63 幸せの印 【63-5】

【63-5】
「は? ケンカ」

「ケンカというか、私は紘生が結婚式をするつもりだったとは、思っていなくて」


長峰家訪問から3日後、小菅さんが事務所に遊びに来てくれた。

さくらちゃんはご主人のご実家に預けたらしく、久しぶりに身が軽いと、

二人で『COLOR』に向かい、『エビスパ』を頼んだ。


「知花ちゃんが、折原君の実家に遠慮する気持ちもわかるけれど、
折原君が知花ちゃんの実家に気をつかうのもわかるのよね」

「小菅さん……」

「あはは……ごめん、ごめん。確かに式って面倒だけれど、いざやってみると、
この人たちに祝福してもらって嬉しいなって思えるものよ。
こうしてみなさんが証人になってくれたのだから、
二人で頑張っていこうという気持ちにもなるし」

「紘生もそう言ってます。私の気持ちを動かそうとしているのか、
あちこちからパンフレットを取り寄せて……」

「へぇ、頑張るじゃないの、折原君。ご両親が出てくれないのなら、そうそう、
社長夫妻に前に立ってもらってさ、『DOデザイン』はみんな、
折原君の方へ入ってもらってってことでどう?」


小菅さんは、社長と塩野さんも、

公式の場で揃って立てるのは幸せではないかと、意見をさらに展開する。


「折原君のために……式、しようよ、知花ちゃん。
実際のところ、ご両親に見せたいとか、体裁がどうのこうのとか、
色々言っているけれど、本音は私、折原君が知花ちゃんの『ウエディングドレス』姿、
見たいのだと思うけれど……」


小菅さんは、一緒に暮らしてしまって、お互いに驚くような出来事が減っているから、

そういうこともいいのではないかと、さらに後押ししてくれる。


「そうそう、小菅さんの言うとおりだと思うよ。
写真を撮ればもちろん見られるけれど、それじゃ、味気ないというか」

「聖子さん……そうですよね、そう思うでしょ」

「うん。三村……いやいや、折原君自身が、知花ちゃんの花嫁姿を見たいし、
みんなに見せたいのよ。綺麗だろって……」


聖子さんは、紘生がここへ来ると、いつも私のことを褒めたとそう言った。


「そもそも、折原君は、知花ちゃんの作ったあのチェストに惚れこんで
『DOデザイン』に入ったし、それからもずっと知花ちゃんが輝くように、
仕事でもコンビを組んできたじゃない。意見が全く違うからって、
ぶつかっていたけれど、えっと……」

「そう、二人は『Dressing』ですよね」

「そうそう、『Dressing』よ。互いに本音でぶつかりあっていくと、
素敵な味になるって……」


『Dressing』


私と紘生。全く違うようで、共通点もあって。

ケンカしているようだけれど、いつのまにかまた別の形が生まれていく。


「折原君が賛成してくれているのだから、結婚式、したほうがいいよ。
惚れ直してもらいなさいって、知花ちゃん」


聖子さんと小菅さんのタッグに、私はすっかり押されたまま『COLOR』を出た。





その日、紘生は伊吹さんとの仕事で打ち合わせがあり、一人で部屋へ帰った。

マンションのポストをのぞくと、白い封筒が入っていて、

誰からなのかと裏を見ると、その封筒には『BELL』という店名があった。

それだけではどういう店なのか何もわからず、私は部屋まで戻り分厚い封筒を開ける。

中には数枚の紙が入っていて、その一番上に……



『折原ひろ子様より』



紘生のお母さん……

『BELL』は、ウエディングドレスのオーダーメイドが出来る店だった。

細かい地図と、パンフレット。

そして、これは紘生のお母さんがプレゼントしてくれたものだと言うことがわかる。

寸法あわせなどは、私の時間があるときに予約し、店に行くことから始まり、

見本のドレスなどを見ながら、『世界にひとつ』のドレスを作れるのだという。

小さなパンフレットを途中まで読み、まだ、お店の開いている時間だったので、

私はどういうことなのか電話をかけた。





「オーダーメイド?」

「そうなの。折原のお義母さんが、申し込みから支払いまで済ませてくれてあるって。
紘生、何か言ったの?」

「いや、俺は何も……」

「こういうお店があることは知っていたけれど、まさかと思って……」

「うん」

「お店の方に連絡をしたら、私の都合がいい時に、長峰の母と来てくれって言われたの」

「お義母さんと?」

「お母さんと一緒に決めていくようにと、紘生のお母さんに言われているみたい」


私はどうしたらいいだろうかと、パンフレットを紘生の前に押し出した。

まだ、式を挙げることも決めていないのに、しかも、オーダーメイドなど、

贅沢ではないだろうか。


「……いいんじゃないかな、受けてあげれば」

「紘生」

「こんなことでも、母なりに、祝っているつもりなんだよ」


紘生は、世間と少しずれているところがある人だからと言いながらも、

どこか嬉しそうに見える。


「直接、知花に言えばいいし、楽しみにしているって言ってくれたら、
こっちだってもっと素直に出られるのにな、全く」


楽しみに、してくれているのだろうか……


「知花」

「何?」

「式……結婚式、ちゃんとやろう。うちの親もそれを望んでいるってこと、
これでわかっただろ。男しか育てたことがないから、喜び方のピントがずれているけど、
それでも嫌ですって言ったら、また揉めるぞ」


紘生のその言葉に、私は頷くしか出来なかった。

もう、嫌だとかダメだとかいう理由は、どこにもない。

私たちは、それから式場選びを開始し、折原のお母さんの好意を受け、

私は『オーダーメイド』のドレスを作ることになった。

長峰の母に出てきてもらい、寸法を測り、どのようなデザインにするのか、

色々と店員さんからアドバイスをもらい、ドレスは少しずつ形になっていく。

その日は、母を、お店から私たちのマンションに連れて行った。

ホテルの中にあった、美味しそうなケーキ屋さんで買ったものをテーブルに並べ、

紅茶を入れることにする。


「それにしてもいいのかしらね、私ばっかり知花についていて」

「うん……私もそう思ったの。折原のお母さんにも見てもらってって。
だから、紘生に連絡を取ってもらったら……当日まで楽しみにしているって」

「楽しみ?」

「うん……お父さんとお母さん、出席してくれるって」

「あらまぁ……」


ドレスのことがきっかけで、二人の出席まで確認することが出来た。

それが私にとっては何よりも嬉しいことで、長峰の母もそれならよかったと、

笑ってくれる。


「反対されてもいいからって、結婚のこと強引に決めたし、
仕方がないなと思っていたけれど、あぁ、よかったね知花。
二人とも結婚式に来てくださるのなら」

「うん……紘生が一番嬉しそうだった」

「それはそうよ。ずっと背を向け続けてきたのだから」

「うん……」


私は母と自分の分、2つのカップを置く。


「これから、きっともっと溝も埋まっていくわよ。知花が、架け橋になれるといいね」

「うん……」


『折原知花』として、精一杯、家族の輪を作っていけるように、

私もその中で、笑っていられるように……なれたら、本当に嬉しいのだけれど。





そして、その年の11月。

私たちは、『結婚式当日』を迎えることになった。




【63-6】


《 Dressing人物紹介&豆知識 》

≪Dressing 豆知識≫
『結婚式』の花嫁衣装。ウエディングドレスは9割、白無垢が1割。
両方チョイスという人も多いそうです。
ちなみにお色直しの平均は1.3回。

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