63 幸せの印 【63-4】

【63-4】
「紘生……」

「まずは、このような挨拶をする前に、知花さんと一緒に暮らしていることを、
きちんと謝らせていただきます」


紘生は、プロポーズよりも先に、『同棲』という形をとったことを、

両親の前で謝った。父も母も黙って聞いてくれている。


「僕自身が、親も家も断ち切ったと思い、生活してきましたが、
それは逃げだったと気付きました。悪いことをしていない自信があるからこそ、
どうしても父と向かい合う時間が欲しくて、その行動を取った後に、
プロポーズすることを決めていたものですから」


紘生のお父さんに贈った机と椅子。

家具デザイナーとして、今まで頑張ってきた証。


「その思いを理解してくれた知花さんにも、
そして僕たちを信じてくれたご両親にも、本当に感謝しています」


正々堂々と受け入れろと言ってくれた父は、少しだけ微笑んだ。

母は、もう大丈夫ですよと、紘生に座るように手で合図してくれる。


「紘生、謝ったりしなくていいの。私がそうしたかったのだから……」

「うん……」


知己がキッチンに向かい、コンロの火を止めた。

その音に母も立ち上がる。


「まぁ、みんな腹減ってるので、とにかく食べましょう」


どこか緊張した空気を、知己が笑いで吹き飛ばしてくれた。

そこからは私たちの仕事の話、折原のご両親の話など、途切れずに進む。

母の手料理がテーブルに並び、それぞれの箸がどんどん進んだ。





「うわぁ……強い」

「確かに強いな、紘生君」

「将棋は鍛えられたもので」


紘生は、将棋は小さい頃に、番場さんがみっちり鍛えてくれたのだと説明した。

知己はそれから2回勝負を挑んだが、父のアドバイスを借りても、紘生に勝てない。


「はい、食器入れたよ」

「ありがとう」


母は紘生たちの様子を見ながら、満足そうに笑ってくれた。

やっとこんな日が来たのだと、私も胸をなでおろす。

幹人との結婚が破談になってから、両親にはずっと我慢をしてもらってきた。

仕事のことだけではなく、親のありがたみを考える時間が出来たことは、

私にとって、本当に貴重な日々だった気がする。


「美味しいケーキ、買ったの。いつ、出そうか」

「そうだね……知己が勝負を諦めたら……かな」

「あら、あの子以外にしつこいわよ」


母は、将棋盤に貼りつきそうなくらい見ている知己を指差し、嬉しそうに笑ってくれた。





高速のライト、流れるように進む。折原家にも長峰家にも、挨拶は済ませた。

本来なら、色々面倒なことが終わって、肩の荷を下ろし、互いに滑らかに口が動く……

はずだったのだが……


『式場のこととか、もう考えたの?』


そう、母のたった一言だった。

そこで紘生が出した言葉は、『これからです』。私の出した言葉は、

『式はしなくていいの……』

長峰家が一瞬で緊張に包まれ、私と紘生は顔を見合わせた。

そこからは互いに『いる』と『いらない』の応酬になってしまい、

責任を感じた母は……


『とりあえずゆっくり考えたら?』


といって、土俵から降りてしまった。



『結婚式』

許してもらえたらそれでいいと思っていたし、すでに同居が始まっているからか、

あらためてお金をかける必要などない気がした。

それに、ご両親はとりあえず納得してくれても、『折原家』全体からすれば、

紘生のしたことは、認めてもらえていないだろう。

だとしたら……


「知花……」

「何?」

「俺のことを気にして、式を辞めようと思っているのなら、余計なことだから」


紘生はそういうと、親戚など来なくても、

友達なり知り合いなり、それなりに呼べるのだからと言ってくれる。


「お母さんだって、口に出してきたわけだし、ちゃんと式をすると思っているよ。
一人娘なんだ、それくらい当然考えていると思っていたけど」


長峰家の気持ちだけを考えれば、そうかもしれない。

でも、結婚は私たちだけのものではないことも、それなりに学んだ。


「母は、写真は残して欲しいと考えているだけだと思う」

「そんなことないよ。黒田さんと結婚するって言っていた時だって、
お母さん楽しそうだっただろ、衣装選びに来たって」


幹人との結婚前。そうだった、そういえば紘生は当時の母を知っている。


「紘生さんは、結婚式も挙げてくれなかったのねってことになるのは、困るよ」


今の言葉、ちょっと引っかかる。


「困る? 私たちが考えることでしょ、紘生が困るとか困らないとかで決めること?」


なんだろう。いつも自分の意見をしっかり組み立てる紘生から、

『世間体』という3文字を思い切り感じ取れて、急にイラッとした。


「それじゃ紘生は自分の体裁のために、式をしろって言っているの?」

「は? なんだよ、それ」


今まで『折原家』という大きな壁があったから、

協力しなければという思いがそこにあったけれど、

なんだろう、こんなことで揉めるなんて。



結局、『式』に関しては宙に浮いたまま、部屋に戻ることになった。




【63-5】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
『結婚式』の花嫁衣装。ウエディングドレスは9割、白無垢が1割。
両方チョイスという人も多いそうです。
ちなみにお色直しの平均は1.3回。

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