21 Nascent 【新生】 【21-3】

【21-3】


集まりというのは、いつまで続くものなのだろう。

田舎の母も、気の合う仲間たちと寄り合いをする話しは聞いたことがあるが、

昼間からはじめて、これほど遅いとは……


暗さと、慣れない場所での動きに、油断すると目が閉じそうになる。

その時、コンコンと窓ガラスを叩く音がした。

顔を上げて見ると、敬礼をする警察官が立っていた。


「はい……」

「もしもし、あなたここにずっと止まっているそうですね。
このあたりの方から、迷惑なのでと通報が入りましたよ」


このあたりの方って……

目の前には1軒しかないが。


「すみません、清田さんの家に戻る人を、待っているものですから」

「清田さんの?」

「はい……」


事情を説明しようと車内から外に出ると、

曲がり角を1台の自転車が走ってくるのが見えた。

最初は誰なのかわからなかったが、近付くにつれて、それが誰なのかわかるようになる。


「あ……」

「あ、ちょっと、君」

「相馬さん!」


自転車はキーッとブレーキの音をさせ、僕の車を通り過ぎたところで止まった。

僕は、警官の影から彼女が見える場所に立つ。


「相馬さん」

「……宇野先生」

「よかった……」


僕に忠告をしにきた警官は、怪しいものではないのだと思ったようで、

その場を離れてくれた。相馬さんは、僕がなぜここにいるのかわからないようで、

自転車を持ったまま、立っている。


「急にごめん。色々と聞きたいことがあって……」

「宇野先生……」

「あの……」


話したいことはたくさんある。聞きたいことも山ほどある。

それでも、とにかく、アレンが手紙を寄こしたけれど、

住所が変わってしまって、手紙が戻った話をしながら、僕は彼女に近付いた。


「あ……アレンが」

「うん。テストの点がよかったことを、報告したかったみたいで。
でも、住所が……」

「宇野先生。いつからここに」

「いつって……3時くらいかな」

「3時?」

「うん、清田さんの家の方に、集まりに出かけているって言われて」

「……はい」


もっと色々と聞かないとならないのに、言葉が出て行かなくなった。

順序が違っているのもわかっているけれど、それでも……


「僕は、君がこういう暮らしをしているとは思わなくて。
色々と事実を聞いて、いたたまれなくて……」


お母さんの借金のために、自由のない生活をしている。


「ゆっくり、話をしたい。今日は無理だろうけれど……」


警察の声と、自転車の音と、僕の声。

それが向こうに届いたのだろう。

門が開き、清田さんが姿を見せる。


「郁美ちゃん、悪いけれど、みずきが風呂に入るから……」

「あ……はい。すみません、待っていろと言われていたんですけど……」

「いいから、早くしてやって」



『待っていろと言われていた』



清田さんは、僕が来たことを知り、

わざと相馬さんに戻るなと言っていたのだろうか。


「ごめんなさい、宇野先生が待っていたことなど、何も知らなくて。私……」

「また、すぐに来る」


これは絶対に、このままに出来ない。

僕は、もう一度出直し、話を聞きだそうと気持ちを決める。


「宇野先生、アレンには私から手紙を出しますから」

「そんなことじゃないんだ」

「……でも」

「そんなことじゃないんだ……」



『幸せな時間でした』



あの言葉を聞いてから、そう、僕自身もずっと思っていた。

始めは『ゲーム』だと思い、近付いていたけれど、

途中からそんなことはどうでもよくて、ただ、君に会いたくて……



今も、アレンの手紙を理由にして、僕は……



「僕自身が、君との別れに納得がいっていない」



そう、おかしなことはわかっているけれど、でも……

このままでは、何も終われない。


「宇野先生」

「あれから、色々と考えてみた。それでも……」

「私のことは、もう心配しないでください。
宇野先生が心を悩ませることではないですから」


僕がどういう男だったのか、知っている相馬さんに、

この場で、今の思いを伝えるのは難しいかもしれない。

それでも、何度も何度も説明して、わかってもらうしかない。


「……違うんだ」


使命感とか、申し訳ないからとか、それだけではない。



「君を……僕自身が諦められないから……」



あの日々が、ウソではなく、本当の日々だったのだと、

失ってみて初めて、気付けたことだから。



「あなたとの日々が、僕にとっても、幸せにあふれていたものだったと……」



何に変える事も出来ない日々だったと、気付いてしまったから。




【21-4】

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