23 Affection 【慕情】 【23-4】

【23-4】


「『わさび田』を手伝おうとしたのは、
亡くなったお母さんの借金があったからですよね。
そのために、あのマンションも売却した」


たとえ、親の作ったものでも、縁のある土地だからこそ、

無視できなかったのだろう。正義感のある彼女らしい選択。


「もう、縛られることなどないはずです。東京へ、戻ってきてください」


明るい表情を見せてくれていた彼女の顔が、また少し沈んでしまう。

東京に戻れない理由が、どこかにあるのだろうか。


「戻れない理由が、どこかにあるのですか」


清田さんも、それを気にしていた。

『いいえ』とも『はい』とも戻らない、彼女の思い。



「柿沼が……何か」



下を向いていた相馬さんが、すぐに僕を見た。

やはりアイツだった。相馬さんに何かを言っている。


「何を言われたの」


ここは絶対に聞きださないと。

あいつが彼女の人生に、関わる必要などどこにもない。


「清田家の『わさび田』が、柿沼家の経営する『ヴィーナ』に近くなる話しは、
僕も知っている。それと何か、関連があるの?」


あいつは何を言ったのだろう。

清田さんのおばあちゃんが、母親に貸していたお金の件、

それにも、あいつが絡んだと、聞いた。


「相馬さん」

「……はい」

「僕は……」


覚悟がなければ、こんなことはしない。

みっともないこともわかっていて、あえて、あなたと歩む道を、

選択しようとしている。


「僕は……あなたの全てが知りたいんです」


繕ったり、ウソをついたりせずに、互いの弱い部分も全てさらけ出して、

それでも、一緒にいたいと、そう思って欲しいから……


「辛いことも一緒に考えることが出来たら、今よりももっと幸せに近くなれると、
そう思いませんか」


抱きしめあうだけではなくて、受け入れあいたい。

悩みも、辛さも、一緒に考えていけば、決して越えられないことはないだろう。


「自分の幸せを、掴みましょう」


相馬さんは、小さく頷いたが、その後の言葉が、続いてこない。

この場を設けたことで、色々なものを飛び越えようと思ったが、

前進はなかなか難しい。


「柿沼先生が、ハル江さんとの間に入ってくれて、
母が借りたというお金の返済金額を、決めてくれました。
書き残されていたメモだと、もう少し金額はあったのですが、
正式なものではないし、借りたという証拠もありませんでしたから」

「はい」


お姉さんの治療のため、民間療法とか、温泉旅行とか、

何か効果がありそうなことを、あれこれやったと聞いている。


「その時、柿沼先生が宇野先生のことを」

「僕のこと」

「はい……。昔、宇野先生がチャレンジした研究内容が、
今、また脚光を浴び始めていて、もしかしたら、今よりももっといい待遇のところへ、
推薦してあげられるかもしれないと」

「いい待遇?」

「はい。大学の准教授の話しだとか……」


柿沼は、僕が学生時代研究してきたデータが、まだ生きているとそう言ったようだった。

しかも、『推薦』というのは、柿沼が僕をと言うことだろうか。


「でも、父の影がそこにあると、いい話も続かなくなるだろうと」

「岩佐教授の影……って、どういうことですか」

「姉のカルテの件で、おそらく父の名前は、業界の裏に消えるはずだと」


無許可の薬品と、それに関連する治療と手術。

確かに、法に触れる問題であることは確かだ。


「だから、私が宇野先生と縁を持たないほうがいいと……」


業界の裏など、関わっている人間にしかわからない。

しかも、長い間、牛耳ってきた男がそういえば、知識のないものは、それを覆せない。



相馬さんが、僕を気にしてくれているという事実を、利用した脅迫。



「それで、清田の家に入っていろと」

「入れとまでは言いませんでしたが。身寄りがないのなら、
地元の力がある人間と、縁を持った方がいいだろうと」


どこまでも自分勝手であり、どこまでも汚い。


「相馬さん」

「はい」

「僕は、年末にあなたと会う前、柿沼に会いに大学へ行ってから、
その後は、あいつと会ったこともないですし、電話で話したこともありません。
今、言っていたような、好条件の話しも、今、初耳です」

「……本当ですか」

「はい。それに、柿沼から僕が就職を斡旋してもらうなど、ありえません」


そう、ありえない。

あいつは自分が表舞台から退いただけで、いまだに子分を散らばせている。

そんな中に入ってみても、どうせ追いやられるだけだ。




【23-5】

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