7 Conditions 【条件】 【7-4】

【7-4】


「授業前の忙しい時間に申し訳ないね」

「いえ、何かありましたか」


アレンの教師に対して、悪口を言ったことでも、問題になったのか?

いや、それはないだろう。


「先日、相馬さんから学生のことで話をされまして」


学生のこと……


「あぁ……はい」


あの『ストーカー』のことだ。


「アドバイスをありがとうございました。僕の方で、学生を呼んで、
まぁ、男だから、素敵な女性を見れば、惹かれることもわかるけれど、
お前の行動ひとつで、相馬さんがこの場所にいづらくなることを考えなさいと、
そう話しましたので」

「そうですか」


それならよかった。

あまり強く出て、学生を傷つけるのも、彼女が望むことではない気がするし。

教室長がわかってくれていたら、大きな事件になることもないだろう。


「宇野先生が、学生が殴り書きをしていた紙を見つけて、気にしてくれたと、
そう相馬さんが話していました」

「はい。偶然、俊太が使う机だったものですから。なんだろうと僕が気付いて。
それで、彼女に」


教室長はそうですかと頷きながら、部屋のブラインドを下げてくれた。

西日のまぶしさがそこで無くなり、少し細めていた目を元に戻す。


「浪人生とはいえ、19ですからね、気持ちはわからないでもないんですよ。
同じ男としては、もう、爆発したいくらいなのでしょうが、
そうしろとも言えませんしね」

「そうですね」


教室長も、僕も同じ男。

学生の妄想に走りたくなる気持ちは、十分理解している。


「いや、しかし、一番嬉しかったのは、
こういったことを、相馬さんが明るく話をしてくれたことでして」


教室長は、そう言いながら、立っている僕に対して、椅子を出してくれた。


「すみません」

「いえいえ」


相馬さんが……とは、どういうことだろう。


「彼女はとても嬉しかったようです。
宇野先生が気付いてくれて、声をかけてくれたことが」

「いや……結局、教室長のところへ行けばいいという話しだけで、
何もならなかったのですが」

「いえいえ、いいんですよ、いいんです」


教室長は『いい』という言葉を、何度も繰り返した。

そんなに感謝されると、逆にどう返していいのかわからないが。


「相馬さんは、優しくていい子なのですが、なかなか自分の思いを表す人ではなくてね。
この塾に事務として入りたいと言って来た時にも、緊張でしょうが、
人の顔をまともに見ることもしなくて」


教室長は椅子に座り、肘かけに肘を置いた。

ギーッという音がした後、小さなため息が落ちる。


「まぁ、真面目ですし、しっかりしているので採用しましたが、
正直、長く続くことはないだろうと、そう思っていたもので」



相馬さんが、人の顔を見られない……



藤岡さんのように、お話好きというイメージはなかったが、

初対面から、嫌な雰囲気、態度を見せられたことはなかった。

むしろ、授業の合間や帰る前など、

学生とうまくコミュニケーションを取っているように、僕は思っていたのだが。


「ご両親はすでに他界しているので、頼る人もいなくてね。
私が、勝手に親代わりのつもりで……」

「ご両親、どちらも亡くなっているのですか」

「はい。彼女はそれまで静岡に住んでいたそうなのですが、
元々、土地に縁があったわけではないので、
お母さんが亡くなったことをきっかけにして、東京へ」


静岡に住み、母親が亡くなってから東京へ出てきた……

となると、あのマンションは、二人で住んでいたというものではなさそうだ。



『柿沼』

やはり、あいつが、彼女に与えたということだろうか……


「宇野先生」

「はい」

「あ……いや、いいです」


教室長は、何かを言おうとしたのだろうが、

それはいいですと、話を終わらせようとする。

途中で話を切られてしまうと、逆に気になるのだが。


「何ですか。何でも聞いてください」


話しの流れからすると、彼女に関係がありそうだ。

これは聞いておかないと。


「そうですか。それではつかぬことを伺いますが、
宇野先生は、もう……お付き合いしている人など……」

「は?」


相馬さんにしつこいことをした学生の話から、僕の付き合っている人?

なぜ、急に。


「あ、いやいや、やはりこれは言いすぎですね。余計なお世話でした。
申し訳ない。娘を心配するバカな親父くらいに思ってください。
彼女を知れば知るほど、いい子なだけに色々と不憫でね。
つい、余計なことを考えました」


教室長は、これからもしっかりと授業をお願いしますと、頭を下げてくれた。

僕はそれに応えるように頭を下げ返す。

教室長の部屋を出た後、一度塾の外に向かうと、

ポケットに入れておいたタバコに火をつけた。




【7-5】

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