10 Apology 【謝罪】 【10-5】

【10-5】


アレンは今頃ならまだ学校の授業中か、家に戻ってくる前くらいだと。


「ごめん、本田君。この問題を解いておいてくれないか。すぐに戻る」

「はい」


このまま、テンションの高い庄治先生を放置しておくわけにもいかず、

僕は教室を出る。


「アレンがどうかしたのですか」

「今、警察からです」

「警察?」

「すみません、私が悪いんです」

「相馬さんが悪い?」


話が全く見えてこない。

とにかく落ち着いて話をしてくださいと、ひとり冷静に問いかける。


「アレンが、下校途中、駅で他校の生徒とケンカをしたそうです。
通りがかりの方が警察に通報して、それで連絡が」

「ここに連絡が来たわけですか」

「えぇ、そうです。そうしたら相馬さんが、アレンが困っているから、
電話に出てやってくれないかと私に渡すものですから、仕方なく出たのですが。
まぁ、アレンは私ではなく『宇野先生』がいいと、言い張っているようで」

「僕……ですか」

「はい、そうです。アレンは自分の名前とこの塾の名前と、
宇野先生の名前しか言わないそうです」

「すみません……」


相馬さんが、庄治先生の怒りを静めようと、必死に頭を下げる。


「あなたが宇野先生ですかと聞かれて、困ってしまいました。
私だって、出たくて出たわけではないですよ。相馬さんが警察だっていうし、
私に振ってくるから出てみたのに。『宇野先生』をと、何度も言われて。
恥をかきました」

「すみません、本当にすみません。
私が宇野先生は授業中だから、勝手に庄治先生にお願いしてしまって」

「そうよ、どうして私なの。私ではないと、山東アレンが言ったのでしょ」


語尾に近付くほど、どんどんボリュームが上がる。

これだけヒステリックな女は、なかなかいない。

庄治先生は、確か国立の一流大学を出たと聞いたことがあるけれど、

プライドが高く、自分に自信もあるのだろう。

アレンに拒絶されたことが、ショックなのだろうか。


「……で、電話は」

「宇野先生は授業中だから出ることが出来ないと、警察の方に話しました。
そうしたら、アレンは終わるまで待つってそう言うだけだと」


僕の引き受けているのは、塾の講師だ。

不良娘の身元引受人など、冗談じゃない。

それこそ親が出れば済むはずのことで。


「相馬さん……」

「宇野先生、アレンを迎えに行ってあげてくれませんか」


拒絶するために、言葉を出すつもりだったのに、

それを封じ込めるようなセリフを、先に言われてしまった。

相馬さんは、さらにこれ以上下げられないというくらい、頭を下げる。


「申し訳ないことをお願いしているのは、十分承知しています」


庄治先生は話が終わっていないのに、怒りをぶつけ終えると、

相馬さんのことなど気にせずに、さっさと職員室へ戻ってしまった。


「宇野先生……」


迎えに行くというのは、警察へという意味だろうか。

僕は腕時計で時間を確認する。


「相馬さん、そういうことは親のやることですよ」

「わかっています。先生がそこまでする必要はないことくらい。
アレンだってわかっていると思うのです。でも、それでも宇野先生だと言う、
彼女の気持ちが……」


彼女……アレンの気持ち。


「アレンにとっては、宇野先生が初めて自分を認めてくれた人だから……
だから……」



認めてくれた人。



「いや、そう、認めてくれた人と言われても……」

「お願いします、宇野先生。
そうでなければ、アレンはまた、心を閉ざしてしまう気がします」



心を閉ざす……



「人に認められない辛さは、見てくれないという寂しさは、
私自身よくわかるので……」



認められない辛さ、見てくれない寂しさ。

相馬さんはそういうと、唇をかみ締める。

相馬さんが認められないというのは、どういうことだろう。


「宇野先生、お願いします」


相馬さんは、もう一度頭を下げると、顔を上げる。

彼女の目が、どういう思いを持っているのか、わかってしまうだけに、

僕は長く見ていられなくなる。



互いに全てを許しあった時も、彼女はそう……

どこか切なそうに、僕を見た。



『幸せ』だという言葉だけでは、表現できない何かがあるような……



今日は彩夏と会う約束になっている。

時間は、いつもの通りだから、本田君の授業を終えた後に警察へ行けば、

そこまで長引くことはないだろう。

ここまで頼まれているのに、絶対に無理だと突っぱねるのも、

この先、僕達の関係に、引きずりそうな気がする。


「わかりました。警察の電話番号、わかりますか」

「……すみません、ありがとうございます」


相馬さんから番号を受け取ると、僕は本田君の授業に戻ることにした。




【10-6】

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