12 Advance 【前進】 【12-3】

【12-3】


「その企業は『ラボンヌ』じゃないのか」



『ラボンヌ』



『明林製薬』が企業協力をしているアメリカの大手製薬会社。

話すべきなのかどうか迷ったけれど、僕が柿沼に邪魔をされたということは、

紛れもない事実。

仕事でも信用できる澤野さんの語り。ここははぐらかせるわけにはいかない。


「いえ、実際の就職先は『明林製薬』でした。
ただ、数年後に『ラボンヌ』へ研究留学のような形を取ると……」


真実を語ることに、何も遠慮などない。

富田さんの動きに気付いている柿沼は、おそらく僕の動きも把握しているだろう。

相馬さんに近付いていることを知られ、また標的にされるかもしれないのだから。


「ほぉ……」


ため息をつく澤野さん、そう、聞けばそうなるだろう。

とんでもない好条件だった。

その代わりに、僕の研究を丸ごと寄こせという、

これもまた研究者としては、とんでもなく最低な話しだけれど。


「ほらほら、話がつながりそうでしょ」


青橋さんはそういうと、ここは僕達だけにすべきだと思ったのか、

とりあえず席を離れてくれた。


「10年前、柿沼と『明林製薬』の関係は、最高ともいえるくらいのものだった。
その関係が出来上がったのは、そこから数年前くらいらしいのだけれど、
『ラボンヌ』側から、どうしても日本へ食い込みたいという話があり、
何名もの教授たちに美味しい話を振っていたんだ。でもな、日本人は用心深い。
『未承認』の薬を入れることに抵抗があり、なかなか前には進まなかったらしい」


そういえば、尚吾も言っていた。

あの頃、バイトばかりだった僕は知らないが、教授たちを拉致するくらいの勢いで、

接待ばかりしていたと。


「おそらく、そこをうまくクリアしたのが、柿沼だったのだろう」


薬といえば、医療関係者のものだと思われがちだが、

正面から入り込むには、なかなか勇気がいる。

全く別の切り口から、思いもかけない入り込み方をする方が、

最終的には出口までつながる道を、確保することが多い。


「おそらく、お前の研究は、
柿沼が『ラボンヌ』とさらなる関係を作るための、手土産だったはずだ」



『連鎖反応の研究』



何一つ、僕が調べているわけではない。

でも、澤野さんの話には、確かにと思える点が、いくつもあった。

岩佐教授が亡くなってから、

その研究は絶対に成功させないという勢いで邪魔されていたのに、

最後は、柿沼の功績と変わったけれど、世の中に発表され評価を受けた。

いらないと思っていたものに、価値があるとわかり、あいつは態度を変えた。


「しかし、今、柿沼と『ラボンヌ』の関係は、良好ではない。
その証拠が、山田の息子の事件なんだ。富田はこのあたりが核ではないかと、
そう思っている」



核……



「澤野さん」

「何だ」

「柿沼と『ラボンヌ』の関係は、どうして崩れたのですか」


そう、長く蜜の間だった関係が、崩れた理由。


「そこは俺も聞いていない。あいつもどれだけ知っているのかわからないけれど」

「……そうですか」


わかっている部分と、わからない部分。

だからこそ、柿沼は必死に身を守ろうとしているのだろうが。


「実はさ、もうひとつあるんだ。『ラボンヌ』が日本に入り込むきっかけ作りに、
明らかな協力をしたのは、間違いなく柿沼なのだけれど、
実は、裏でもう一人の名前が、噂されている」


もう一人の名前……


「岩佐教授だ」


『岩佐教授』。突然出てきた名前に、僕は驚きを隠せなくなる。


岩佐教授と『ラボンヌ』。

柿沼だけでなく、岩佐教授も『ラボンヌ』と取引をしたと言うのだろうか。


「澤野さん、岩佐教授が企業と取引をするなんて、それは考えられません。
僕は大学時代、ずっと教授のそばにいましたけれど、
僕の知る限り、そういった黒い部分は……。
いえ、友人にもそれらしきことを聞いて見ましたが、あいつも岩佐教授にはって……」



黒い部分は、岩佐教授にあるわけがない。



正直に、研究に打ち込み、確実に積み上げることを常に学生に伝えてきた人だ。

目の前に積み上げられる金に、首を縦に振るとは思いたくない。


「うん、そうだよな。お前にとってはそうだと思う」

「澤野さん」

「だからこそ、富田はお前にしっかりと話を聞きたいと考えているんだ。
今、話していることが事実なのか、つまり岩佐教授が白なのか黒なのか、
本人に聞きだすことは出来ない。岩佐教授に罪を擦り付けようとする柿沼に、
振り回されているのかもしれないだろ」


誰のことでもない。

僕が心から尊敬した、教授のことだ。


「わかりました。僕が知っていることは、全て答えるつもりです。
富田さんに、連絡を取ってください」


柿沼の周りが動いている。

それだけはわかった。

僕自身の力は非力でも、世の中という大きな波が襲いかかれば、

動かないと思っていた岩も、崩れるかもしれない。


「まぁ、固い話しはここらへんまでだな」


澤野さんはそういうと、少し離れていた『ミルキー』をまた呼び寄せる。

『ミルキー』こと青野さんは、トランプでもしましょうと、手でカードを切りながら、

テーブルに戻ってきた。




【12-4】

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