63 幸せの印 【63-3】

【63-3】
「よかったですね」

「うん」


その日のランチ。話題は『折原製薬』でのこと。

心配してもらった分、報告はきちんとしないといけない。

長い間、顔を見ていなかったからどうなることかと思ったが、

案外、すんなり前に進めた話をすると、聖子さんがそれが親子だと言ってくれる。


「三村君が、とってもいい顔で知花ちゃんを連れて行ったから、
ご両親も安心していると思うわよ」

「そうでしょうか……」

「聖子さん、三村君っておかしいですよ、もういい加減」

「あら、だって、直らないもの」


聖子さんは、注文した『エビスパ』を届け、『折原』の名前を繰り返し呼び、

首をかしげる。


「折原君ねぇ、なんだかしっくりこない」

「ダメですよ、だって知花ちゃんももうすぐ『折原知花』になるから。
折原さんじゃないと」



『折原知花』



「あ、長峰さん、仕事も名字変えます?」

「エ……考えたことがなかったな」

「折原さんが二人になりますね、うち」


道場さんはどう呼び分けようかと言い始めたが、

優葉ちゃんは『知花ちゃん』でいいと、フォークを動かし始める。



『長峰知花』



そういえば、そんなこと、何も考えていなかった。





「長峰知花でいいと思うけど」

「長峰で?」

「うん……折原二人って言うのも、確かに道場さんの言うとおり面倒だし」


その週末、私と紘生は長峰家に向かうことになった。

先に、折原家のご両親に結婚の了解を得た話をすると、母はとても喜び、

すぐにでもこっちに来いと、催促された。

弟の知己が家を出たので、寂しいということもあるだろうが。


「長峰知花の名前は、俺としても残して欲しいなと思う」


紘生は、そう言うと右のウインカーを出した。カチカチとした音が聞こえてくる。


「知花は嫌? 長峰のままは」

「ううん……嫌なことはないわよ。ずっと使っていた名前だし」

「日常生活は夫婦になるから、もちろん折原知花なのだけれど、仕事の面では、
仲間であり、俺はいつまでも刺激しあえるライバルであって欲しい思いもあるから」



ライバル



「私が紘生のライバル?」

「そう。何度も何度も言いましたけれど、俺が『DOデザイン』を選んだのは、
『COLOR』にあるチェスト、あれですよ」


聖子さんの作業する場所の後ろにある、小さなチェスト。


「デザイナーとして、対等でいたいんです」


デザイナーとして……


「それなら、長峰知花のままにしようかな」

「そうしよう。塩野さんにも喜ばれるから。名刺を作り直さなくていいから、
経費節約だって」

「あ……そうかも」


私たちを乗せた車は、だんだんと実家に近付いていく。

遅刻しそうになって自転車を思い切りこいだ中学への道。

昔は何もなかったのに、今はコンビニもあるからお弁当を忘れても、

どうにかなるのだろう。


「この道でよかったんだよね」

「ナビの通りで大丈夫だって」

「となると、あと5分ですって表示だけれど」

「……そうかも」

「5分かぁ……」


紘生の緊張はわかるけれど、私にはとても余裕がある。

間違いないという自信が、自分の中にあるから。

この人となら、しっかり人生を歩んでいけるという……大きな大きな自信。


「あ、ここを曲がったら、もう見えるから」

「楽しそうだね、知花」

「ほらほら、あの大きな木のある家の向かい……って、何か言った?」

「いえ、いいですよ」


聞こえているけれど、聞こえていないふり。

紘生が車を止めてくれたので、私はすぐに助手席を降りた。

私が玄関を開け母を呼ぶと、2階にいたらしく、階段を下りる音がする。


「着いたの」

「うん、車、中に入れてもいいの?」

「いいわよ、知花たちが車で来るって言っていたから、お父さん移動したし」

「どこに?」

「舟木さんの隣の空き地」

「あぁ……」


ご近所の舟木さん。私より2つ上の娘さんがいたっけ。


「紘生、ここに入れて」


紘生が車を駐車場に入れていると、お父さんが戻ってきた。

互いに軽く挨拶をして、家の中に入る。


「どうも」

「知己……どうしているのよ」

「どうしてって、それは俺も参加しないと」


弟の知己は、念願の一人暮らしを始めたのだけれど、

駅は実家から2つしか離れていない。そのため、週末はほとんど戻ってくると、

キッチンから母の愚痴が聞こえた。


「愚痴? そこは普通感謝でしょう」

「どうして感謝なんてするのよ。結局、腹減った、飯ってうるさいんだから」

「かわいい息子の要求だろ」

「かわいくなんてないわよ、もう」


私は紘生をリビングに通し、とりあえず座ってもらった。

口ではあんなことを言っているけれど、今日の母の声は、とても楽しそうだ。

知己が戻ってきてくれることはきっと、母にとっても嬉しいことだろう。


「ここまで混まなかったのか」

「はい。渋滞にはならずに」

「そうか」


父はいつもの場所に腰かけたものの、どこか落ち着かないのだろう。

新聞を開き読み始めた。母は、お茶を入れると、父の隣に戻ってくる。

私は、とりあえず折原のお父さんに会ったことを話そうとしたが、

紘生がいきなり立ち上がった。




【63-4】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
『結婚式』の花嫁衣装。ウエディングドレスは9割、白無垢が1割。
両方チョイスという人も多いそうです。
ちなみにお色直しの平均は1.3回。

コメント、拍手、ランクポチなど、お待ちしています。(@゚ー゚@)ノヨロシクネ♪


Pagination

Trackback

Trackback URL

http://momonta1108.blog75.fc2.com/tb.php/2904-e65172d9

Comment

Post Your Comment

コメント登録フォーム
公開設定

Utility

プロフィール

momonta

Author:momonta
ただいま、怪獣2匹を飼育中の、お気楽主婦です。
日々のちょっとしたこと、趣味で取り組んでいる『創作』を、このブログに書いていきたいと思っています。
飲み物片手に、立ち寄ってくださいね。

なお、作品の無断転載やお持ち帰りはご遠慮ください。
著作権は放棄していません。お願いします。

ただいま、連載中!

あなたの色と私の色。6人の恋模様が生み出す『COLOR』は……
ただいま発芽室では『Colors』を連載中! こちらからどうぞ

カレンダー

05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

お供、提供中!

この人は誰だろう……悩んだ時には、迷わずGO!
発芽培養所では『Colors 50音人物紹介』を掲載中! こちらからどうぞ

FC2ブログランキング

小説・文学部門に参加しています。

FC2Blog Ranking

毎日1回、ポチッとしてもらえたら嬉しいです。見えないライバル達と、格闘中!

いらっしゃいませ!

QRコード

QRコード

アクセスランキング

[ジャンルランキング]
小説・文学
309位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
ロマンス
4位
アクセスランキングを見る>>