5 Approach 【アプローチ】 【5-1】

5 Approach 【アプローチ】

【5-1】


『株式会社 ストレイジ』



僕が現在、一番メインに働いているのはこの企業になる。

おもな内容は、色々な作物の苗を栽培しながら、

それを自然環境に左右されない商品にし、地方の各団体に卸している。

水を使わないとか、今まで一株だったものを、大量に作り出すなどの、

農業部門を実験的に捉え発展させ、農家は僕達が下ろした団体から苗や種を購入し、

それぞれの畑で作物を作る。

レストランチェーンなどは、決まった量の野菜が必ず手に入らないと商売にならないため、

専属契約を交わしている企業も少なくない。

近年、自然の状態はめまぐるしく変わった。

以前なら水害に強いものや、寒さに強いものなど、

目的を持って取り組むことが多かったが、今はそうではなく、

よりある部分にだけ秀でているものや、栽培時間を短縮できるものなど、

求められるものも、変化している。

僕達は、過去のデータを引っ張り出し、現状に満足しないものを、

常に送り出していかなければならない。


「まずいですね、このデータ」

「そうだな」


同じように研究結果が正しいのかを、研究者とは少しはなれた僕達が確認し、

間違いなくその効果が得られると言うものにだけ、認めの印を押す。

最終確認ともいえる部署だけに、頭は切れるが個性も強いメンバーが揃っていた。


「なぁ、宇野。お前教師になったんだって」

「どこから聞いたんですか、その話」


ファイルに挟んだ紙を1枚めくり、今日の数字をしっかりと書き記していく。


「どこから? いやいや、もっぱらの噂になっているよ。
部長が、うちとの単独契約を望んだのに、それは出来ないと言い切っておいて、
影で塾の先生だなんてさ、お前の趣味がわからんわって」


『澤野洋介』。

僕よりも3つ年上で、国立大学を卒業し、

この『ストレイジ』で、研究班のトップを任されてきた人だ。

趣味のロボット作りにも力を入れているため、僕と同じように、

あまり縛りの少ない勤務形態を取っている。

やるべきことさえやれば、1、2ヶ月まとまった休暇が取れる。

それがこの仕事の魅力。


「澤野さんのところには、どうして話が曲がって届くのかなぁ。
僕は、部長から単独契約だなんて言われていません。
ですから、断ったと言うのもウソです」


僕は研究結果の書かれた紙をチェックすると、ポケットから印鑑を取り出した。


「ん? そうか? それにしても、一番お前らしくないじゃないか、
子供のために時間を取るなんて」


番号『3093』の結果はOK。

これなら市場に出しても、目を引くだろう。

現在の苗より、1,3倍ほど強い。


「まぁ、確かに、お金のことだけを考えていたら、子供を相手にするより、
企業を相手にする方がいいことは確かです。でも、興味本位で始めてみたにしては、
結構、楽しいものですよ」

「楽しい? 塾の先生がか? おいおい、本気かよ」

「はい」


そう、それはウソではなかった。

塾の講師となってから1ヶ月が経とうとしている。

まだ、試用期間になるため、生徒は俊太とアレンだけだけれど、

二人が僕からの知識を、確実に吸収していることがわかり、

コミュニケーションもそれなりに取れるようになってきた。


「『SOU進学教室』だったよな。あそこは塾一つずつに競わせて、
成績を上げていっているらしいな」

「そうみたいですね」

「教室長にも、講師からなっている男が多いらしい」

「教室長に?」

「あぁ、お前もそこまで狙うつもりか、宇野」


教室長。椛島さんの仕事……


「冗談は辞めてください。人を仕切って動かす趣味など、それこそ僕にはないです」

「ほぉ……」




そう、年代がまちまちな講師陣を仕切っていくことなど、面倒なだけだ。

それでなくても、みんな、それぞれプライドが高く、

授業前の話題も、自分が出たライバル大学の悪口などが多い。




僕が動かしたいのは、ただ一つ。




「まぁ、いいことなんじゃないか。
宇野はまともな人間にはならないなと思っていたのに、
やはり人が恋しいと言うことがわかったわけだし」

「澤野さん、妙な言い方は誤解を生むので」

「あはは……」


僕は全ての書類に印鑑を押すと、あとはお願いしますと澤野さんに手渡した。





「お疲れ様です」

「あ……お疲れ様です」


アレンのことを語った突然の食事会以来、僕は相馬さんと話す時間が増えた。

彼女も、僕がどういう人間なのか探る時期は終わり、

この人なら、多少話をしても不快にはならないと感じたのだろう。

彼女の横を通り過ぎ、空いている椅子に腰かける。

今はまだ、授業中。テキストや携帯電話がおいてあるものの、

他の講師の姿はここにない。


「宇野先生」

「はい」


相馬さんは周りを見ながらこちらに近付き、手に持っていた小さな袋を出した。




【5-2】

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コメント

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嬉しいです

シルビアさん、こんばんは
初めての書き込み、とっても嬉しいです。

GW、発芽室はいつもと同じ更新予定です。
ぜひぜひ、遊びに来て、楽しんでください。