23 Affection 【慕情】 【23-2】

【23-2】


『数学頑張ってね』



確かに、アレンの言うとおり、あれでは『先生』の文字が、僕限定だ。

なんとか誤魔化したけれど、相馬さんの、隙だらけなところがなつかしく、

また、愛しく思えてくる。

あと何時間後に彼女の顔を見ることが出来るのかと考えながら、

電車の中に立ち続けた。





約束の火曜日。

清田さんからの連絡では、待ち合わせの店に1時に来て欲しいと書いてあった。

昨日までは、あれだけ楽しみにしていたのに、いざその日が来ると、

不安の方が大きくなってくる。

相馬さんは、僕の謝罪と提案を、受け入れてくれるだろうか。

輝く太陽は、とっくに朝を示し、その日を始める人たちが活動している時間になっても、

僕は一人、ベッドの中から抜け出せずにいた。



『綾』



待ち合わせ場所は、落ち着いた喫茶店。

僕は少し早めに店へ向かい、一番話しやすそうな場所に腰を下ろした。



『その店に、協会の方が待っていると、郁美ちゃんには話してあります』



僕に会うため、わざわざ出てきてくれた清田さんの思いに応えるためにも、

彼女の思いを、きちんと知らなければ。

店の入り口が開くたび、彼女ではないかと視線を上げるが、

まだ、待ち合わせよりも早いため、別の客ばかりが入ってくる。

携帯が揺れる音がしたので、何かあったのかと開けてみると、

相手は彩夏だった。



『春川はストーカーなの、あいつの言葉を信じるなんておかしい。
都合がいいように、解釈しないでよ……』



春川さんが、僕のところに来たことをメールに記した。

彩夏は彼がウソをついていると、文面に書いている。



『私の思いを、軽く見ないで』



『私の思い』

『軽く見る』とはどういうことだろうか。

僕は、軽くなど考えていない。だからこそ、会いたいと繰り返し訴えている。



『とにかく、一度会おう』



そう返信をしたが、それから何も戻ってこなかった。



店に到着して15分後。

入り口が動き、一人の女性が姿を見せた。



相馬さん……



彼女は両手にグリーンの袋を持ち、店内を見回している。

僕は一番奥の席で立ち上がり、彼女に頭を下げた。

待ち合わせの相手が、僕だと思っていなかったのだろう。相馬さんの足は、動かない。

ウエイトレスが彼女に声をかけたので、僕はこちらですと、手をあげた。

相馬さんがゆっくりと近付いてくる。


「宇野先生」

「驚いたでしょう。ごめん、清田さんに届け物をしてくれと言われただろうけれど、
ここで君と話をするのは、協会の人間ではないんだ」

「エ……」

「僕なんだ」


とにかく座って欲しいと彼女に言うと、相馬さんは小さく『はい』と言ってくれた。

向かい合うように座って話すのは、

昨年末、僕の部屋で全てを話されたとき以来かもしれない。


「ごめん、こんなふうに呼び出して」

「いえ……」


僕は、あらためてここへ来ることは清田さんも知ってくれていることを告げた。

そして、手紙のことを謝るために、彼が僕に会いに来てくれたことも話す。


「宇野先生に、会いにですか」

「うん。僕が夏に会いに行った後、すぐに手紙を出したのだけど、
その手紙は、清田さんのお母さんに止められていたってことを、教えてくれた」


返事がないことに、それなりに悩みながらも、二度目の手紙を書いた。

清田さんから話を聞かなければ、また静岡まで行っていたかもしれない。


「あの手紙に書いたことが、僕の今の気持ちなんだ」



君と離れてみて、初めて気がついたこと。



「相馬さんに対して、僕がしてきたことは、本当に最低なことで、
お姉さんのことがわかった後、僕は君の再出発を遠くから祈るべきだとそう思った。
その前までの行動を許してもらえるわけがないし、
そんなことを言うことすらおこがましいと、自分に言い聞かせて」



『ゲーム』



君の心を開かせること。

そんな最低なゲームに、僕は身を投じていた。


「あの当時、お付き合いのあった人と、きちんとして行くべきではないかと、
それなりに考えてみたり」


彩夏との関係を変えていこうとした。

しかし、気持ちと頭は、いつもバラバラになってしまって、

違和感ばかりが膨らんだ。


「でも……あなたを忘れてしまうことが、どうしても出来なくて」


塾に入れば、学生の声を聞けば、相馬さんならどうするだろう、

何を言うだろうと、常に頭の中に浮かんできたのは、彼女の顔だった。


「どう動けば、自分の未来が見えるのだろうと、悩んでいたとき、
アレンが、君の新しい住所を知らなくて、手紙が戻ってきたという話をしてくれた。
古い住所でも、君につながるものがそこにあると思ったら、もう我慢できなくなった。
住所を見て、その場所に行って、もう一度……会いたいと……」



そう、ただ、もう一度会いたくて、僕は車を走らせた。

相馬さんが確かにここにいるという軌跡。

そればかりを探した。




【23-3】

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