

優葉ちゃんはバレましたかと、笑い出す。


「社長が?」

「そうですよ。知花ちゃんが折原さんをサブにするという話をした後、
ちょっと外に行ったとき、社長が私に言ったんです。
知花ちゃんのことだから、きっと、時間が経ったら、後悔したり、
考えたりするかもしれないって。そのときには間違っていない。
素敵なことだ、二人とも仕事を大事に思う気持ちを、ぶつけてこいって、
そういうコメントを言ってくれって……」


社長……


「自分が呼び止めて言うのは仰々しいから、
私が、ランチのリラックスしている時にでも言った方がいいだろうって。
とはいっても、ほら、バレちゃいましたけどね、
普段言わないようなことを私に言わせるから」


優葉ちゃんは、自分の顔を覆い、なんだか恥ずかしいと笑い出す。


「いいじゃないの、それだって。土居社長はそういう気持ちのある人よ、昔から」


聖子さんは『とろりんオムレツ』を優葉ちゃんの前に置くと、

社長が塩野さんに、生まれた年のワインを贈り、プロポーズした話まで披露してくれる。

優葉ちゃんと私は、ここが『COLOR』だということも忘れ、

思い切り驚いてしまった。


「プロポーズですか? 知らないです、本当ですか?」

「あら……知らなかったの?」

「知りませんよね、ねぇ、知花ちゃん」

「はい」

「うわぁ……何それ」


聖子さんは、この間、塩野さんがここに来て、嬉しそうに話してくれたのだと言った後、

ナイショだからねと指を口の前に立てる。


「ナイショ……に出来ない!」

「ダメよ、優葉ちゃん」

「いやいや、小菅さんにだけは、小菅さんにだけは伝えたいです!」


優葉ちゃんは、塩野さんを見ながら、口がムズムズしてしまうと照れ笑いし、

スプーンでオムレツをすくっていく。



『二人とも仕事を大事に思う気持ちを、ぶつけてこいって』



社長は、いつも距離を保ちながら、私たちを見守ってくれている。

そう思うと、ほんの少しだけ、自信を持つことが出来た。





その日の午後、

私は『NORITA』と約束している、ダイニングテーブルのデザインに取り組んだ。

なんとかデザインを形にした後、デスクに置かれた書類を確認する。


さっきは、あれだけ不満そうにしていたけれど、

『折原』の印が、きちんと押してある。


「折原さん……」


私の呼びかけに、紘生が顔を上げた。

そして、デスクからファイルを取り出すと、それを持ったまま、

以前、小菅さんが使っていた場所に、腰かける。


「これが『折原製薬』に以前、納めた机と椅子のデザインです」

「はい」


紘生が長い間、色々と悩み苦しみながら、描きあげたデザイン。

発注から出来上がりまで、私も関わった。


「それと、あさって昼の12時から1時間なら、寸法を計りに来てもいいそうです」

「エ……」

「長峰さんが食事に出ていたとき、『折原製薬』から連絡がありましたので、
代わりに俺が聞きました」


私がお願いした返事が、留守のときにかかってきた。

誰だろう、秘書の人だろうか、まさかお父さんが直接だということはないだろうけれど。


「わかりました。折原さんの予定は大丈夫ですか?」

「……あさってですか?」

「はい」

「行かなくてもいいものなら、行きたくないですが」


ほら来た。これをそのままそうですねと言う訳にはいかない。


「それは困ります。広い場所を計ることになるので、ぜひ、お願いします」


紘生が来なければ、目的の半分も達成できない。

ここは私も、強い態度で出なければ。


「……そうですか」

「はい」


私は資料を受け取り、それでは何か意見があったらお願いしますと、

一回目の話し合いを終了する。紘生も何も言わず、自分の席へ戻った。

あらためて、紘生がお父さんに贈った机と椅子のデザインを見ると、

それは本当に見事なものだった。

素材の選び方、寸法の感覚、オーソドックスでありながらも、決して埋もれない。

重みもあるが、そこには細かい工夫がちりばめられている。


「ふぅ……」


紘生が作りだした世界観を壊さないように、私もデザインに取り組んだ。




【62-4】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
共働きの夫婦は、59%(2012年総務省労働力調査)で、半数を超えているが、
特に、地方(山形、福井、島根など日本海側)の割合が高く、
東京や神奈川など都市部では低い。

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