10 Apology 【謝罪】 【10-6】

【10-6】


「はい、わかります。それではこれから伺います」


授業を終えて、もう一度警察に連絡を入れると、

アレンは黙ったまま、椅子に座っていると言う報告を受けた。

警察の方に、本人と電話を代わりましょうかと言われたが、それは断った。

今ここで、アレンの声を聞いたら、どうしてこんなことになるのだと、

そこから止まらないくらい怒ってしまいそうだった。

僕は、メモをポケットに入れ、荷物を持つ。


「宇野先生」

「はい」

「私も行きます」


相馬さんは、藤岡さんが到着したので、アレンのところについていくと、そう言った。

後ろで話を聞いていた教室長も、そうしなさいと言ってくれる。


「申し訳ないな、宇野先生。本来、あなたに頼むような話ではないのだけれど」

「いえ……」

「相馬さんの言うとおり、アレンの感情を第一に考えて、後はそれからだと思うので、
とりあえず行ってくれますか」


僕が教室にいる間に、相馬さんは教室長に話をしたらしく、

すっかり僕が迎えに出る話がついていた。

教室長は、アレンの母親に、警察へ行くように塾から話をするとそう言い、

僕らを送り出してくれた。

塾を出て、相馬さんと駅まで歩く。


「根負けですね」

「エ……」

「相馬さんにですよ」


そう、今回は僕の『根負け』だ。

彼女との関係を崩したくないという弱みと、

絶対に引き下がらないように思えた彼女の押し。


「……すみません」


『すみません』

僕は、彼女から何度この言葉を聞いただろう。

しかも、ほぼ全て、彼女が悪いわけではないところで飛び出してくる。


「アレンのためではないですからね」


そう、アレンが困っているから、僕は行くわけではない。

これはハッキリさせておく。


「あなたが、悲しそうな顔をするから……『すみません』と謝るから、
だから行くんです」


『すみません』と本来言わなければならないのは、一体誰なのか。

それを僕自身が一番知っているので、だから、拒絶出来なかった。



あなたを悲しませることになるのは……誰なのか。



「……すみません」


ほんの少し前の『すみません』より、ちょっとだけ明るい口調が、

僕の気持ちを、落ち着かせた。





アレンがいる警察は、塾から学校に向かう途中にあった。

別に自分が罪を犯したわけではないのに、あの独特の雰囲気に、

扉の中に入った瞬間、空気が変わった気がする。

やはりこういう場所に来るのは、緊張するものだ。


「宇野先生。電話では、少年課の木戸刑事を尋ねて欲しいと、言われました」

「うん……」


二度目の扉を開け、廊下を見ると、木戸刑事を探すまでもなく、

そこにはうなだれたアレンと、女性警官が一緒に座っていた。


「山東さん」


相馬さんの声に、アレンが反応する。


「……先生、相馬さん」


アレンは、一瞬緊張した顔を見せた。

本当に僕が現れたことに、驚きがあったのだろうか。

以前、塾に遅れてきたときと同じく、制服が汚れ、髪の毛も乱れている。

僕は何も言わないまま、アレンに近付いた。


「本当に来たんだね、柾。あはは……やだ、驚いた……」


アレンは手を叩きながら、軽く足踏みをするような仕草を見せた。

二人揃って来るなんてと、わざとらしく笑顔を見せる。


「アレン……お前なぁ」

「すごいね、今時の塾って、ここまでするんだ」


アレンの言い方に、腹が立った。

僕は瞬間的に手をあげたが、それは予想していた相馬さんにつかまれる。


「宇野先生」


目を閉じ、叩かれるのを覚悟したアレンは、両手をグッと握り締めていた。

逃げようとはせずに、受け入れようと歯を食いしばっているのだろうか。

この状態から、彼女を振り切り、思い切り学生を叩くほど、

僕は乱れていない。


「大丈夫です、叩きはしません」

「本当ですか」

「相馬さん。こいつ、叩かれるのを待っているんですよ。
そういうやつは叩きません、手が汚れます」


アレンは、閉じていた目を開け、そして少し頬を膨らませた。

僕は相馬さんが離してくれた手を、そのまま下におろす。

こんなところで、熱血教師を気取っても仕方がない。


「汚れるだって……ひどい」

「話を聞かせてもらってくるから、待っていろ」


僕は、アレンのそばから一度離れ、少年課の木戸さんにつないでもらい、

状況の説明を受けることになった。




【11-1】

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