17 Reproduction 【再生】 【17-1】

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【17-1】


富田さんの言っていた通り、

新年になり、ドイツから岩佐教授と親しい大平先生が戻ってきた。

僕は『ストレイジ』でその話を、澤野さんから聞き、

食事の席に、同席しないかと提案される。


「僕がですか」

「あぁ……。岩佐教授から『宇野柾』という学生の話しは、大平先生も聞いていたそうだ。
富田も、今回、相馬さんの心を動かしたのがお前だと、そう説明したようで」


彼女の心を僕が……


「いえ、違います」

「宇野」

「違うんです。僕は……」


僕が、彼女の気持ちを乱したことはあっても、こうした方向に導いたなどと言われて、

とても認める気持ちにはならない。


「どうしたんだよ」

「澤野さん」

「ん?」

「僕は、今まで何かを勘違いしながら、生きてきたのだと思います」

「勘違い?」

「はい。『東城大学』にいた頃は、周りが全て同じ大学の人間だったので、
何も特別意識はありませんでしたが、社会に出てみると、その手形は、とても有効で、
どこへ行っても、誰と会っても、対等以上の関係が築けました」


取引先の人間にも、『東城大学』というだけで、優秀な人材だと扱われ、

そう、女性と飲みに行っても、その経歴が大きな武器になることが多かった。

少し人とは違った部分で、お金を稼げる方法を知っていたから、

面倒なサラリーマン生活から抜け出して、自由な生活をしているうちに、

どこか自分は特別な人間なのだと、勘違いしていたのだろう。


「宇野……」

「相馬さんが、本当に正直で強い人だっただけに、彼女のことを思い出すたび、
自分がいかに愚かだったのか、そればかりが浮かんで……」


人としての未熟な部分や醜い部分を知っていながら、彼女は僕に騙された。

いや、それを楽しかったと笑って許してくれた。


「相馬郁美さんが、柿沼とつながっている人だという情報を知り、
僕は彼女に近付きました。大学院時代、教授と学生として、どうにもならない差があり、
何をされても逆らえなかった恨みが、僕の中にずっと残っていたのです」


全く関係のない生活をしていても、

周りから見ればうらやましがられるような生活をしていても、

僕の心は、一度も満たされていなかった。


「彼女の気持ちなど考えようとせずに、ただ、あいつに近付いて、
何か過去の恨みをはらしたいということばかり、そればかり考えて……」




ただ、利用した。




「宇野……」

「はい」

「詳しいことは俺にはわからないけれど、まぁ、人が人と接していれば色々あるよ。
お前が、その行動を間違っていたと思い、
今、反省しているのならそれでいいんじゃないか」

「澤野さん」

「だとしたら、余計に彼女の事情を、しっかり聞くべきだと思うぞ。
大平先生にお前の名前を語ったのは、尊敬していた岩佐教授なんだし」


最後まで、この問題に関わり、見届けること。

澤野さんは、それが僕のするべきことでないかと、そう提案してくれる。



苦しいからこそ、逃げないで進むこと。



「わかりました」


僕は結局、富田さんと同席し、大平先生に会うことになった。





待ち合わせに使われたのは、去年、相馬さんと会ったあの店だった。

先に到着していたのは富田さんで、僕は頭を下げる。


「ありがとう、宇野さん。忙しいのに」

「いえ……」


みっともないことはわかっているけれど、今、出来ることをするしかない。

僕は隅の席に座り、主役の到着を待つ。


「郁美さんから預かったデータ、『ラボンヌ』の方は確認が取れた。
柿沼教授に、その当時、相当なお金の流れがあったことも、突き止めた」

「お金……ですか」

「そう。その時、『律民党』で幹事長をしていた男の秘書に、その半分が流れている。
つまり、認可をぶら下げて、色々と小細工があったということなの」


柿沼が『相馬智美』さんの治療を、金儲けの道具にしようとしていたことを知り、

岩佐教授は、全てを被る気持ちで、自分の仲間を集めた。

金のためではなく、愛する娘のため……

たとえ、自分が罪を背負うことになったとしても、それでも後悔しない気持ちで、

踏み切ったのだろう。


「柿沼教授にしてみると、その当時、ポケットに入れていたお金の話が浮き上がると、
今の地位に、色々と支障があるのでしょ。とにかく、名誉理事とかの職は、
いくつもある人だしね」


『自己保身』

柿沼のやることは、昔から何一つ変わらない。



少し外がざわついたと思い、襖の方を見ると、遅れて申し訳ないと言いながら、

大平先生が入ってきた。

頭は白髪交じりであったが、背は190センチあろうかというくらい高く、色は浅黒い。

この雰囲気なら、外国の人たちに混ざっても、見劣りしないだろう。

僕も富田さんもすぐに立ち上がり、しっかりとお辞儀をする。


「しばらくぶりだからね、日本は。一人で迷うよりはと思って、
空港から、直接このお店を話して連れて来たもらったよ」

「ありがとうございます。大平先生、ドイツではお世話になりました」


富田さんは、本当にドイツまで飛んでいた。

この人の真実に対する熱意も、相当なものだ。


「いやいや、あの時には、足を運んでもらっておいて、
何も語れずに申し訳なかったよ」


話し方、紳士的な態度、

大平先生が医師としても、実力のある方だろうということが、すぐに感じ取れる。

僕達の前に座り、楽な格好でいいですかと、ネクタイを外してしまった。




【17-2】

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