13 Heart 【核心】 【13-1】

13 Heart 【核心】

【13-1】


彼女の言う『聞きたいこと』。

さて、僕に何を聞くのだろう。



「東城大学の、柿沼教授について、教えてください」



「エ……」


『柿沼教授』

相馬さんは、あまりにもストレートに、ぶつけてきた。

僕に、柿沼のことを聞く理由。


「……どうしたのですか、急に」


柿沼と僕と彼女。

それぞれは直線だと思っている、いや、思おうとしているのに、

トライアングルなのだと、ここで白状するつもりだろうか。


「宇野先生、柿沼教授をご存知だと、以前言われましたよね」


そう、知っている。

出来たら忘れたいくらいだけれど、忘れることなど出来ない。

あなたより、知っている部分もあるはずだけれど……


「もちろん、柿沼教授はわかります。『東城大学』の理学部を出ていて、
知らない学生がいたら、それはウソをついているとわかるくらい、
有名な方ですから」


あいつに気に入られたもの、嫌われたもの、それぞれいるとしても。


「なぜ、相馬さんが柿沼教授のことを聞くのか、教えてもらえませんか」


あなたは、僕に何を言わせようとしているのだろう。

相馬さんは、そうですねと頷きながら、箸を目の前においてくれる。


「どうぞ、食べながら話しましょう」

「あ……はい」


いただきますと挨拶をして、それぞれ箸を持つ。

僕は、すぐに目についた酢豚を口に入れた。

相馬さんは、味が気になるのか、こっちを見続ける。


「美味しいですよ、心配しなくても」

「……本当ですか? あぁ、よかった」


安心したからだろうか、彼女も箸を料理につけ、ほんの数分、

静かな時が流れていく。


「宇野先生、西条先生が教えている並河君、ご存知ですか」

「並河……あぁ、メガネをかけている」

「はい。彼、志望校が『東城大学 理学部』だそうです。
それで先日、オープンキャンパスで大学を訪れたときに、
ちょうどテレビの取材が来ていて……」

「柿沼教授にですか」

「そうみたいです。それで、どんな先生なのかと……」


並河という学生は、確かにいる。

しかし、オープンキャンパスで大学に訪れたとき、柿沼に会ったとしても、

どんな人物なのか、興味など持つだろうか。

僕はそうですかと納得するふりをしながら、彼女の瞳に見抜けるものがないかと、

そう思い続ける。


「どんな先生」

「はい」


柿沼の話しで聞きたいのは、それだけだろうか。

学生のために聞く内容としては、少しおかしい。


「相馬さんは、柿沼教授のどういうことを聞きたいですか」


思い切って、そう問いかけた。

彼女が柿沼を知らないわけがない。それでも、僕に柿沼のことを聞くのは、

自分の見ているものが表なのか、それとも裏なのか、

彼女自身が不安になっているのではないだろうか。



「……信頼できる方ですか」



『信頼』

僕は、彼女をこのマンションに送り届けた後、あいつが入っていくのも確認している。

ただ、彼女の知るあの男は、『大学教授』という顔ではないのだろうが。

『愛人』として得るものを得ていても、心ごと信頼は出来ていないということだろうか。

それとも……僕に柿沼のことを、語らせたいからだろうか。

あいつに、何もかもを告げるため。



「僕は……」



岩佐対柿沼。

岩佐教授が、もしまだ、この世に残ってくれていたら、

僕は違った人生を歩んでいただろう。

なぜなのか、どうしてなのかと、何度も唇をかみ締めたが、

それでも、気持ちは昔と変わらない。


いや、変えられない。


この『ゲーム』は、終わりに近いところまで進んできている。

だからこそ……



「柿沼教授という方は……」



ここで、繕うようには話せない。



「僕にとっては、尊敬するところのない方でした。信頼できるのかと言われたら……」



そう、『信頼』出来るのかと、問いかけられたのなら……



「僕が、あの人を信頼したことは、一度もありません」



たとえ、あなたがこの言葉をあいつにそのまま告げたとしても、僕は後悔などしない。

研究者としての道は諦めたけれど、

人生の先輩としても、何も見習うところなどないと思っているのだから。




【13-2】

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