20 Meaning 【意味】 【20-3】

【20-3】

「どんなに今、辛いなと思っても、生きてさえいれば、
必ずその意味をわかるときが来るからねって」



生きる意味……



「生きていく、意味ってことか」

「……かな」


『生きていく意味』

病気がちの姉の影になり、長い間生きてきた彼女。

両親に愛されていないと思い、冷ややかに世の中を見てきたアレン。


「好きな人が出来たら、生きていくことが楽しくなるし、
目標を持つことが出来たら、毎日過ごす時間が、とても短く感じられるって」


常に前を向き、目立たなくてもしっかりと根を張っている、

彼女らしい言葉。


「ここでしっかり勉強していけば、生きている意味を、
絶対に感じられるようになるからねって……そう言ってくれて……」


病気を持つ姉のために、母親がすがった治療。

それにかかった費用。

運命に縛られながらも、彼女は『生きている意味』をしっかり感じているだろうか。


「きっと、相馬さんも、色々と大変だったのかなって」


挫折をしたことがない人間には、悩みの中に埋もれてしまう人の思いは、

なかなか理解できないだろう。


「アレン」

「何?」

「教室長に、相馬さんの新しい住所をご存知なのか、聞いてみたのか」

「……うん、でも、知らないって」

「そうか」


教室長にも、彼女は何も話していない。


「もう少し待っていろ」

「待つ?」

「あぁ……今は、引っ越したばかりかもしれないし、色々と大変なのかもしれない。
でも、相馬さんのことだから、また、アレンに連絡をくれるかもしれないぞ」

「……そうかな」


そんなことは、どうなるのかわからない。

でも、今のアレンに、相馬さんとの連絡はもうつかないだろうなどと、

言えない気がした。


「そうだね、少し待ってみる。忙しいのかもしれないし」

「あぁ……」


アレンはそれじゃまた来週と手を振り、教室から出て行く。

階段を下りていく音が聞こえていたが、少しすると、音は聞こえなくなった。





『静岡県伊豆の国市……』



家に戻り、PCを立ち上げた。

手紙の住所を調べてみると、清田さんが持っている『わさび田』から、

それほど離れていないことがわかる。

やはり、彼女はあの場所で働くことを考え、このアパートを借りたのだろう。



『不明』



郵便が届かないということは、すでに引越しをしたことになるのだろうが、

『転居届け』をしていれば、郵便は転送されるのが普通だ。

急に引越しをしなければならない事情が出来たのか、それとも……


「ふぅ……」


やはり、清田ハル江さんにもう一度会って、

相馬さんがどこに行ったのか、それを聞くことが一番正確ではないか。

この間のように、観光客を装うのではなく、

『宇野柾』として正々堂々と、彼女の居場所を聞く。

僕はそう思いながら、地図にうつる『わさび田』の広さを、しばらく見続けた。





「キャンセル?」

「ごめん」

「どういうこと? 今更」

「だから、急に出かけないとならないことがあってさ」


次の日、休みに旅行へ行こうと言っていた彩夏と会い、

今回は申し訳ないがキャンセルをして欲しいとお願いした。

彼女との関係を前向きに進めていく気持ちが、なくなったわけではないが、

今の心情だと、ゆっくり温泉に入っている気にはなれない。


「どこに行くの?」

「……ん? うん……」


彩夏は、楽しみにしていたのだと口を尖らせたまま、

不機嫌な表情を見せた。僕はもう一度悪かったと頭をさげる。


「どこに行くのか、言ってくれないんだ」


どこに行くのか。言えないわけではないけれど、

その先を語らなければならないことがわかっているだけに、

出来れば出したくない。


「彩夏……」

「別にいいけど」


『いいけど……』という投げやりな言葉が、心は別感情を持っていると、

そう訴えかける。彩夏はヒールの先を指差し、ここへ来る前に電車で踏まれて、

形が悪くなってしまったと言った。

旅行に行けないのなら、代わりの靴を買って欲しいと、左足を軽く振る。


「靴?」

「そう……いいでしょ?」


急に行けなくなったのは、僕自身の責任になるので、

靴くらいで機嫌を直すのならと了解し、食事をした店を出る。

少し街を歩き、まだ営業中の店を見つけ、彩夏はその場で選び始めた。


「ねぇ、これは?」

「彩夏が気に入るのなら、それでいいよ」

「……そう?」


彩夏は2足履き比べ、最初に選んだ方に決めた。




【20-4】

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