14 Shout 【叫び】 【14-4】

【14-4】


テーブルの上に、ばらけた写真。少し暗い気がしたが、

1、2秒で、写っているのが誰なのか、すぐにわかる。


「個人的に素敵な女性だから、当たり前のように近付いた。
宇野、君こそ何を言っているんだ。君には、素敵な女性がすでに、
こうしているだろう……」


写真は、彩夏と僕がホテルに入って行くところと、

そして、いつもの店で、寄り添って酒を飲んでいるところだった。



「まぁ、結婚しているわけではないのだから、
君の恋愛をとやかく私が言うことではないにせよ、その女性を大事だと思うのなら、
二股をかけるようなことをしないのではないか」



写真に残る日付。

この日はそう……



アレンが警察に補導され、僕は相馬さんと一緒に引き取りに向かった。

元々、彩夏と会う予定があり、その後……



『近頃、つけられている気がする……』



彩夏をつけていたのは、取引先の男ではなく、柿沼の……



この男が仕掛けていた男だったのか。



「ハッキリ言ったらどうだ。相馬郁美と私が親しいのだと知り、
その間に割って入ろうとした。自分に振り向かせることで、利益を得ようとした。
どうだ、違うのか」


柿沼と僕と彼女。

関係はそれぞれの線だと思っていたのに。


「彼女が、お前を素敵な人だと、すっかり騙されているようだったから、
私がこうして、写真を見せて、お前の本性を明らかにしておいた」


柿沼は、さらに数枚の写真を出し、僕の前に並べた。

そのほとんどが彩夏との写真。

ホテルを出るところ、そういえば、前に、別れ際キスをされたこともあった。

さらに、富田さんと澤野さんと3人で、酒を飲みながら話しているものもある。


「宇野柾という男は、大学院時代に、研究がうまく行かなくなったことを、
私のせいだと言い続け、道を諦めたような男だから、
何かを相談しようとか頼りにしようとか、思ってはいけないとそう話しておいた」


柿沼は、さらに用紙を取り出し、それに書いてあることを読み始めた。

彩夏の会社名、所属先。そして、僕と彼女がどう出会い、

今、どういう関係にあるのかも、話し続ける。



これを……相馬さんに聞かせたということだろうか。



「宇野。『大西彩夏』さんとは、もう2年以上も続く付き合いだそうじゃないか。
綺麗な人だし、相馬郁美と近付いてからも、別れている様子はない。
ようは、宇野という男は、君を利用しているだけだと、だから、
宇野のことは深入りするなと、私がそう釘を刺しておいた」


間違っているのかといえば、間違いではない。

彩夏とは確かに付き合いが続いている。

それが、身体だけのものであったとしても、説明などつけられない。



あの日、二人でアレンを救った後、

僕は……いつものように彩夏と抱きあったのだから。



「私がお前と郁美のことを知り、慌てるとでも思っていたのか、宇野」


柿沼ペースで進む話。

握り締めた手に、汗がにじんでいく。


「お前が近付けば、彼女がお前を選ぶとでも思っていたのか」


これは『ゲーム』。

確かに、柿沼を少しでも慌てさせたいと思ったことは事実。

だから彼女に近付いた。


でも……それだけではない何かが、すでに動いていると……


「この富田という女性は、『中央新聞社』の記者だろう。
全く、女を使って、色々と私の周りを探ろうとは。
宇野、君は堂々とした研究者だと、あの日、私に言いきっただろう、
覚えていないないのか……」


大学院の時、誘惑には屈しないと言った日。

それもこの場所だった。


「私のあら捜しをしようなど……バカなことを」


他人を使って、人のことを探るなど、大人がすることではないと、

柿沼は、自分の悪行には全く触れず、さらに偉そうな言葉を並べていく。




相馬さんに、全てを知られてしまった。




いや、僕が純粋に彼女に近付いたのではないことが、わかってしまった。




だから……

ここのところ、距離を置こうとしているのだろう。



「……相馬」



『ゲーム』は、僕の手を勝手に離れて終了した。

いや、『ゲーム』は『ゲーム』にしかならず、それ以上のものに変わることはなかった。

それはわかっているけれど……



「相馬智美さん」



富田さんから聞いた名前。

まだ、何がどうなのか、ハッキリしていないのに。

僕は、最後にその名前を、柿沼にぶつけた。


「なんだ……何を言っている」


柿沼は、冷静を装うとしているが、その名前に対し、明らかに表情が変わった。




【14-5】

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