11 Criminal 【罪人】 【11-2】

【11-2】


「考えすぎだろ。お子さんが生まれて、家庭のこととか色々あって、
疲れているのかもしれないぞ」


立場的には、そうフォローするしかない。

先ほどのヒステリックぶりを思うと、まんざらウソではないだろう。


「疲れているだなんて、それこそ私に関係ないでしょ。
せっかく楽しいと思えるようになったのに、また嫌いになるから、数学」

「アレン……」


庄治先生は、どういう契約になっているのだろう。

あの塾には、毎日必ず授業を持つ『専属』の契約と、

僕のように、『単価』で収入を得る契約と、たしか2種類が存在した。

生徒の数が収入になる『単価』だと、そう簡単にこちらに戻れとは言いにくい。

僕としては、アレンが戻ってこようと、時間的にたいして問題はないのだけれど。


「山東さん、それは椛島教室長に、自分から話をしなさい」

「相馬さん」

「塾のことは塾で解決することなの。宇野先生の教え方が自分に合うから、
これからも教えてもらいたいからって、そう話をすればいいでしょ。
こんなふうに宇野先生を困らせるのは、よくないわ」


相馬さんはそういうと、アレンの制服の埃を払い、少し擦り傷を作った左手に、

かわいらしい絆創膏を貼った。

アレンは、左の小指の付け根に貼られた絆創膏を見ながら、下を向いたままになる。


全く、僕の何がアレンに響いたのだろう。

特に教師論をふりかざしたことはないし、いい点数をもらおうとも思っていないから、

学生を浮かれさせるようなコメントも、一切言わないのに。


「相馬さんが言うとおり、教室長に話をして、認めてもらえたら、
また僕が教えるのは構わないよ」

「……本当?」

「あぁ……」


まぁ、二度と近付かないでくれと言われるよりは、いいのかもしれないが。


「絶対だからね、知らないとか言わないでよ」

「言わないよ」


アレンはそれならまた塾に通うとカバンを肩にかけ、

長い間座っていた椅子から立ち上がる。


「その前に、庄治先生にきちんと謝れよ。ご迷惑をかけたのだから」

「……はい」


そう、たとえヒステリックな女性だとしても、それとこれは別。


「それと……」


僕は、僕達がここまでわざわざ来たことに対して、

どう償うつもりだと聞いてみた。別に本気で思っているわけではないし、

償うといっても、出来ることなど限られているけれど、

『気持ち』を見せろと、詰め寄ってみる。

まぁ、『次のテストを頑張る』とか、『遅刻をしないで来るようにする』とか、

ありふれた答えが返ってくるだろうと、予想した。


「そうだな、相馬さんには、うちの『シーフードピラフ』をおごってあげる。
お母さんが作るの結構美味しいし。で、柾には……」


アレンはウインクをしながら、なぜか僕に投げキッスをする。


「柾には……もし、望むのなら私をあげちゃう。いいよ、柾なら……」

「は?」


一瞬、相馬さんの方へ視線が向かう。


「山東さん、何を言ってるの。ふざけて」

「えへへ……」


アレンは今日一番の笑顔を見せ、軽く舌を出した。

わかっている。この子は頭の悪い子ではない。

こういうことが起こり、こうして顔を揃えている僕と相馬さんに対して、

申し訳ないという思いがあるからこそ、これだけふざけた態度を取る。


「悪いけれど、アレンを相手にして、警察に捕まるようなことをするつもりはないな」


ハーフというアレンは、少し大人びて見えるけれど、高校1年生。

それこそ新聞沙汰だ。


「そうか、そうだよね。柾はきっと彼女いるよね」



彼女……



相馬さんの方に視線が動いたけれど、彼女はこちらを向くこともなく、

アレンだけを見つめている。


「でもさ、なんかいい気分。柾に来てもらって……」

「いい気分じゃないだろう。全く」

「はい」


塾に来て、勉強を教えて帰る。

教師と生徒など、それだけだと思っていた。

相馬さんは、お母さんが来るまで、一緒にいるからとアレンに話している。


「宇野先生、山東さんのお母さんが見えるまで、ここには私が残りますから」


警察の壁にかかる時計を見る。彩夏と待ち合わせた時間には、まだ余裕があった。


「あぁ……はい」


これから書店により、数冊本を買い、それを読みながら食事をして時間を使えば、

おそらく待ち合わせくらいになるだろう。


「お母さんにも、謝らないとダメよ」

「うん……」


相馬さんがいてくれれば、問題はないのだろうが……

結局、乗りかけた船だということで、僕もアレンの母親が来るまで、

その場に残ることにした。




【11-3】

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