63 幸せの印 【63-1】

63 幸せの印

【63-1】

今日の夕食、何を作ろう。

紘生は忙しいけれど、一緒に食べようってそう言っていたから……


「……はい」


誰かに背中を叩かれた。

あれ? 私、キッチンに立っていると思っていたのに、ここはどこだろう。

なんだか日当たりがいいのか、全体が真っ白に見える。


「何をしているの、そこで」


目の前に立っていたのは、紘生のお母さんだった。

どうしてここにいるのだろう。


「すみません、私」


そうだった。お父さんに教えてもらった。

私の『ジュエリーボックス』をいくつか買ってくれたということ。

こういうときにこそ、お礼を言わないと。


「あの、お義母さん。『ジュエリーボックス』ですが」

「あなた今、なんて言ったの? お義母さんって言わなかった?」

「はい」


紘生のお母さんは、明らかに嫌そうな顔をして、誰かに電話をしようとする。


「もしもし、『番場法律事務所』? ねぇ、横田さんはいる?
いるのならすぐに寄こして。それと、紗枝ちゃんも呼んで欲しいのよ。
ここにまたあの人がいるの。ほら、あの人よ……」


お義母さんの視線が、私に向かう。


「そう、そうだった長峰さん。紘生のところに勝手に入り込んで、出て行かないの」


出て行かない? いえ、ここは私の。


「いえ、あの……私」

「あなたのまとまらない話しは聞きません。
とにかく、横田さんが来るまで待ってちょうだいね」


横田さんって、あの前にお会いした弁護士さんだろうか。

また、何か弁護士さんに言われるようなこと、私、してしまったということなのか。


「紘生……」


そう、紘生はどこだろう。会社? それとも……


「紘生……」


お義母さんの背中の向こうに、紘生の姿があった。

私は大きな声で呼んでみるけれど、振り向いてくれない。

それどころか、こちらの騒ぎに見向きもしないで、遠くに行こうとしている。



「やだ、待って! 紘生!」



目が開いた。

……私、夢を見ていたんだ。



室内灯の明かりがそこにあって、私は自分のベッドに寝ていた。

飛び起きたけれど、お義母さんはここにいない。


「夢……」


今日、紘生と二人で『折原製薬』に行った。

お義父さんと紘生の再会を見届けて、二人で社長室の寸法まで取らせてもらった。

私がメインでサブが紘生。一応、立場的にはそうなっているけれど、

お義父さんは、今使っているものの不便さを、紘生に紙で説明していた。

紘生も、配置換えを含めて、アドバイスをしていて。

ほほえましい姿が見られて、ほっとしたはずだったのに、私は……


今日、仕事に持っていったバッグを開く。

そこには、お義母さんからの手紙が入っていた。

そう、『ジュエリーボックス』を友達に薦めてくれたお義母さんは、

以前、私に会ったときの態度を、謝ってくれた。

時間が出来たら、私にも素敵な家具を作って欲しいという、お願い事まで書いてあって。

私は、その手紙を社長室のソファーで読み、大きく息を吐いたのだった。



そう、そうだった。

部屋を出て、リビングに向かう。

壁にかかっている時計を見ると、午前1時になろうとしているところだった。

心配などしないでぐっすり眠ればいいのに、変な夢を見たから、目がさえてしまって。

冷蔵庫を開けると、お気に入りの小さなサワーの缶があった。

1本飲みきるのは難しそうだけれど、アルコールでも入れないと、

このまま眠れずに朝になりそうで。

扉の向こうにいる紘生を起こさないように、体で缶を隠し、プルを開ける。

プシュッという音がしたけれど、扉の向こうは静かなまま。

私はコップを出し、そこに少しだけ中身を注ぐ。


「美味しい……」


飲みなれた味は、落ち着く。

もう一口、さらにもう一口……。あぁ、そうだった。

これを飲むと、おつまみが欲しくなるんだ。

冷蔵庫に何かなかったかなと、再び開けて見る。


「何してるの」

「あ……」


後ろから声がしたので冷蔵庫を閉じた。




【63-2】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
『結婚式』の花嫁衣装。ウエディングドレスは9割、白無垢が1割。
両方チョイスという人も多いそうです。
ちなみにお色直しの平均は1.3回。

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