15 Mirror 【ミラー】 【15-3】

【15-3】


『岩佐幸志』




まさか……



そんな……



「岩佐教授の娘さんなのですか」

「……はい」


岩佐教授に娘さんがいるという話しは、一度も聞いたことがない。

僕が知っている教授は、一人身だったはず。


「あの……僕が知っている教授は」

「はい」


信じられない僕の耳に、相馬さんはゆっくりと真実を語り始めた。





今から30年以上前、

相馬さんの母親『相馬奈緒』さんと、『岩佐幸志』は恋人関係にあった。

将来を約束しあうところまで進んだときもあったが、

ちょっとした行き違いで別れを迎え、その後、岩佐教授は別の女性と結婚した。

それから2年後、教授の奥さんは子供を身ごもったのだが、

妊娠過程の中で病にかかり、胎児とともに、若くしてこの世を去ることになってしまった。


その悲しみから1年半後のこと、

籍を入れていない関係のまま、再会していた二人の間に、双子の女の子が誕生する。

岩佐教授にしてみれば、弱い自分を受け入れてくれる奈緒さんの存在が、

大きかったということだろう。

その時生まれた双子が、『相馬智美』さんと『相馬郁美』さん。


「前妻を思いがけないことで亡くした父も、
子供が生まれるからといって、すぐに結婚するつもりはなかったようですし、
母も、時期を見てと考えていたようです」


教授にしてみたら、前妻の親戚との関係を考え、

双子の存在は、あまり公にしてこなかったという。


「幼稚園くらいの頃でしょうか。姉に病気があることがわかって、
小さな子供たちがするような外遊びが難しくなり、
そこからはほとんど家で過ごすような生活になりました」


智美さんが外へ行きたくても行けないという状況になり、

母親の奈緒さんは、郁美さんにもおとなしく部屋にいるような生活を、

望むようになったという。


「私は幼かったので、自分が行きたければ、
公園で泥だらけになって帰ってきていたのですが、
それを見た姉がとても寂しそうな顔をするので、母も気をつかったようでした。
そのうち、私自身も、友達の話などしても、あまり二人が喜ばないので、
自然と家で過ごす時間が増えて……」


そういえば以前、今までで楽しかったことはという質問をされたことがあった。

僕は大学時代の研究について語った覚えがあるが、

彼女は、幼い頃に川などで遊んだことだと、そう言っていた。


「姉の状態は、小学校、中学校と進むにつれ、悪くなりました。
ベッドの上で過ごす時間がどんどん増えていって。
父は、そんな状態だからこそ、一緒に家族として生きていこうと言いましたが、
母は、絶対に嫌だと首を振って……」

「なぜですか」

「やはり、前妻の亡くなった時期と、
私たちが生まれた時期が近いということだと思います。
手のかかる娘を連れて、父のところへ嫁ぐという選択を、母は取れなかったのだと」


不倫関係にあったわけではないが、元々恋人同士だったこともあり、

どこか奪い取ったように思われるのを、互いに避けたかったのだろう。

結局、正式な家族とはなっていなかったが、

岩佐教授は、懸命に智美さんの病状をよくしようと、動いていたという。


「そんなときでした。アメリカで姉のような病気に悩む人たちに対して、
新しい薬が使われるようになったということを、母が知って、父に……」



『ねぇ、アメリカではすでに活用が始まっているの。
どうにか日本でも扱うことが出来ないかしら』

『それは無理だよ』

『無理? どうして』

『アメリカで使用されているとはいえ、まだ、成人でしか許可されていない。
しかも、日本では完全に未承認だ』

『そんなことはわかっている。でも、待っていたら、智美は……』

『奈緒……』

『あなたは智美がかわいくないの!』



岩佐教授と奈緒さんの話し合いは、その後も何度も続けられた。

しかし、岩佐教授は立場もあり、もともとの真面目な性格もあり、

絶対に出来ないを繰り返した。


「父と母の距離は、またそこで開いてしまい……母は、
姉の環境を少しでもよくしたいという気持ちで、
空気のいい、静岡の伊豆に引っ越すことになりました」


姉と母の決断に、郁美さんも逆らうことなく着いていき、

家族はまたバラバラになったという。


「わさびが盛んに作られるような、空気も水もいいところでしたが、
環境を変えたところで、姉の病状がよくなることはなくて、
母は、当時、民間療法から、何から、試してみればと言われたことには、
なんでも手を出して頑張っていましたが。最新治療で難しいものを、
当たりまえですが、越える治療法などありませんでした」


医師にも導けない答えを、確かに出すのは難しい。

しかも、娘二人を一人で支えていたのだから、並大抵のことではないだろう。


「母は、最期の気持ちで、柿沼教授に連絡を取ったのです」


『相馬奈緒』さんという彼女の母親を、柿沼が思い続けていたというのは、

以前、尚吾からも聞いている。彼女の気持ちは岩佐教授にあって、

長い間振り向いてくれることもなかったが、

この緊急事態に自分を頼ってきたということが、柿沼にしてみたら、

きっかけとなったのだろう。


「柿沼教授は、静岡に暮らす私たちに、マンションを準備するとそう言いました。
当時高校生だった私にも、それがどういう意味なのか、わかります」


柿沼は、未承認の薬をどうにかする代わりに、奈緒さんに自分の『愛人』となり、

用意するマンションで暮らすように指示を出した。




【15-4】

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