22 Promise 【約束】 【22-1】

22 Promise 【約束】

【22-1】


およそ1ヶ月ぶりの塾。

俊太もアレンも、学校の宿題はしっかり終えているだろうか。

去年は確か、アレンがまだ終わっていなくて、授業の半分を使い、

なんとか埋めさせた記憶がある。


「宇野先生。お久しぶりです」

「あ、はい」

「先生が塾に戻られたので、そろそろ秋ってことですよね」


事務の町田さんはそういうと、僕の前を失礼しますと、横切った。

僕はいつも座る場所に荷物を置き、携帯電話を開いてみる。

彩夏からの返信を待つけれど、今日も何もない。


「宇野先生、コーヒー飲まれますか」

「あ……ありがとうございます」


町田さんは、わかりましたと頭をさげ、数分後に、コーヒーを入れて来てくれた。

僕がここに入ったとき、相馬さんが選んでくれたコーヒーカップ。



『宇野先生のイメージで選びました……』



今頃、何をしているだろう。

秋の収穫に向かって、忙しい日々を送っているだろうか。



『相馬郁美様』



突然、清田の家を訪れてから、僕は彼女宛に手紙を書いた。

今までの自分をしっかり見つめなおし、もう一度君の前に行くときには、

自信を持って話がしたいから……



『後妻』



清田の家に、自分の居場所を見つけるというのなら、それも彼女の選択だけれど、

今の状態でそれを選ぶというのは、あまりにもしがらみが多い。

僕の思いが届かなくても、話せないままにはしたくない。

住所も間違いがないし、手紙が戻ってきていることもないのだから、

届いているはずなのに、返事がない。



それは、彼女の答えなのだろうか。



いや、あれだけ複雑な事情があったのだから、一度でわかってもらおうというのが、

おかしな話だ。僕は今日にでも二度目の手紙を出そうと決め、授業の準備に入った。





「よくやったな、俊太」

「うん」


俊太には、夏休みの頑張りを褒めてやり、あらたな課題を手渡した。

点数があがっていることが、力になっているのか、文句も言わずに、

やる気を見せる。


「僕、秋のテストでは『A』ランクが取れるように、頑張るからさ」

「そうだな」


本番まであと半年。

幼い頃から『海南』だけを目指してきた俊太のゴール。

他の先生方と協力して、なんとかゴールテープを切らせてやりたい。

やる気満々の俊太を一緒に取り組んだ時間は、あっという間に過ぎた。



『相馬郁美様』



清田様方という言葉も抜いていないのだから、間違いなく着いているはず。

もし、これで何も返事がないようなら、もう一度静岡へ行くべきだろうか。



カレンダーが9月に入り、2週間が経った日。

僕と他2名の先生が、教室長の部屋に呼び出された。

長い間、私立受験の国語を教えているベテラン教師と、

日本史を得意としている女性教師。


「申し訳ない先生方、急におよびだてして」


教室長の挨拶から始まった集まりは、予想外の展開を見せていく。

話しの内容は、『秋野俊太』のことだった。


「実は、先日、俊太のご両親が挨拶に見えまして。俊太が『海南』受験、
というよりも、私立中学の受験を取りやめるということにしたいと、そう、
頭を下げられました」

「……椛島先生、どういうことですか」


数秒、女性教師の方が早く声を出したが、僕も全く同じ思いだった。

あと半年だというのに、なぜ、急に、受験が取りやめとなるのだろう。


「俊太の父親は、商売をしているようなのですが、ちょっと色々とあって……」


教室長は、具体的にどういうことだとは語らなかったが、

話す口調、悔しそうな表情に、厳しい状態になったということはよくわかる。


「それで、広げていた部分を処分して、
なんとか基本までは崩れないように形を作っているみたいなのですが、
上2人の兄が、すでに『海南』に進んでいて、途中でやめさせるわけにはいかないと、
そういうことに」


新しく俊太を入れる余裕がなくなった。

そういうことだろう。




【22-2】

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