11 Criminal 【罪人】 【11-4】

【11-4】


部屋に入り、シャワーを浴びる。

見つめ合った瞬間から、どちらがどうだと考えることなく、

彩夏との時間は流れるように進む。

耳たぶに舌を置くと、笑いながらも彩夏が身体をそらすことも知っているし、

『嫌』と言いながらも、その先を求めてくることもわかっている。

だから、どちらも予想できないことはないし、必ず求めている時間が訪れる。

自分が男で、相手が女であることを、互いに嬉しく思うとき、

この時間が生活の一部なのだと、納得することが出来た。


余韻を感じ、それぞれの生活に戻ろうと身体を起こす。

シャワーを浴びて、身支度を整えると、揃って部屋を出た。

彩夏が僕の腕を取る。


「どうした」

「なんだか今日は、こうしていたい」


僕は耳元で『不満なの?』とささやいた。

彩夏は首を振りながら、大丈夫だと笑ってくれる。

エレベーターを降り、フロントへ戻り、そのまま玄関を出る。

その時、ガサッと音がして振り返ると、小さなネコが、植え込みの中から飛び出した。


「やだ、びっくりした」

「あぁ……」

「こんなところにネコなんて珍しいけど」

「そうだね」


ホテルが数件立っている場所だけれど、その分、レストランなどもあり、

残飯をあさるネコが出ることも、考えられる。

都会で暮らす生き物は、いい意味でも悪い意味でもタフでなければならないだろう。


「それじゃね、柾、また」

「あぁ……」


彩夏は僕に軽く手を振ると、今までの時間を振り切るように、まっすぐ進んでいく。

その姿は、曲がり角ですぐに見えなくなった。



彩夏の家がどこにあるのか、僕は何も知らない。

知っているのは、彼女の携帯番号、アドレス……



そして、女としてスイッチの入る場所だけ……



アレンに振り回され、彩夏に受け止めてもらった日は、終わった。





それから3日間、僕は『ストレイジ』にこもっていた。

メンバーがそれぞれ休みたい時期を決めているため、少しデータを進めておかないと。

そして、仕事をしている途中、相馬さんからメールが届く。

内容はアレンのことで、教室長と庄治先生、そしてアレンとの話し合いの結果、

これからまた、僕が担当になるようだという連絡だった。

これは『業務連絡』なのかもしれないが、それなら彼女からの連絡はありえない。

おそらく教室長から正式に話が来るだろう。

僕はその時、何も知らない振りをしなければならなくなった。


「ふっ……」


以前も、俊太が点数を上げたことを喜び、相馬さんはフライングをして、

彼を喜ばせてしまった。自分が余計なことをしたと、反省していたはずなのに、

今していることも同じようなことで、思わず笑ってしまう。


「何がおかしいんだよ、宇野」

「あ……澤野さん」

「メールの文面を見て笑うなんて、お前、『春』が来ているな」

「……『春』ってなんですか」

「何って、女だよ、女」


澤野さんが携帯を取りあげそうになったので、僕はすぐに閉じ、ポケットにしまう。


「別になんでもないですよ。塾のことでちょっとあったので、それが解決しただけです」

「塾? おぉ、そうだった、お前先生だったな」

「はい、一応」


僕が相馬さんと個人的に連絡を取り、付き合っていることを教室長は知らないのだから。

こうして連絡があったことを、気付かれないようにしないとならなくなった。

まぁ、彼女にしてみたら、アレンの味方なのだから、仕方がないけれど。


「その雰囲気を見ていると、先生という商売も、楽しそうだな」

「楽しい……いや……まぁ、そうですね」

「なんだそれ」


『楽しい』という気持ちは、確かにあるだろう。

しかし、それは『教えることに目覚めた』わけではなくて、

ただ……



『ゲーム』がしっかりと進行しているということを、

自分自身、感じ取れているからだと思う。



澤野さんが部屋を出た後、

相馬さんに『わかりました』とメールを打つつもりだったが、

僕が打ったメールは……



『今日、会いたいけれど……』



という、誘いのメールだった。




【11-5】

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