13 Heart 【核心】 【13-4】

【13-4】


「ご両親もいないし、お姉さんも……もう……」



お姉さん……



「アレン、相馬さんと個人的な話をしているのか」


驚いた。僕でさえまだ、知り切れていない情報を、

アレンは知っているというのだろうか。


「色々っていうか、ちょこちょこだけどね」

「ちょこちょこ……」


ご両親が亡くなっていることは聞いたけれど、

なんとなくわかっていた兄弟が『姉』で、すでに亡くなっているとは、知らなかった。


「……で」

「ダメ! そんなに気になるのなら、相馬さんに連絡してあげましょう」


まともに扱わないつもりが、興味のある方向へ話しが動いたことで、

つい、乗り出してしまった。僕はそれならいいとアレンに告げる。


「えへへ……気になるでしょ」

「いいから、さっさと帰れ」

「帰りますよ、言われなくても」


以前見せた変顔をまた作りながら、アレンは塾を出ていった。





相馬さんに、会えない日がないわけではない。

しかし、予定外の日に姿を見せなかったことが、確かに気になった。

季節の移り変わり、それとも……



いよいよ、柿沼の邪魔が入り、僕と距離をおくつもりになったのだろうか。



電車の中でつり革に捕まっていると、携帯にメールの届く音がした。



『明日、会えない?』



彩夏からのメール。

こうした文面を読むのも、久しぶりのような気がする。

履歴を探ってみると、以前、アレンが警察に捕まって引き取りに行った日、

あれ以来だった。



『いつもの店で』



そう返信しようとした手が止まる。



『ごめん、明日はちょっと無理だ』



頭が考えていたというよりも、指が勝手にそう動き、送信ボタンを押していた。

『もう少し……』という相馬さんの言葉の意味を、知りたい気持ちが大きくて、

他のことが考えられないからかもしれない。

彩夏となら、慣れた時間を持てることくらいわかっているし、

互いの関係を遠慮する必要など、どこにもないのだけれど、

それでも……



『わかった』



彩夏からの返信は、たった1行で、

僕はとりあえず携帯をポケットに押し込み、帰り支度をした。





「こんばんは」

「こんばんは」


12月に暦が動いた週末、僕は『ストレイジ』の仕事を終える。

澤野さんと一緒に向かったところに待っていたのは、

『中央新聞社 社会部』の富田さんだった。

しばらく、アメリカとドイツに取材で出かけていたのだと説明される。


「澤野君からお話は聞いているでしょ」

「はい」

「宇野さんに迷惑がかからないように、それだけは気をつけますから……」

「いいですよ、もう、気にしないでください」


そう、この1、2ヶ月で、僕の覚悟は決まった。

僕が今更繕ってみても、柿沼には相馬さんのことで、とっくに目をつけられている。

昔の話を色々語ったとしても、もう研究者ではないし、

あいつの傘下にいるわけでもない。

いや、もし、仕事を追われるようなことになっても、

また別のことをすればいいというくらい、気持ちは割り切れていた。

『ゲーム』だと思っていた彼女との関係も、それ以上になっていることを、

認めなければならない。

彼女がどちらを選ぶのか……それくらいの覚悟が出来ていた。


「私も、知っている限りのことは、話します」

「はい」


富田さんはそういうと、僕らの前に相関図のようなものを出してくれた。

記号と線ばかりなので、これが何を示すのか、まだよくわからない。


「私が長い間調べて来たのは、『ラボンヌ』が『明林製薬』とのつながりを利用して、
日本で未承認の薬を使った手術をしていたという話しの、裏を取るためだったの」

「……手術?」

「えぇ……」


『ラボンヌ』はアメリカの製薬会社で、

日本ではまだ認められていない薬を輸出したいという野望があり、

その認可を急いでいた。

先日捕まった元厚生省の大臣秘書も、この動きに絡んでいたという。


「宇野さんならご存知でしょうけれど、薬の認可には時間がかかるの。
でも、外国で使われている実績があったとしたら、病気に苦しむ人たちからすれば、
認可を早くしてくれと思うのもわかるでしょ」


僕はそれは確かにそうだろうと、何度か頷いた。

誰だって、病気に負けてしまうのは嫌だし、治る可能性があるのなら、

外国のものでもなんでも、すがりたいと思うのは無理もない。


「その手術は、確かに行われていた……はずなの」

「……はず?」


澤野さんは、外国まで行っているのに、決定じゃないのかと富田さんに言った。

富田さんは確かにそうだと頷きながら、相関図らしき紙に、

初めて人の名前を入れる。



『柿沼』

やはり、この男の名前が一番最初。



そして……



「エ……」



岩佐というのは、岩佐教授のことだろうか。

いや、それよりももっと目を引いたのは……



『相馬智美』という女性の名前だった。




【13-5】

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